”一旦やってみる”が繋いだ縁

日常の一コマを切り取って、伝えたいことを伝えられる文章を書くというライティングの課題で書いた文章です。


夏休みも終わろうとしている8月18日、私は福岡市西区藤崎高取商店街にいた。
なぜこんな市街地から外れたところにいたのかというと、趣味の一つであるコスプレをするためだ。高取商店街では定期的にコスプレイベントを開催しており、今回は同時開催でアニソン・ボカロを使用したダンスバトルがあっていた。
 
こういったイベントの一環としてのダンスバトルは、福岡では珍しい。興味があった私は前日まで出場するか迷っていたが、持病の影響で数日前に軽く体調を崩してしまい、万全ではないことから出場は断念。今回は観覧として参加することにした。
 
着替えて会場に行き、いざイベントが始まると、私は違和感に気づいた。
出場も観覧もコスプレして参加可と運営側から事前にアナウンスがあったにも関わらず、40人程度の出場者おろか、観覧の中にもコスプレしているのは私以外誰もいない。
そもそもの話、観覧の人数が明らかに少なかった。私と同行者兼カメラマンとして来てくれた後輩のほかに、未成年出場者の保護者らしき人や出場者の同行者らしき人のすべて合わせても10人いるかいないかぐらいだった。
その中でコスプレして観覧している人間が一人。浮かないわけがない。
それとなく気まずさを感じながら、観覧として部屋の端でバトルの行く末を見守っていた。
 
バトルは自体は見ていてとても面白かった。
普通のバトルとは違いアニソンやボカロが好きな人が集まっているため、戦うというより会場を盛り上げるという雰囲気があった。
出場者も多種多様で、動きが明らかにバトル熟練者な人、マイナージャンルで挑む人、被り物や小物を使いだす変わった人までいた。
長い間ダンスをやっているが、アニソン・ボカロでのダンスバトルを生で見るのは初めてだったので、こういった会場の空気を肌で感じられることに心躍った。
本来はコスプレイベントの方にも参加するつもりだったが、予定を変更してほとんどバトルの観覧に時間を割いた。
 
イベントが終了し、電車で帰宅する最中、私はコスプレ写真の投稿もしている趣味用のSNSアカウントで感想を投稿してみることにした。
普段は滅多にやらないのだが、盛り上がる会場の空気や楽しんでバトルに出場したダンサーさんに感動し、その気持ちと感謝を伝えたかった。夢中になっていたからか、乗り換えの駅で降り忘れそうになった。
 
それらを見てくださった方が多く、数日間の間でSNSのフォロワーが急増した。
フォロワーさんの一部からは「コスプレして観覧にいた人ですよね?」と声をかけてもらい、交流が始まった。
その中で、ダンサーさんが抱ええるアニソン・ボカロバトルへの熱意と楽しさを教えてもらい、自分もやってみたいという気持ちになった。
いつかバトルやコンテストに出てみたいとつぶやくと、フォロワーさんの中にバトルやコンテストの運営をやっている人がいて、9月ごろにコンテストをやるから出場してみませんかと声をかけられた。
 
つい先日、コンテストのエントリーを終わらせ、現在は本番に向けて準備中だ。
参加表明をした際、フォロワーさんに「当日お会いできるのを楽しみにしている」とたくさん声掛けをもらった。
フォロワーさん以外の出場者さんからお声かけしてもらうこともあるので、また新しい交流も生まれそうだ。
 
実はバトルの観覧中、一瞬着替えようかと迷っていたが、着替えなかったおかげでコンテストに出るところまでたどり着くことができた。
このように、自分の行動に少し気になるところがあっても、深く悩まずに一旦やってみるといい方向に転がることもある。自分の趣味や好きなことなら、尚更自信をもってやっていいと今回の一件で私は思った。




22070003 ノベル&シナリオ専攻 三年 熊谷夢奈
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