【ビジネスコンテストのヒント】第4回「収支計画のポイント」

4回にわたってお届けする「ビジネスコンテストのヒント」。今回が最終回「収支計画のポイント」です。

収益性の指標「総資本事業利益率」

一般的に、財務分析でいう「収益性」の最もオーソドックスな指標は、「総資本事業利益率」だと思います。業種や分野に関わりなく企業の収益力をみる最も公平な指標です。企業の収益力は損益計算書だけでは、公平な評価はできません。

例えば装置産業、鉄道や通信事業者の営業利益率はどのくらいでしょうか。昨年度JR東海の売上高営業利益率は37.8%です。NTTドコモも20%以上あります。

これに比べてスーパー・小売りはどうでしょうか。セブンアンドアイグループは売上高5兆3000億円に対して、当期利益は1300億円です。売上高当期利益率は2.5%です。

では、セブンアンドアイグループの収益力はJR東海に比べてそれほど低いのでしょうか。そんなことは全くありません。資本の回転率でみるとセブンアンドアイの方が圧倒的に高いからです。

投下した資本でどれだけの利益を上げているのかという総資本事業利益率(当期利益率)でいうとセブンアンドアイグループが3.7%、JR東海(連結)で4.4%です。一般的にいう利益率(売上高に対してどの程度の利益を上げるか)だと業種を超えた比較はミスリードになる、ということです。

収支のポイント

ちょっと話が逸れました。
ビジネスプランでいう「収支」というのは、集めた資金をビジネスに投下して、その事業を回していけるか、収益(売上げ)と利益を出し続けられるか、というのがポイントです。

資金だけでなく資本(社会資本)まで含めていいかも知れません。新たに事業を始めようとする人にとっては、「これから始める事業は、どれくらいの利益がでるのか」という点が、一番気にかかるところです。

創業後の収支の見込みを収支計画といいます。まず抑えておくべきポイントこれです。あなたのビジネスがうまくいったとき、①誰に②何を③いくらで、④いくつ売るかを決めることです。

売上高を計算する

例えば、ウェアラブルウォッチを売る商売を考えてみましょう。一般消費者に、ウェアラブルウォッチを3万円で、年間1000個売る事業計画を立てたとしたら、年間売上目標は3千万円(3万円×1000個)になりますね。

次に考えるのは、⑤いつになったらその目標まで行くか?ということです。例えばウェアラブルウォッチの開発に1年、販売活動で実際に売れ出すまで6か月かかったとしたら、1年目の売上高ゼロ、2年目は半分の500個となりますから、15百万円の売上高になります。このようにして売上高を考えてきましょう。

費用を計算する

次に費用です。費用は2種類ありますね。厳密には違うのですが、わかりやすく考えると、例えば①1個売れるごとにかかる費用 と、②個数に関係なくかかる費用 です。

例えばウェアラブルウォッチの生産を外注するとしましょう。1個当たりの仕入れが2万円とすれば、売れた個数×仕入れ価格が費用になります。これを原価と言います。

次にウェアラブルウォッチを開発するのに開発費用が掛かりますね。また人件費や事務所代なども。これらは個数に関係なく発生する費用です。例えばウェアラブルウォッチ設計・開発に4千万円かかり、5名の社員で事業をやる場合、一人当たり300万円と想定すれば、15百万円(5人×300万円)、あと事務所代は月10万円とすれば年間120万円。あと広告宣伝費などを使うなら、例えば年間200万円。合計5820万円かかります。これを販売管理費、略して販管費と言います。

あなたの利益

(売上高―原価―販管費)これがあなたの利益です。

資本金と借り入れで赤字をまかなう

創業当初は、まだものが売れないので、販管費ばかり出てきて赤字になりますね。ですが、だんだん物が売れるようになると、黒字になっていきます。WEB系のITなどはもっと早いといわれますが、一般的な企業まで含めると、3年でその年の収支の黒字を目指し、5年で累積の赤字を解消する事を目指すといわれています。

この前提でいけば、3年間はどんどん赤字が膨らんでいく格好になりますね。月単位で計算して、毎月出る赤字をためていくと、どこかの月で一番累積の(たまった)赤字が大きくなる月があります。この赤字額を資本金と借り入れで賄うのです。

資金の使途

以上の例でも分かるように調達する資金は大きく2つの使途があります。事業を始めるにあたってコストとして意識しなければなりません。固定費と変動費とに分けられますが、事業を始めるまでに開業資金が必要となります。開業すれば、すぐに運転資金が発生します。

1 .開業資金

店舗や設備、さらに広告宣伝等の開業にかかる費用です。これらの費用は、リース活用や複数見積もりをすることでコストダウンが可能です。

 2 .運転資金

具体的には仕入代金、人件費、家賃、水道光熱費等の事業遂行に必要な費用があります。売上が上がらなくても費用は確実に必要となります。資金調達力とその資金をベースに資金収支計画を万全にすることが起業成功の重要なポイントといえます。


これまで4回のシリーズでビジネスプランを実現する方法を考えてきました。ぜひ、みなさんも仕事に対する夢や希望を実現する方法のひとつとして「起業」を考えてみてはどうでしょうか。

自分自身の力で社会や世の中を変えるビジネスを創造できるとしたらこれほど楽しい、やりがいのある仕事はないのではないでしょうか。

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