2020年2月26日、僕はカンボジアの首都プノンペンから、ある場所を目指していました。
砂煙を上げながらマイクロバスに揺られること5時間、ようやくバスが止まりました。もう夕方です。やっと着いたと思い、バスから降りるとそこには見たこともない景色が広がっていました。
赤土の地面、その上に何軒も建つ高床住居、噛まれたら致死率ほぼ100%の無数の野犬たち、そして何やら興味深そうにこちらを見ている子供たち、、、
今日からここで5日間過ごします。
言葉も通じないホストファミリーに連れられ、家に向かうと、その家は床は細い竹を何本も敷いただけの、下が丸見えでスッカスカの高床で、決して新しくもない家でした。
こんなパンパンのスーツケースを置いても大丈夫なのだろうか、ここで僕たち3人、そしてホストファミリー4人の計7人が毎晩寝ても崩れないのだろうか、とさえ感じてしまいました。
荷物を置いて一息つくと、何やら子どもたちがこちらへ遊んでくれと言わんばかりに寄ってきます。
かわいい、、、、、
子供達の純粋無垢な瞳に悩殺されてしまいました。
すると突然、僕はある男の子に脇腹をくすぐられました。宣戦布告です。家の中で子供たちくすぐり合いが始まりました。子供たちは大盛り上がりでした。15人ぐらいで暴れても家は崩れることなく、しっかりと建っていました。僕の心配とは裏腹に、計算し尽くされた構造で決して倒れない設計になっていました。
しばらくすると1人の男の子が何やらジェスチャーで訴えてきます。顔の前で円を膨らませていました。
シャボン玉か!
僕はスーツケースからシャボン玉を1つ取り出し、その子にあげようとすると10人ぐらいの子どもたちが寄ってたかって手を伸ばしてきました。僕は正直
シャボン玉1つでこんなになるの!?
と思ってしまいました。
結局シャボン玉はみんなで遊ぶことになったようで、シャボン玉1つでこんなにも楽しそうに外で遊ぶ子供たちを見て僕は心が洗われた気がしました。
その後もおんぶや肩車、サッカーなど子供たちに振り回され続け、気づいた時には身体中土まみれでした。
あたりは暗くなり夕食の時間です。
この村では一体何を食べているのだろう、、、
好奇心と不安が半々でした。毎年ほとんどの参加者がご飯お腹を壊すと言います。目の前に出されたのはお米と野菜炒めとジャーキーみたいな肉と見たことないフルーツでした。
あれ?意外と普通じゃん!
そう思いながら口へ運ぶと次の瞬間、美味すぎてぶっ飛びました。
いくらでも食える。これでお腹を壊すわけがない!
味付けは日本に近く、何度もおかわりしました。
夕食を済ませ、お父さんに呼ばれました。ついていくと水瓶がある家に隣接する個室でした。なにやらお父さんがシャワーらしきジェスチャーをしています。お風呂でした。お風呂というか水浴びでした。
僕は温水が恋しくなりました。その時は。
この時唯一困ったのは水関係でした。村の水は全て雨水で、綺麗ではなく、これで歴代の参加者はお腹を壊します。僕たちは持ってきたガロンの水を口に含むようにしました。
水浴びからの帰り、ふと空を見上げるとびっくりするほど星が綺麗でまさに満点の星空でした。
風呂と歯磨きを済ませるとお母さんが薄いマットと枕、そして蚊帳を用意してくれていました。時刻は9時。消灯の時間です。
いや早くね?
そう思いながら横になりましたが、僕は一瞬で寝ていました。
この日は僕の人生の中で最も非日常であふれていました。何から何まで新しく、そしてWi-Fiも水道も十分な電気もない生活、そして可愛すぎる子供たちが僕を変えようとしていました。
つづく