Ca mập đen

私はこのサークルにおいては新参者である。主たるメンバーが2018年度前期のSTARTプログラムでインドネシアに留学した者たちで構成されているが当の私は2018年度後期のSTARTプログラムでベトナムに留学ししばらくしてから代表に誘われこのサークルに所属することとなった。そんなわけで私は主にガヤ担当、もしくはメインメンバーの企画をサポートするいや、ただ付いていくいわばコバンザメ役である。そんな私にもこのように記事を書く機会を与えられたのでこのサークルに所属するきっかけとなったベトナム留学で得た経験を少々記していこうと思う。拙い文章であるがご容赦願いたい。

 私は南ベトナムのホーチミン市に留学した。気候はご存知の通り常夏である。当然ながら当時も非常に暑かった。空港に到着して2秒で留学期間この気候と付き合っていけるか不安になったのを記憶している。それはともかくとして始まった留学であった。
 このSTARTプログラムは現地に赴く前に事前学習として現地の事象について調べ、現地で理解を深めるというものである。私の所属するグループは『南北ベトナムの違い』という少々センシティブな事象を担当することとなっていた。東西冷戦の象徴としても語られるベトナム戦争、この影響で南北の溝は我々が想像するよりも深いものである。それを部外者の我々が土足で踏み込んでよいものなのかと日本で学習している間は何度も考えたものだ。
 前述の通りこの戦争は共産主義国家と資本主義国家の代理戦争である。北ベトナムは共産主義国家の支援を受け南ベトナムはその逆の国家から支援を受けていた。ご存知の通り北ベトナムの勝利という形でこの戦争は終わる。7.62㎜弾を用いた南側は短小弾を使用するベトコンに苦しめられた。そこで米軍が「枯葉剤」を用いたことは有名である。そしてそれにより何が起きたのかもご存知であろう。
 さて、現地での学習においてであるがやはり南側の人の多くは北側の人にいい印象を持っていないように感じた。北の人のことを話すときは言葉の端々に嫌味を含ませる。なかなか南北歴史観の差について聞き出せずにいた。そんななか現地の学生たちと共に訪れたのが戦争証跡博物館である。そこでは資本主義国とりわけ米国がどれほど残虐な行為をしてきたかということをこれでもかと展示していた。勇気を出して仲良くなった現地の学生に聞いてみた「南部の人たちはこの戦争をどうやって教育されるの?」と。彼は「南部の人はこの戦争については教育されたことを信じてないよ」と答えた。その言葉で気が付いた。我々日本人がもつベトナム戦争の印象は北側によるプロパガンダで形成されているのだと。もちろん私は南北どちらも支持できる立場にない。戦争はどちらも正義ではない。戦争は自分が正しいと盲信することから始まるのだから。
 こうして私たちの『南北ベトナムの違い』を現地で調べる日々は重苦しく進んだ。出てくる資料は北側のものばかり、南側の人に話を聞けば雰囲気が暗くなる。こんな日々だ。調査報告の発表時も非常に苦しかったことを記憶している。しかしこの経験は帰国してから活きてくるものとなった。まずマスコミから与えられた情報は鵜呑みにせずあらゆる手を用いてできる限りその事象について調べるようになった。そうして気が付いたのは日本におけるマスコミは虚報ばかり流すということだ。一瞬にしてマスコミ不信になってしまった。しかし私にとってこの留学はまた新たな視点で日本を見つめなおす機会を与えてくれた素晴らしいものであった。今後機会があれば長期の留学に行きたいものだ。

結びになるがベトナムは本当にいい国であった。人々は親切だしご飯はおいしいしおまけに物価は安い。訪れたことのない人はぜひ一度行ってみてほしい。