R.I.P

僕が小学校1年生の時に家族旅行で沖縄に行きました。そこで本当にばったり、学校で仲良しだった友達に会いました。その子の名前は凱(がい)と言って、同じクラスで昼休みに一緒によく遊んでいました。

だから二人とも目を見合わせて驚いて「こんな偶然あるんだね!」と、まるで宝くじの一等賞が当たったかように、よろこびました。一緒に海で遊んだし、バナナボートにも乗りました。あんまり楽しくて、だから沖縄はすぐに終わってしまいました。


小さい頃って年賀状を送るのは特別で「仲良しの証」みたいに思っていて、だから僕は凱に年賀状を書きました。次の日から僕は「返事はまだかな〜」とワクワクしながら、ポストを開けたり閉めたりしていました。

やっときたハガキには、わざわざ色鉛筆で一文字ずつ違う色を使って、僕宛てのメッセージが書かれていました。

「おきなわ楽しかったね。また来年もぜったいにおきなわにいこう!」

文字の横には、夏ってだけで2人でスイカ割りなんてしてないのに、スイカを前に目隠しをして楽しそうに棒を持つ2人の絵が描いてありました。でも、僕はそれを見て、沖縄に早く行きたくて行きたくて仕方なくなりました。また一緒に沖縄で遊びたいと思いました。




でも、その約束は叶いませんでした。




小学校2年の春、凱は交通事故で亡くなりました。まだ8歳でした。見通しの悪い坂道からトラックが下りてきて、飛び出した彼は轢かれて、亡くなりました。トラック運転手は当時寝不足だった、と噂で聞きました。

学校から凱がいなくなりました。

その時の道には信号が付いていなくて、学校の先生達や凱のお母さんが、警察に嘆願書を書きました。

けれど今も、信号はありません。

だから、せめて信号があるところは、赤信号でどれだけ車が来てなくても絶対に渡らないと、僕は決めています。僕を見て、子どもたちが真似をするかもしれないから。


あれから13年。こないだの春に、久しぶりに凱のお墓参りに行きました。お花とお酒を買って行きました。

これからずっと行き続けようと思っています。

凱のことを忘れないために。