Dor til Dorのこれまでとこれから

はじめに

僕は、この活動を通して、子どもたちの読書文化を盛り上げることで、子どもたちの世界観を育て、広げたいと考えています。 その思いを胸にここまで進めてきたDør til Dørのこれまでを振り返り、自分なりにこれからの展望を書いてみたいと思います。(トップ画像は、インドア派のくせにスキーとスノボだけ大好きな僕が気分で選んだフリー素材「道」です)


活動前夜

僕は小さい頃から子ども文庫(民間の有志が集めた絵本・児童書の蔵書を地域の子どもたちに無料で貸し出す私設図書館)に通い、延べ4000冊以上の子どもの本を読んできました。そして本の虫の高校生に成長した今、幼い頃から読書を楽しんでいたことで、子どもたちにとって、子どもの本には娯楽である以上に成長する中で大きな役割を果たしているのではないかと気づきました。例えば、ヤングアダルトと呼ばれるジャンルをはじめとして児童文学は、子どもたちのメタ認知能力を向上させ、自己形成を促進しているのです。 

しかし現在、動画・ゲームなどの台頭で活字離れが叫ばれています。とはいえ、学校読書調査によると、実は小学生・中学生の読書に親しんでいる割合は回復どころか過去最大に増加しています。その一方で、高校生については依然として変化がなく、むしろ悪化傾向にあるともいえる状況です。僕の経験でも、全国的な進学校である東大寺学園に入学して、読書好きの少なさに驚いたのを覚えています。 

こうした事態を是正していくために、幼少期からの読書習慣の確立や、生活の中での読書の優先順位を上げることが必要だと文部科学省の研究では指摘されているのですが、僕は、結局のところ、子どもたちが本当の意味で読書を楽しめていないことが根本的な原因だと考えています。例えば、僕には、ただ読んだ本の量だけを求める読書マラソンなどの取り組みでは、子どもたちが本当の本の虫には育たないのではないかと思えてしまうのです。 


プロジェクト始動 ~起~

そこで、僕は去年の春、コロナ禍による休校期間中に自分の時間が増えたことを利用し、自分の豊富な読書経験と高校生になって得た大人の視点とを兼ね備えているからこそ作れる児童書を紹介するフリーペーパーを1人で創刊しました。僕にしか紹介できない、本当におすすめな子どもの本をフリーペーパーという手軽な紙媒体を通して伝えることで、より多くの子どもたちにかけがえのない良質な1冊と出会ってほしいという想いと、有り余る時間を使って何か自分自身も楽しみながら社会をより良くして行きたいという想いから始まったプロジェクトです。 


広がる輪 ~承~

創刊直後は関西を中心に数ヶ所の図書館や書店に置かせていただいていたフリーペーパーですが、創刊後半年を過ぎるころには、たくさんの施設から設置の希望が集まり、北海道から九州まで全国30ヶ所に設置し、大阪府立図書館や東京子ども図書館をはじめとする大規模公共図書館や、公立・私立ともに多くの学校図書館、大手書店などにも設置することになりました。またはじめてメディアを通して全国の皆さんに活動を知ってもらえたのもこの頃です。 


プロジェクトの発展 ~転~

その後、全国高校生マイプロジェクトアワード2020に参加し、全国優秀賞を頂いたのですが、その中のセッションで初めて、活動を団体として拡大するというアイデアをいただきました。それが、ちょうど高校で文化祭実行委員をしていることも手伝って、問い合わせへの対応やフリーペーパーの発行などが滞り気味になり、想いだけが膨らんでいく中で時間が足らずうまく行動に移せないというフラストレーションが蓄積していた時期と重なったのです。この機会に団体に発展させることでプロジェクトの可動領域が広がるのではないか、活動の幅を広げることができるのではないか、と考え、その勢いでインタネット掲示板で全国から仲間を募りました。

そうして集まった4人の大人と2人の高校生ともに2021年5月に任意団体「Dor til Dor(ドア・チル・ドア)」を立ち上げました。「次の1冊に手をのばす喜びをすべての子どもに」をモットーに掲げ、子どもの読書文化振興NPOと位置付けて、僕個人で行っていたフリーペーパーの発行を発展させて引き継ぐとともに、新たにイベント事業を通してより多角的な視点で子どもたちの読書文化を盛り上げていきたいと考えています。


現在地 ~結はこれから~

 現在、フリーペーパーは全国50ヶ所以上に設置していただいています。多くの読者の方からありがたい応援の声を頂いたり、学校の授業で配布していただいたり、これまでにない形態の移動古本屋といった珍しい施設でも配布するなどさらに輪が広がっており、今の1200という発行部数からの増加を見込んで印刷業を手掛ける株式会社との提携が決まっていることも踏まえて、今後の発展の方向を模索しているところです。

またイベントに関しては、現在フリーペーパーを設置している施設のスタッフの方を対象に、学校司書や書店員、図書館員などさまざまな立場から子どもと本について考える交流会・勉強会を企画しています。というのも、現在、学校司書は多くが非正規で不安定な雇用条件の中でかなりの負荷のかかる仕事となっているなどの問題があり、こうしたことの改善も読書文化振興には欠かせないと考えているからです。また、子どもの本を通して世界を広げ、異文化と出合うという観点から、コロンビア第2の都市メデジンと結んでオンラインイベントを実施するというアイデアも温めています。


まとめ

 以上のように、Dor til Dorでは、フリーペーパー発行やイベントの開催を通して、子どもたちの1冊でも多くのかけがえのない本との出会いをサポートしていきたいと考えています。こうして育まれた読書経験から、子どもたち1人1人に、自分なりの価値観や考え方、正義感、道徳観、夢……、など(こうしたことを僕は「世界観」と呼んでいます)を育てていってもらい、大人になった暁には互いに1人1人の世界観を尊重しあうことでより幸せに自分らしく生きられる社会の実現を目指したいと考えています。 

ちなみに、フリーペーパーやイベントの事業と並行して、他の関連団体と協働して活動してくことを視野に入れて、NPO法人化も準備中であり、僕自身は、大学では教育学を中心に学んで、大人になった後もずっと活動を続けていきたいと考えています。

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