クインテットで職場実習に取組んだ2週間の様子と工夫について

前回の記事「クインテットの障害者雇用の取り組み~職場実習の仕事内容について~」でもご紹介したとおり、クインテットでは2018年の6月に障害者職場実習支援事業を活用し、実習生の職場実習の計画・受入れを行いました。

今回は、実習生に職場実習で実際に行っていただいた仕事内容や、実習生にとって実りのある体験となるよう工夫したポイント等をご紹介いたします。

クインテットが利用した「障害者職場実習支援事業」とは

今回クインテットでは、今後いっしょに働く雇用者が、安心して活躍いただけるような環境づくりができるように「障害者職場実習支援事業」という制度を利用しました。

「障害者職場実習支援事業」とは、身体障害者・知的障害者・精神障害者を雇用したことがない事業主を対象に障害者の受入れ態勢を整えることを支援する制度です。

障害者職場実習支援事業の対象者

障害者職場実習支援事業を利用するためには、以下のどちらかに該当することが条件となります。

(1)【事業主】過去3年間、障害者の雇用がない

    【障害者】身体障害者/知的障害者/精神障害者

(2)【事業主】過去3年間、精神障害者の雇用実績がない

    【障害者】精神障害者

クインテットは、障害者雇用の経験がないため(1)に該当します。

障害者職場実習支援事業の措置・受入謝礼

この条件に当てはまった場合、どのような支援が受けられるかというと、実習生を1週間~1ヶ月の間、1日3時間程度受け入れることで、実習生1名につき1日5,000円の謝金が支払われます

※限度額は同一年度で50万円、支給回数は同一年度2回まで

障害者実習生の簡単なプロフィールと受入れスケジュール

今回クインテットで受入れた実習生は、絵を描くことを得意としていて、元気よく挨拶ができる10代の男性です。

職場実習は、1日6時間を2週間にわたり実施しました。具体的なスケジュールはこのような形です。

時間

主なスケジュール

11:00

出社

11:00~13:00

仕事

13:00~14:00

お昼休憩

14:00~17:00

仕事

17:00

帰社

クインテットでは、フレキシブル制度を導入しているので、実習指導の担当者が全員出社している11時を実習生の出社時刻としました。

障害者実習生の仕事内容

障害者実習生には、ラベルシールの作成や、書類のデータ入力、拭き掃除など、さまざまな業務をお任せしました。

時間

1日目

2日目

11:00~13:00

(2時間)


冷蔵庫に飲み物を補充

コピー機にコピー用紙の補充

消耗品の個数確認

拭き掃除(主にテーブル)

洗剤の補充

ホワイトボードの掃除

冷蔵庫に飲み物を補充

コピー機にコピー用紙の補充

ラベルシールの作成

14:00~17:00

(3時間)

書類のデータ入力

日報の記入

絵日記の作成

冷蔵庫に飲み物を補充

当社のHPをみてもらう

給湯室の掃除

日報の記入

絵日記の作成

なお、実習生より将来PCを使用して入力業務をしたいという希望があったので、職場実習の後半はPC業務が多めです。

職場実習で行った工夫

クインテットでは、実習生にできるだけ多くの仕事を体験いただけるように下記①~④の工夫をしましたのでご紹介いたします。

①仕事内容にレベル感を待たせる

「仕事にやりがいや達成感を感じて欲しい」との思いから、お任せする仕事内容にレベル感を持たせる工夫をしました。

その結果、難しい仕事は一つひとつの動作をおさらいしながら身につけていくことや、本人が簡単だと感じている仕事はより1人でできるように指導速度を速めました。探り探りでしたが、細やかな取組みが本人の成長に繋がることを体感的に学ぶことができました。


中でも、特にレベル感をもたせて行った仕事は「ラベルシールの作成」です。

<仕事の伝授方法>

1回目

・ラベルシールがどのように使われているかを説明

・ラベルシールの枠組みが完成しているデータに住所のみ入力

・印刷して自分が作成したラベルシールを手にとってみてもらう

2回目

・ラベルシールの枠組みの設定方法をみてもらう ※メモを取ってもらう

・メモをみながら、実際にラベルシールの枠組みを設定してもらう

  ※分からない箇所はその都度確認・助言

3回目

・分からなかった箇所について再度確認・助言

・メモをみて振り返りの時間を設ける

・指導者から再度分からない箇所はないか質問して、はじめから作成

4回目

・実習生にラベルシールへ入力して欲しい住所を共有して仕事を依頼

・できる仕事に変わったこと確認して独り立ちへ

☆声かけのポイント☆

A:「分からない箇所はどのタイミングでも相談してください」と伝える

B:「声がかけづらいときはメモを取っておいてください」と依頼し「後で一緒に考えましょう!」と伝える

声かけのポイントは「Aができない場合はBをお願いします」と、もしAをしようとしても指導者が席を外すことや、他の社員と話している可能性を考え、混乱しないように次の手段を伝えることを意識しました。

そのため、実習生がおろおろと困っていることは少なく、常に自分のペースでコツコツ仕事をしている様子でした。

②さまざまな業務内容を組み込んだスケジュールを立てる

次に「実習前よりも働くイメージを明確にして欲しい」との思いから、できる限りさまざまな業務内容を組み込んだスケジュールを立てました。しかし、指導者の都合で新しい仕事を準備できない日は、すでに行ったことのある仕事のレベルを上げることを意識しました。

③社員とのランチ会で「一緒に働くこと」へのイメージを深める 

その他にも昼食休憩には、他部署の社員とランチ会を設定しました。社員の中には自ら「参加してみたい」と声をかけていただくこともあり、ランチ会は社員にとっても有意義な時間だったと思います。ランチ会が実習生の負担になることなく他部署との交流を通して、働くイメージが深まれば非常に嬉しく思います。

④クインテット流「振り返りシート(絵日記)」で言葉では表現できない気持ちを共有

クインテットでは、実習生の気持ちを正確に理解するために、毎日実習生に振り返りシートを50分前後(タイピングの練習も兼ねて)絵日記形式で作成いただきました。絵日記形式にした理由は、実習生が絵を描くことが好きだったことと、絵から言葉で表現できない気持ちを感じることができるのではないかと考えたからです。


【クインテットで設けた3つの項目】

・良かったこと、うれしかったこと

・難しかったこと、不安に思ったこと

・次(明日)がんばりたいこと



実習生に振り返りシートを作成いただいたことで、実習生の率直な気持ちを知ることができたこともありました。特に、実習生が「どうすればできるようになるか」「もっとどんな工夫が必要だったか」「改善方法は何か」と考えていたことを知れたのは、絵日記があったからこそです。そのため、指導者側だけが工夫を凝らすのではなく、常に実習生の声を聴くことが大切だと改めて気づくことができました。

まとめ

2週間の職場実習の様子を2記事に分けてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

はじめは仕事の切り出しからつまずきましたが、周りの力を借りながら職場実習を終えることができました。

私にとって2週間の実習期間は、1日6時間いっしょに仕事をすることで、第一に本人のメンタルケア、第二に“いっしょに”仕事をマスターしていくという意識がとても大事だと学べた期間となりました。

職場実習から見えた今後の課題は、来年に「障害者職場実習支援事業」の制度を利用する際、身体障害者、知的障害者、精神障害者の方々に、切り出した仕事を実践いただけるよう、カリキュラム数を増やすこと。そして、より活用しやすいカリキュラムに改善することです。

また、今後は「障害者職場実習支援事業」だけでなく「トライアル雇用」も行って、仕事に関する相談ができる環境、労働時間の配慮ができる環境、能力に応じて適切な仕事の割り振りができる環境作りに力を入れて、いつでも受け入れが可能な態勢を目指していきたいです。

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