旅と私ー出会う自分

 旅に出ると色々な自分が見えてくる。初めて見る景色、初めて触れる文化、出会う人々。

 旅の中で経験した様々な「初めて」が自分でも知らなかった自分を照らし出してくれる。現地の人との会話を楽しむ自分。子供達と一緒になってはしゃぐ自分。ちょっとシャイになる自分。美しい景色に見入る自分。普段の私は見せない様な自分が顔を見せてくれる。

 旅とは私にとってそんな気分を味わせてくれる魔法の様な時間。行く国、街、場所によってそれは全く違った彩りを持って私に訪れる。

 旅というものを意識したのは高校2年生の夏だった。アメリカはシアトルに、3週間の旅に出た。それまで家族旅行や学校のプログラムで海外に行ったことはあったが、この旅は初めて経験する一人旅だった。何にも縛られることなく自分で行く場所を決め、自分のやりたいことをやる。ある時は知り合った仲間と飯を食いに行ったり、ある時は観光地を巡ってみたり、またある時は1日を街の中を散歩に費やしてもみたりした。ただひたすらに自由な時間。日本にいたら3週間は漫然と日々の生活で埋もれてしまうかもしれない、しかし旅は私にそうさせることを許さなかった。やる事を与えられずに、自分で作り上げて行く日々。それらは普段ならなんでもないような些細な事さえ、鮮やかに記憶を染めてくれる。

 そして、その中で日本にいる時の自分とは全く違った自分がいることに気付いた。こんなに私は自分から知らない人に話しかけたりする奴だっけ?とか、普段あんなに親のことを疎ましく思っていたにホームシックになったりする自分とか、街中の何気ない景色に見入っている自分とか、旅は行かなければ知らなかったものと同じくらい、知らなかった自分に出会わせてくれた。

 旅という非日常。時に愉快で、時に厳しく、時にドラマチックなそれは私を振り回す。振り回される私はいつもの自分じゃいられない。だから自分も変わらなきゃ、と新たな自分を絞り出すのだろう。

 旅に出た数だけ、新しいものに触れ合った数だけ、そこには新たな発見と新たな自分との出会いがあった。これからも、きっと私は旅に出るだろう。知らない世界を知りたいし、新たな自分を見つけ出したいから。さあ、次はどんな魔法を私にかけてくれるのだろう。

関連記事