【企業概要】
「セリア」は、百円ショップ「Seria」を運営する企業です。本社を岐阜県に構え、全都道府県に「約1,700店舗」を展開しています。売上「1,814億円(2020年3月期実績)」、従業員「440名(正社員)」と、業界2位まで上り詰めました。
「百円ショップ」は多いときで数十、数百の事業者がありましたが、今は「セリア」の他、「ダイソー」、「キャンドゥ」、「ワッツ」の大手4社が中心となっている『寡占市場』と言えます。そんな中でも「セリア」の特徴は、競合と比較し、営業利益率が飛びぬけて高いことです。売上も年々 伸ばしていて、伸び率では 業界1位となっています。
【企業ヒストリー】
「セリア」は、1985年に、現社長「河合 英治氏」の父「河合 宏光氏」が個人創業したのが始まりです。元々は スーパーマーケットの催事場で雑貨(せんたくばさみ等)の移動販売を開始したことが始まりです。因みに、「河合 宏光氏」は家業のクリーニング店の後継でもありましたが、多額の借金を背負っていて「背水の陣」で起業をしました。社長になることが、運命だったのです。
1987年に販売事業を本格化させる為に、株式会社として「山洋エージェンシー」と名義を改め、これが後に、「セリア」となります。90年初頭にはバブル崩壊もあり、「百円ショップ」は好景気となります。創業時は、雑貨を取り扱う移動小売・卸売であり、常設店舗を所有していませんでしたが、1994年に長崎のスーパーマーケット店内に、常設店舗「百円ショップ長崎屋岐阜店」を開業し、以後 今のような常設店舗での展開を推し進めていくことになります。2003年には、商号を「セリア」に変更し、ジャスダックへの上場を果たします。
そして 「セリア」が急成長することになった理由は、2004年の「POSシステム」の開発です。この時を振り返り「河合 宏光氏」は、「百円ショップは、既に次の段階に入った。当初は客が『こんなものが百円で買えるのか』と驚いてくれたのが、そろそろ 定番商品には飽きが来ている。百円という枠の中で、どれだけ客にアピールできる店づくりができるか。店舗配置や規模、店内デザイン、商品開発などの見直しが急務になっている」と述べられています。今 聞くと当たり前のように聞こえますが、当時の段階で「POSシステム」を開発している企業は、殆どありませんでした。「セリア」が先駆けとも言えるのです。しかし 年間数十億円のPOSシステムへの投資負担が「セリア」の収益を押し下げ、2009年には利益が「15億円」へと、前年の半分になりました。
しかし それでも「POSシステム」の可能性を信じていた「河合 宏光氏」に転機が訪れます。「POSシステム」を軸とした発注や商品開発が軌道に乗ると、各年 最高の営業利益を更新し続けて、以後、セリアは「百円ショップ」業界に於ける高収益企業として注目されるようになったのです。2014年に創業者「河合 宏光氏」が社長退任し、現在は息子の「河合 英治氏」が社長に就任しています。
ここで「百円ショップ」業界について、見てみます。
【「百円ショップ業界」について】
●「百円ショップ」の市場規模は、「約1兆円」と言われています。これは、ペット産業と同じ位で、全市場の中では小~中ぐらいの規模です。業界自体は、年々 成長していて、2020年度の伸び率は「7.2%」で、新型コロナ感染に伴う「巣ごもり需要」が売上を押し上げています。 「百円ショップ」は、「規模の経済」を活かしたビジネスモデルで、新規企業の参入が難しく、大手4社で独占している点が 1番の特徴です。この大手4社の中でも、最も営業率が高く注目されている企業が、「セリア」です。
■【業界 売上高ランキング】(2019 - 2020年)
(企業名/店舗名/売上/創業年)
◆1位:大創産業/ダイソー/5,262億/1977年
◆2位:セリア/Seria/1,814億/1985年
◆3位:キャンドゥ/Can Do/730億/1993年
◆4位:ワッツ/ワッツ/527億円/1993年
それでは ここで、「株式会社 セリア」の、"イケてるC.I."の一部を紹介します。
【企業理念】
〇「クリーン」
心もお店もクリーンであること
〇「感謝」
あらゆることに感謝の気持ちを持つこと
〇「共有」
喜びと責任と情報を共有すること
日常生活の中にすっかり定着した感のある100円ショップ。その中でセリアは、お客様の毎日の生活に豊かさをお届けしたい。そして、どなたにもいつでも「いい買い物をした」とお喜び頂きたいと考えています。企業規模がどんなに大きくなろうとも、「心もお店もクリーンであること」「あらゆることに感謝の気持ちを持つこと」「喜びと責任と情報を共有すること」というセリアの企業理念は変わることがありません。「まじめな」を意味する社名セリアは、まさに 私たちの気持ちそのもの。社員一人ひとりが、あらゆる面で「まじめ」を貫き通しています。「まじめ」こそ、お客様にいっそうご満足頂ける会社として成長し、より豊かな社会に貢献する原動力だと確信しています。
【成長理由 分析】
ここからは、「株式会社 セリア」の成長理由を、仮説ですが "3つ"上げさせて頂きます。
先ず、結論からいうと…
◆1.「『POSシステム』をいち早く導入した点!」
◆2.「思い切って客層分析を辞めた点!」
◆3.「利益率を重視し、食品を販売しない点!」
の"3つ"です。それでは、1つずつ見ていきます。
◆1.「『POSシステム』をいち早く導入した点!」
*前述した通り、「セリア」は「POSシステム」をいち早く導入し、今でも注力していることで有名です。「POS」とは「販売時点情報管理システム」のことで、いつ どんなタイミングで、どんな商品が売れたなど、お客さまの購買情報を一目で確認できるシステムです。「セリア」が「POSシステム」を開発する以前の業界は、百円で売れる商品を次々と仕入れて、店頭に並べ、お客さまを楽しませ、驚かせることが、成長に繋がると考えられていました。しかし「セリア」は、商品点数が急速に増える中、何がどれだけ売れ、何が在庫として残っているか、把握できなくなっている事態に不安を感じていました。その中で「POSシステム」を独自で創り上げました。
*特にセリアの「POSシステム」の凄さは、商品ごとの「PI値」をベースにして、理想的な商品構成を導き出していることです。「PI値」とは、商品が顧客1000人当たり、いくつ売れたかを表す数値です。「セリア」は、店舗・商品別と全店ベースの「PI値」をリアルタイムに算出し、比較しています。そして ある商品が特定の店舗で売れていなければ、売り方を工夫することによって、売れる可能性があると判断しています。そして、店舗ごとに理想の商品構成をはじき出し、システムが発注業務を指示します。このお陰で発注業務は30分で終わり、人件費の削減により高利益率に繋がっています。また 一般的な小売業は 商品を発注し、売れなければ価格を下げて処分するか、売れすぎたら価格を上げて高く販売します。ただ「セリア」は、何があっても価格を百円に固定しています。実は、これが出来ているのは「セリア」のみです。
売上高を伸ばしながらも失敗を最小限に抑える緻密な経営を実現しているのです。しかも お客さまにとっては、価格が固定されいているため、いちいち 売値を確認する必要がなく、ストレスがなくなるのです。
◆2.「思い切って客層分析を辞めた点!」
*実は「セリア」は、小売業の「生命線」とも言える客層分析を きっぱり辞めて大きな話題となりました。今やどの業界でも、顧客のデータを蓄積しながら、そのビッグデータをもとに、顧客との関係性を深めながら、顧客の動きを予測し、販売促進に繋げたり、新製品開発に活かしたりしています。しかし「セリア」は、この「客層分析」を辞めています。一般的には、顧客データは、再購入・リピートを促す為に、必要な要素だと考えられていますが、「セリア」では「特定の顧客層にしか刺さらない商品は、自社にとって死に筋とも言える。ヒット商品をつくるには、顔の見えないデータよりも、SNSや街の消費者の生の姿を見ていくことが重要」という指針の基、客層分析を辞めたのです。
*今までの「セリア」は、ターゲットを制定する際に、「年齢・性別・職業などの『属性』」、「住居・働く場所などの『地域』」、「顧客が重要視するであろう『価値観』」、『顧客が普段行う『行動』」のデータを検証していました。簡単に言うと、「都心に住む(地域)、健康志向で(価値観)、ダイエットとジム通い等をする(行動)20代のOL(属性)」といった具合です。「セリア」は このうちの、『属性』データを取得することを辞めた、ということなのです。
これは、モノや情報が今ほど溢れていなかった20~30年前だと、例えば 30代男性が購入する髭剃りの傾向は、ある程度 明確に存在していました。しかし SNSをはじめとして、情報を世に送り込む「メディア」も種類が増え、消費者の趣味嗜好も同じように細分化されています。こうなると、「30代男性だから この商品を買いそうだ」という傾向は必ずしもなく、「アンチエイジングに興味がある人たち」が、年齢や性別に関係なく買う傾向になってきているのです。つまり、過去からしか予測をはじき出せないデータを信じ過ぎると、気がついた時には 時代に取り残され、顧客心理について行けなくなる恐れがあるのです。そのため「セリア」では、性別と年齢データを取得することから辞めているのです。
◆3.「利益率を重視し、食品を販売しない点!」
*「セリア」では、他の「百円ショプ」で販売されている飲料など食品類を販売していません。実は、食品類は「セリア」に扱っているものと比べて、仕入れ単価が高く、利益率が低いためです。その為、売上自体は見込めますが、利益が残らず、寧ろ 社員の手間だけ掛かってしまうことになります。
*また 食品類を販売しないことは利益率以外にも、もう一つ理由があります。それが「出店戦略」です。かつての「百円ショップ」は路面店が多かったものの、集客に陰りが出てきたこもあり、近年は集客を見込み易い「商業施設内」での出店が一般的になっています。実際に商業施設側も、多くの集客を見込める「百円ショップ」の誘致を考えるところは多く存在します。しかし その際に問題になるのが、商業施設内での競合です。実は 商業施設内の他のスーパーが飲料などの販売で競合する「百円ショップ」の誘致に否定的なケースが多く存在するのです。しかし「セリア」では、先述したように食品類を販売していない店舗が多いため、商業施設に新規出店し易いという効果が出ているのです。
◎と言うことで…
*「百円ショップ」自体は、私もよく行きますが、各「百円ショップ」の違いは何かと問われると、回答が難しいのが現状です。正直、どの「百円ショップ」も扱っている商品は 似たり寄ったりだと思います。しかし 経営側の戦略に、こんなにも違いがあることに、そして そこで「利益率」に大きな差が出てしまうことに、経営の面白さや難しさを感じます。
特に「セリアさん」は、データに頼る部分と頼らない部分の棲み分けが凄いです。元々 業界の先駆けとして、「POSシステム」を開発し成長したにも関わらず、ある部分では その「POSシステム」に頼ることを辞めたという判断が、普通は出来ないと思います。データ分析の難しさを感じます。
また 若手の私が、勝手に「セリアさん」に一言いわせて頂くとしたら…
●地域との関係性を強化する取り組みすると面白いと思いました!
「セリアさん」は、今後 更に 出店数を増やしていくはずなので、より地域に密着した戦略の展開が考えられると思います。例えば「出店地域内のイベントスポンサーになる」「町のお祭りへの協賛」や、「地域の人を巻き込んだ工作ワークショップ」などです。
また 「セリアさん」に限らず、「100円ショップ」の競合は「Amazon」だと思います。そのAmazonが「100円ショップ」のような取り組みを、オンラインで行ってくる可能性は少なくないと思います。そこに対応する為には、地域顧客が店舗を訪れる楽しさ、「セリアさん」というブランドへの愛着を高め続けることが大切だと思いました。私 個人的には、「100円ショップ」は、低価格ラインということもあり、どちらかという人間味の感じない店舗が多いと感じています。だからこそ こういった、取り組みをすることも、面白いと思いました。
●それでは 最後に、C.I.について、若手なりに一言いわせて頂くと…
コーポレートサイトに記載されているC.I.が全て社内向けの"言葉"になっていて、外向けの"言葉"として 創り上げたい『世界観』や『存在意義』が見当たらないのが気になりました。特に、「百円ショップ」業界は、中々 商品だけでの差別化は難しいと思います。だからこそ 企業自体でブランディングを行いながら、ファンを創ることが求められてくると思います。そして その土台になるのがC.I.だと思います。事業を通して成し遂げたいことをしっかり言語化することで、向かうべき方向も見えてくると思います。例えば、お客さまを想い「百円」という価格にこだわり続けられている「セリアさん」ですが、その根底にある想いを、しっかり言語化すると良いと思いました。
ここで 勝手に、「企業理念」を創らせて頂くとしたら…
〇「『ワンコインで、こんなのあったんだ!』という商品で、あなたの生活に彩を与える!」
また コンカンでは、企業理念や経営理念などの違いを整理しています、出来れば コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を 一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。
*concanが考えるC.I.とは?
https://www.concan.co.jp/post/topics-ci
本当に、生意気ばかり言って、申し訳ございません。
長くなりましたが、以上です。