いつの時代も変わらない毒親の影響

絵画の背景などを読み取り、文章にしたものの一作品目です。
今回はサルバドール・ダリ の「リンカーンの肖像に変容する地中海を見つめるガラ」より、考察等したものを書いています。

執筆にあたって引用したもの
https://euphoric-arts.com/art-2/salvador-dali/
https://note.com/jusho/n/n6ae71ab18965
TASCHEN サルヴァドール・ダリ/ジル・ネレー著



https://assets.st-note.com/production/uploads/images/33384467/picture_pc_40feaca3ef0f0ff70eb365e7467b201b.png?width=800
この絵画に描かれている女性はガラ。ダリの妻だ。
女性恐怖症であったダリが、ミューズと呼ぶほど惚れ込んだ女性である。
若いアーティストとの浮気癖があり、ダリが贈った別荘に不倫相手と引きこもってしまうといった、なかなか正常とは言い難い人物である。それでも、ダリは最期まで彼女を愛していた。ガラがこの世を去った際、ダリはショックで自殺未遂を繰り返し、ガラのいない別荘に引きこもってしまったという話があるほどだ。

では、なぜダリはガラにここまで惚れ込んだのか。
第一に、彼女の性格や能力面ではないかと言われている。ガラは、人としての器の大きさと優しさを持ち合わせた人物だった。マネジメント能力が高く、ダリが名を挙げる手助けをしていたと言っても過言ではない。
 
それよりもっと大きな影響だと思うのが、ダリの育った環境にある。
ダリは裕福だったが厳しい家庭で育った。死んだ兄の代替え品として育てられ、父親に梅毒の写真を見せ続ける虐待を受けて女性恐怖症になり、唯一の救いだった母親はダリが幼いうちに他界し、マザーコンプレックスを発症。今の言葉で表現すると、立派な毒親育ちで、ダリはとんでもないコンプレックス人間なのである。
こういった家庭の子どもは、常に存在を認められずに育てられる。
そんな自分のために能力を使い、支えてくれる。ダリからしたら自分の存在を認めてくれているようなものだ。大きな救いだったのではないのだろうか。
 
この絵画には、リンカーンとキリストが描かれている。これらに共通することは、すでに亡くなっていることだ。これらを死の象徴だとすると、ガラが死んでしまう(あるいは傍にいなくなる)ことが怖かったのだろう。コンプレックス人間特有の他人への執着が垣間見える。
さらに、度々出てくるように、ダリは女性恐怖症だった。そしてガラと結婚していながら、性別不明の人物(自称女性)と浮気関係にあったことがある。
愛する女性はいるが、その人を女性と思いたくない。いかにも恐怖症らしい理由だと思う。
 
現代の毒親育ちも、ダリと似たような行動を取ることがあると思う。
私自身も毒親育ちで、ダリほどあからさまな虐待をしてくる親ではないが、思考の歪みと呼ばれる毒親育ち独特の思考は一致する。そのうえ、ダリの行動は他人事とは思えない。
身近な人がいなくなるのが怖くて、執着する。
自分のために能力を使ってくれる人が、支えてくれる、存在を認めてくれる。そんな人が大きな救いとなる。
 
最近注目されてきた毒親という言葉。
だが、その存在も与える影響も、いつの時代においても変わらないものである。

22070003 ノベル&シナリオ専攻 二年 熊谷夢奈
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