デザイナーズマーケット(1年夏休み) テープカッター

志望職種
プロダクトデザイナー

学科・専攻・コース
プロダクトデザイン学科・工業専攻

作品タイトル
スチームパンク風セロハンテープケース

作品画像

使用したスキル・実作業時間

設計・ペーパークラフト(50時間)、フュージョン360(9時間)、製作(96時間)、イラストレーター(14時間)


課題の概要
テーマである「重」に合わせて作品を製作し、デザイナーズマーケットに出展しよう!

作品の概要

古代のオドメーターから着想を得て、「回転を距離に変える」セロハンテープを作りました。セロハンテープを引っ張ると重なり合った歯車が綺麗に回転し、横面にあるメモリから切り取ったセロハンテープの長さの概算が分かります。

作品製作時の思考過程
今回の課題は二週間丸々製作期間に充てられるようだったので、時間をかけてでもなるべく同級生の中で自分しか作ろうと考えないような新しい物を作ろうと考えました。
そうして自分の得意分野・やってみたいことを振り返った時に、複雑な動きのある役立つものを作りたいと思いました。
そう考えた時に思い出したのがアルキメデスやレオナルドダヴィンチが設計していた古代のオドメーターです。
(7 удивительных изобретений от Архимеда | New-Science.ru)より

古代のオドメーターはタイヤの回転に合わせて穴の開いた歯車が回り、セットされた球が一定の距離ごとに落ちるといった仕組みになっています。
この「回転を距離に変える」仕組みを面白いと感じたので、何かに使えないかと考えました。

そうしていくつかの候補の中で真っ先に思いついたのがセロハンテープケースです。
セロハンテープケースではセロハンテープの芯の中心にあたる部分を固定することで、テープを回転させながら切り取れるようにしています。
ただ、テープケースはテープを取りやすくするためだけに回転させているものがほとんどで、回転を有効活用したりしているものや視覚的に楽しもうというものはほとんどありませんでした。
そこで自分は自身の工学系の経験の積み重ねをうまく使うことで、テープの「回転を距離に」変え、テープの長さを測れるのではないかと考え、スチームパンク風で視覚的に楽しめるセロハンテープケースを製作することにしました。

製作するものを決めてから始めたのが、使用する歯車の設計とペーパークラフトです。
歯車は正確に計算を重ねて作らないとかみ合わなくなってしまいます。寸法を大きくしすぎると引っかるし、小さくしすぎるとスカスカになってうまくかみ合いません。
そこで一般的に使用されているのがインボリュート曲線と呼ばれる独自の曲線です。
固定した円柱に巻き付けた紐がほどかれる時に通る軌道として知られるインボリュート曲線は、かみ合った歯車の中心の距離が少し離れてもかみ合い続けるという使い勝手の良さから歯車設計の定番になっています。
自分もインボリュート曲線を使用して様々な異なる大きさの歯車の設計を行いました。(ペーパークラフト用なので通常より作りやすさ・ゆとりを意識して設計しました。)
歯車の設計が終わった後、どこに何個歯車を使うか決定し、バランスと見栄え、機能面を見るためのペーパークラフトの作成を行いました。



厚紙に展開図を描いた後、切り出し、中心に空いた穴に竹串を通して、配置場所を精査しました。
また、この時外側のケースは上に物を重ねられる直方体に決定し、グルーガンで接着を行いました。

歯車の大体の配置・場所が決まったら、テープの着脱時の動作を考えながら3DCADにて設計をしました。
計62個のパーツを組み合わせて理想の形に組み立て、それぞれのパーツ間の間隔を三次元的に測りながら、スムーズにテープを取り外すことができるように配置を調整します。
完成した3DCADデータが以下になります。


また、テープを取り外す時のシミュレーションは以下のようになります。
3Dデータが完成したらそれをもとに3Dプリンターで出力しました。
出力物ができたら、やすりで磨いて、サフェーサーを吹いた後、筆で塗装し、ギルディングワックスを付けてアンティークの銅のような質感に近づけました。
すべての歯車と留め具の塗装が終わったら、レーザーカッターで切り出したアクリル板、真鍮棒、レジンで固定した金属刃を組み立ててテープカッターを作りました。
このテープカッターでは、セロテープを引っ張ると6つの歯車がテープの回転に合わせて回転し、右横に付いているメモリも回転するようになっています。
セロハンテープの直径を考えて、1メモリの回転が約2cmになるようにしました。また、使用に合わせてのテープ直径の変化による影響が1cmにつき±1㎜以内になるように微調整をしてセロハンテープの完成としました。

完成したテープカッターの動画はこちらになります。

実際に完成したテープカッターを展示場所に置いてみたら、それだけだとかなり寂しかったので追加で飾りや説明書きを作成することにしました。
同級生の中でとても綺麗に世界観を纏めていた斉藤絵里奈さんの魔導書のページを周囲に散らしたり下に引くアイデアが素晴らしく良いなと思ったので、本人にやり方を教えて貰いました。魔導書のページを水につけた後、乾かすことで古びた感じを出したみたいです。

自分は、教えて貰った方法を応用して古びた設計図風の物を敷きたいなと思ったので、作製することにしました。
まず、古紙風のテクスチャの上に今まで作って来た作製手順を英訳して図と共に並べ、纏めつつ全ての線をぼかして古紙と馴染ませます。
そして印刷した3枚のA3のプリントの切り落としをしてから、水を溜めた浴槽に浸して乾かすのを2回繰り返しました。

出来上がった3枚の古い設計図風の敷物をテープカッターの下に敷きました。
また、賑わせ用の小道具として、高級なアンティークの木のテクスチャを貼り付けた厚紙で作った三角定規・分度器と歯車と同じ手順で銅色に塗装した工具、百均で買った砂時計を周囲に散らすことで古代の天才が設計に使っていた机をイメージして纏めることが出来たかなと思います。
説明書きは3Dモデルのデータを使って分かりやすくなるように纏めました。(画像は背景に薄めた設計図を載せてますが展示時は白です)
同級生の作品への感想
個人的には斉藤絵里奈さんの「時の魔法道具」の世界観が1番好みでした。
参考にした魔導書のページの敷物以外にも魔導書が重ねて置いてあったり、ランタンやいかにもな雰囲気の宝箱のような箱があったりで作品と一体になった世界観が綺麗にあらわれていました。特に作品の下(魔導書のページの上)に魔法風の鏡を敷いて深みを出す表現なんかはセンスしか感じなかったです。
自分と同じサイズの展示スペースのはずなのに、作品以外でもここまで出来るんだよって言われた気分でとても勉強になりました。
今後販促とかをする機会があるなら非常に生きる経験だったと思うので感謝です。

また、作品のアイデア・グラフィック系の纏め方では、リンさんの「たんぽぽ お団子シリーズ」がとても印象的でした。
屋台のようなハレパネで作ったスタンドに、ガチャガチャから出てくるようなグッズを飾る他、ガチャガチャによくある説明書きまで作っていて非常に完成度が高かったです。
また、紐を通してストラップにする所を他のグッズの底に入れて回すと重ねた状態で固定出来るアイデアは最初に見た時かなり感動しました。
スタック出来る商品については授業で習って知っていたはずなのに、「重」という繋がり安いテーマを受けてもスタックを考えすらできなかった自分は、インプットしたことをスムーズにアウトプットできるように、連想力を磨く必要があると思います。

感想・反省

今回は初めて自分の作品をしっかりと作り込むことができる機会でした。今までは日々進んでいく授業に追われながら次々と課題をこなしていたので、一つの作品に丸々2週間注ぎ込んだ今回の経験はいつも以上にとても面白かったです。

反省点としては、やはりまだまだ作品の「魅せ方」が弱いなと感じます。1年後期の授業では選択授業が出来るので、他の人より劣っているグラフィック的なセンスを磨いていきたいです。

公開年月日
2023年9月



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