マインド 子どもの読書文化振興NPO Dor til Dor(ドア・チル・ドア)

マインド

情報化の進む現代社会において、我々はこれまで以上に膨大な情報に日々晒されていますが、それに伴い、発信が手軽になったことで一つ一つの情報の価値が低下してしまいがちです。こうした時代に生きるからこそ、改めて、書籍が秘める力を再認識するべきなのかもしれません。

特に、子どもにとって書籍の持つ役割は大人にとってのそれよりもはるかに大きいです。なぜなら、子どもの成長過程に置いて書籍が果たす役割が、娯楽の道具や想像力の養成だけにとどまらないから。物語を楽しむ子どもたちは、余計な情報を交えずに、別世界に吹く風を感じながら、主人公という他者として「生きる」ことで、自己の存在を外側から観察することができます。こうして獲得したメタ認知能力は、子どもたちの自己形成に大いに寄与するでしょう。さらに、昔話や伝承などを中心に、人生100年時代の今を生きていくうえで大切になる道徳観や真善美、生き抜く勇気を長年にわたり説きつづけてきた作品も特に児童書に顕著です。また、読書を通じて集中力が高まった、勉強に役立ったと感じる人も多いでしょう。

このように、様々な側面から大きな意義のある子どもにとっての読書ですが、「活字離れ」が叫ばれて久しいのもまた現実です。そこで、行政はその訴えに応えて公共図書館や学校に対して様々な読書支援策を打ち出してきました。結果としては、近年の「学校読書調査」によれば、小中学生の読書率や読書量にはかなり改善が見られるものの、高校生については、読書量は横ばい、読書率に至っては悪化しており、これを受けて、読書の優先順位向上のきっかけづくりなどとともに、幼少期に読書習慣を確立することの必要性が指摘されています。

現在、小中学校などで行われる読書奨励キャンペーンは、「読書マラソン」など読書の「量」を求めるものが大半です。しかし、毎年大量に出版される絵本や児童書の中には必ずしも子どもたちの成長の糧にならないと思われる作品も多く、ただ多読を奨励するだけでは限界があるのではないでしょうか。

その点、代表の谷津は、子ども文庫(民間の有志が自ら集めた絵本・児童書の蔵書を地域の子どもたちに無料で貸し出す小規模な私設図書館)に通って、子どもの本を延べ4000冊読破するうちに本の虫になった経験から、高校生になっても本好きであり続けるためには読書の量だけでなく質が大切だと痛感しました。そこで、たくさんの良い本と出会う楽しみをより多くの子どもたちに広げたいと考え、「活字中毒が社会問題になる未来へ」を掲げて『月あかり文庫』を創刊したのです。『月あかり文庫』とは、設立者の子どもの頃の豊富な読書経験と高校生として身に着けた少し大人な目線をもとに、良い絵本・児童書を厳選して紹介するフリーペーパーです。

実際、こうした需要は高まっていたようで、創刊当初数ヶ所だった設置施設は次第に増え、創刊後1年少々となる現在、北海道から九州まで50ヶ所を超え、温かい応援のコメントも多数頂戴してきました。さらにこの活動は社会的にも高い評価を受け、全国的な賞を複数回受賞し、NHKや民放の番組にて取り上げられ、印刷系の株式会社との協賛契約や教育系の株式会社との合同イベント開催にも至りました。

しかし、当初の見通しが甘かったこともあって、今後のさらなる需要に伴う発行部数の増加に応えつつ継続的に発行することが、経済的・人員的に難しくなりつつあったのも事実でした。そこで、これを機に、NPOとして高い志を共有する仲間で集まり、より持続的にフリーペーパーを発行するとともに、フリーペーパーにおける発信のみにとどまらず、様々な媒体を通した情報発信やイベント開催などの取り組みを通して、さらなる子どもたちの読書文化の振興を目指したいと考えたのです。

団体化した今、これまで以上に活動の内容と範囲を発展させることが可能になりました。例えば、これまで以上に多彩な施設へのフリーペーパーの設置が可能になり、さらに幅広い家庭に、より良い絵本・児童書の情報を届けられます。また、これまでは人的資源の問題で難しかった新しい方向性のイベントなどの活動も可能になるのです。

すなわち、全国的に幼少期からの子どもたちの読書習慣の確立に繋がり、ひいては自己形成の促進や教育・教養水準の向上をはじめとして子どもたちの成長に様々な観点から寄与できるのではないでしょうか。子どもたちへの読書の普及を通して育った、知的好奇心を絶やさず、想像力豊かで共感力が高く、芯の通った人間は必ず我が国の将来を支える大切な存在となっていくに違いありません。