ヤドリバエ同定入門⑤ 〜setae on facial ridge〜


お久しぶりです. 虫キョロリスです.
東大の授業や課題で忙しいのと, 昆虫関係の案件がいくつかあるため, なかなかここに記事を書く時間を取れていませんが, なんとか少しづつ書いていこうと思います.

ヤドリバエ同定入門シリーズでは,
ヤドリバエの同定で鍵となる形質について, 一つ一つ説明していきます.

今回は, "setae on facial ridge "についてです.
この項目は, 非常に重要な項目です.
Mosch webでは18番目の項目, CMPDの検索表においては多数のcoupletに記されていますね.
まず, facial ridgeという部位がどこを指すのか説明します.
前回の記事で, 若干出てきましたが.
下の写真を見てください.  facial ridgeというのは, ズバリ, ここです!

    ↑Dolichocolon sp.の頭部正面

青色で示した部分ですね.
厳密にどこからどこがfacial ridgeなのか, どこが境界線なのか, について説明します.
facial ridgeの上側の境界は scapeの付け根下端で,
facial ridgeの下側の境界はvibrissaの付け根です.
scapeというのは, 触角第一節のことです.
vibrissaというのは, 顔の下のほうにあるひときわ長い剛毛のことです. 日本語では, 「髭剛毛」というふうに呼ばれます.
詳しくは, 下の写真を参考にしてください.
   ↑Prodegeeria japonicaの頭部側面

前回出てきたparafacialと今回のfacial ridgeを混同しないようにしましょう.

今回は, ここの剛毛の量がポイントになります.
facial ridgeの剛毛の量に応じて, 次の6つのタイプに分けられます.
ちなみに, 分け方は色々あります. 下記の分け方は一例に過ぎません.

①facial ridge with setae on 1/5 or less of its length
 (facial ridgeはその1/5以下の範囲にしか剛毛がない)
facial ridge with setae on approximately 1/4 of its length

 (facial ridgeはおよそその1/4の範囲に剛毛がある
facial ridge with setae on approximately 1/3 - 2/5 of its length

 (facial ridgeはおよそその1/3〜2/5の範囲に剛毛がある
facial ridge with setae on approximately 1/2 of its length

 (facial ridgeはおよそその1/2の範囲に剛毛がある
⑤facial ridge with setae on approximately 3/5 of its length
 facial ridgeはおよそその3/5の範囲に剛毛がある
facial ridge with setae on approximately 2/3 or more of its length
 facial ridgeはおよそその2/3以上の範囲に剛毛がある


 重要形質度: ★★★★★
 わかりやすさ: 少しわかりにくい


では, 1つずつ具体例で見てみましょう.

facial ridge with setae on 1/5 or less of its length
  ↑Tachina amurensis? ♀の横顔

上の写真を見ると, facial ridgeは, vibrissaの上にちょっと剛毛が生えているだけですね.
facial ridgeの1/5以下の範囲にしか剛毛が生えていないということになります.


facial ridge with setae on approximately 1/4 of its length
  ↑ドクガヤドリバエ Isosturmia pictaのメス

facial ridgeに生えてる剛毛は依然少ないですね.
facial ridge上の剛毛が生えている範囲(赤色部分)の長さが, facial ridge全体(青色部分)の長さのおよそ1/4程度になっています.

ちなみに, 若干 数学がからんできますが,
上の写真の赤色部分と青色部分の比は,
下の写真の赤色部分と青色部分の比と同じですね.

  ↑ドクガヤドリバエ Isosturmia pictaのメス

つまり, 高さの比で見ればいいんですね. こっちの方がわかりやすいので, 普段私はこちらのやり方で比率を計算しています.

ただ, 一つ注意があって, この長さというのは見る角度によって若干変わっちゃいます.
なるべく真横から観察して, 比率を計算しましょう.
真横から というのは, 頭部上面の剛毛が, 手前と奥とで大体重なるように見える角度ですね.


facial ridge with setae on approximately 1/3 - 2/5 of its length
ちょうど良い標本が見つからなかったため, 省略します. すみません.

facial ridge with setae on approximately 1/2 of its length




現在執筆途中です. しばらくお待ちください.