私の推し

心を豊かにする、豊かにしてもらった、大切な言の葉たち

何かといえば、小説のことです。

 私は中学時代、ようやく買ってもらえたスマホを使い、「小説家になろう」の作品を日々読み漁っていました。

 それまでの小学校時代にも図書館や図書室に入り浸っている子供でしたが、スマホを手に入れたことによってより読書の時間が増え、寝食以外は文字を目で追っている、そんな生活をしていました。

 最初にハマったのが「イセスマ(異世界はスマートフォンとともに。)」だったのももはや懐かしいです。

 そんな中で高校時代までに見つけた、私の「推し小説」たちを紹介したいと思います。

 イラストレーターを目指しているのに口を開けば小説の話とか、脇道に逸れていると思うでしょうが、イラストにしてもテーマを探したり、文章からイラストに起こしたり、そもそもの文章を読み解く力がついたりと、小説を読むのは決して無駄ではないと私は思います。

 私が紹介するのは三つ。

 タイトルは
 「犯人は僕でした」
 「ペテン師は静かに眠りたい」
 「リーングラードの学び舎より」です。

 まず一つ目は、

「犯人は僕でした」
作者:駒米たも
URL:https://ncode.syosetu.com/n1105de/

 ある映画好きの青年が映画館で映画をみようとして、ふと気づいたらその映画の登場人物として映画の中に入り込んでしまい、そしてその登場人物(からだ)が、よりにもよってミステリー映画の犯人である殺人鬼のものだった、というお話。

 読み始めて最初に思ったのが、「まるで二次創作みたいな一次創作だな」でした。
まさか、その時の印象がそのまま一回転するなんて思わずに。

 主人公はこの犯人の最後を知っており、それを回避するために行動していきます。
 その中で、映画の登場人物たちと交流したり、しなかったりと日常を過ごしていくのですが。
 ある日、主人公の他にも映画の中に入り込んでしまった人間がいるのを知ることになります。
 そして見えてきたのは、ある一人の作家の人生でした。

 作品の全体として、一つの物事にたくさんの物事の意味をつなげ、重ねていくような構成のですが、読み続け、読み終えるにつれて気づきました。

 これは「読む映画」だと。
 私たち読者はこの作品を通して、一つの映画と、その役者(キャラクター)と、その作者たちの人生を垣間見たのだと思いました。
 これまで読んだ、知った情報の全てが綺麗に繋がり、今読んでいる現在につながるのだと感覚でわかってしまう。
 全てのものにルーツがあるのだと胸が締め付けられました。
 あまりに綺麗にまとまっていて、心に残った作品です。

 また主人公の「映画好き」の設定通りに、映画について語る主人公のアツさやこだわり、登場人物に向ける思いなどは見ているだけでこちらも胸が熱くなるような、「何かを好きでいること」「好きなものにかける思い」を再確認させてくれるような心の叫びが含まれており、私の創作する原点を思い起こさせてくれる作品でもあります。

 おそらく私の読んだことのある作品の中で随一の頭のおかしさを誇る主人公が、悲劇を喜劇に、バッドエンドを端から台無しにしていく姿は痛快で、爽快です。
 だって、「僕」はどこまでも観客で、ただの映画好きなのです。
 口を開けばメタが飛び出す彼にとって、物語の筋書き(うんめい)なんて関係ないのです。
 最後に一本取られたな、と笑い、全てに納得できる作品です。

 具体的なものはネタバレになるので書けませんが、気になった方、特に群像劇やミステリー映画が好きな方には是非、読んでみてほしいです。


 二つ目の作品は、

「ペテン師は静かに眠りたい」
作者:片里鴎(カタザト)
URL:https://ncode.syosetu.com/n7449cq/

 ある日、突然異世界に飛ばされたブラック企業のサラリーマンが、何も持たないまま唯一の武器である「話術」を使い、殺伐とした異世界を生き抜いていくお話。

 「静かに眠りたい」「平和に暮らしたい」と願いながらも、正反対の方向に向かっていく主人公は、ボロボロになりながらもどうにか「次」に繋げるために頭を回します。

 主人公はいつも必死であるのに、周りは彼を非常に恐れ、彼の掌の上にいるかのように振る舞うのもまたおかしく、主人公が綱渡りをしているサーカスを見ているような気分になります。

 主人公は何度も死にかけます。しかし、主人公は諦めません。自分の命を、平穏な暮らしを、意地汚く、生き汚く、どんなことになっても必ず生き延びるという気持ちがあります。たとえ「死にたくない」という後ろ向きなものであっても。主人公の何よりの人間らしさだと思います。

 また、(ネタバレにはなりますが)この小説では主人公の親、父親がたびたび回想として主人公の頭の中に登場します。それはくだらない風景だったり、ハッとするような世界の真理だったりします。
 この「親の言葉」が主人公を支配し、行動を縛り、はたまた指標にすることで進んでいくような展開も見ることになります。

 主人公は大人であり、自分で考え行動しますが、完全に自立した存在であるかといえば、そうではない。様々な人が主人公に影響を与え、そんな歪さもまたこの小説の魅力だと思います。


 そして最後に紹介するのが、

「リーングラードの学び舎より」
作者:いえこけい
URL:https://ncode.syosetu.com/n7826bd/
ジャンル:ファンタジー/学園

 内紛、革命を過去に持つリスリアという王国で、突如王様に「教師になれ」と言われた主人公が、個性豊かな同僚や生徒たちに振り回され、時に振り回しながらも新米教師として奮闘していくお話(図らずも5W1Hみたいな説明に…)。

 まず作品の魅力として「キャラが濃い」ことです。
 一見王道なキャラでも、その理由があり、過去があり、こだわりと誇りを持っています。
 それが生徒たちともなると、未熟さゆえにうまくいかなかったり、「子供(生徒)」という立場が邪魔したりと、いまくいかないことも多く、それに向き合い、共に成長していく大人たちの考えや陰謀があったりします。

 また特に際立って濃い…というより奇想天外な性格をしているのが主人公のヨシュアン・グラムで、思慮深いのに喧嘩っ早い、怒りっぽいけど面倒見がいい、穏やかなのに苛烈、軽いのに重い、と矛盾を擬人化したような様相となっていて、生徒からも「先生がおかしいのはいつものこと」と言われるくらいには頭のおかしい主人公です。
 それにも理由があるのですが、滑らかに乱降下するテンションと飛び交う軽口(たまに毒舌)が読んでいて一切飽きさせない、臨場感のある一人称語りとなっています。

 次に世界観の広さ、緻密さです。
 本編開始前、内紛時代に何があったのか、主人公の過去、どころか主人公の出身すら不明瞭、まだまだわからないことだらけであり、むしろ説明されている部分の方が少ないのでは?と思うくらい、本編に関わるところから、本編に一文も書かれないであろう場所の設定まで、隅々まで作り込まれているのがこの作品です。いわゆる「作中作」のような、その国の偉人や、生徒が手に取った絵本の中身まであり、どこまでも広い世界観が本編に存在感と現実感を与えてくれます。

 そして何より、文章が秀逸すぎることです。
 私はリーングラードの文章は全部好きなので、どこを切り出しても好きだと言えるのですが、
 リーングラードの魅力を語る上で選ぶならば、とくに好きな場面があります。
 (検索方法が悪いのか、肝心のその場面を探しても見つからないのですが…)

「明日雨が降ったらどうするんだ」
「傘をさして出かければいいじゃないですか」

 上のセリフが同僚である教師の一人、下のセリフが主人公なのですが。
 まさにこの通り、リーングラードの文章の魅力を最大限、一番短く伝えるとするならば私はこのシーンを選びます。

 ただの軽口、といえばそうなのですが、「発想を転換し解決する」「心配事を笑い話にする」軽妙な掛け合いなど、リーングラードの全体としての魅力を端的に表しているんじゃないかと思っています。

 主人公のスタンス、特性として「異邦人であり、その他の登場人物とは違った発想を持つ」というものがあります。何か問題にぶち当たった時、「こうすればいいんじゃないでしょうか」と主人公が提案する形で事態を解決していくのです。

 またこの例のように、ことわざに掛けてみたり、リスリア特有の逸話や神話に絡めてみたり、時には演劇の内容を再現してみたりと、その国独自の風習や言い回しまで細かく設定されており、生活に根付いた文化を感じられたりします。
 宗派によってわからない価値観があったり、信仰にまで突っ込んでみる話があったりと、人間の認識にまで及ぶ「自分と他人との違い」も明確にされています。

 その中で、生徒一人一人と向き合い、それぞれ問題の答えを出してみたり、すぐに解決できない問題には共に悩んでみたりする姿を見せていく主人公に、まだ新米の教師として、一人の人間としての成長が感じられます。
 そして生徒たちの抱える問題が解決していくと共に、読んでいる私もまた、より良い方向へ導かれていくような感覚になるのです。
 主人公が悩みながら生徒たちに接している姿を見て、私にも心をこめて、愛情を込めて守り導いてくれた人がいたのだと再確認できるのです。

 クセのある文体ではあり(地の文が敬語で皮肉屋)、賛否分かれるレビューがつくこともありますが、もし最後(最新話)まで読むならば、その違和感は解消されるでしょう。

 まずは第一章、第一章まで読んでもらえたならば、この作品の魅力は伝わるはずです。

 長くなりましたが…。
 何を隠そう、この小説こそ私の人生の推し、私の聖書(バイブル)です。
語り尽くせないほどの思い出と尊敬の念があり、また何度読んでも新たな発見がある作品でもあります。

 この作品は舞台が学校であり、登場人物たちのほとんどが「先生と生徒」です。初めて読んだ時は「大人ってこう考えるんだな」とか「小学生の時は、私も大人のことをこう思っていたな」と生徒視点で、成人した今になってみると「子供の考えのわからなさ、視野の狭さ」や「大人の大変さ」などと教師視点で。
 子供には子供の考えがあり、大人には大人の考えがある。

 視点を変えて、幅広い年齢で何度でも楽しめる作品です。

 すでに何度も読み返しており、
 友人に「話し方がこの小説に似てる」と言われるまでになりました。
 いい意味だと良いのですが。

 また、サムネにもなっているイラストは私がこのリーングラードの二次創作として描いた主人公・ヨシュアン・グラム先生のイラストです。
2022年7月12日製作 制作時間:8時間
 鼻筋や少し厚い唇など、元のイラストレーターさんのイラストの特徴を捉えて製作できたと思っています。
 またこのイラストを描く少し前まで漫画の制作をしていたので、その時に向上した線画の技術をここで活かせたのかなと思います。

 もとが小説なのもありファンアートが少なく、タイトルで検索すると高確率で私のイラストが出てくるのが気恥ずかしい時もありますが、
 この作品の良さは独占できるものではない…!という思いと
少しでも多くの人に知ってもらい、読んでもらうために!
これからも描き続けたいと思っています。

 ここまで紹介した三作品は総じて主人公や登場人物たちに「人間臭さ」が感じられるものです。何かしら欠点があったり、重要な過去があったり。
 そしてそれは、私に「この物語の登場人物は『生きて』いるんだ」と思わせてくれるものでした。

 悩んで、焦って、ままならない思いを抱えて、この人たちは「生きている」。
成長していく登場人物たちを見て、共感し、応援し、心を豊かにしてくれる作品ばかりでした。

 私もそんな作品を作りたい。

 それが私のものづくりの原点です。
 これからも、この小説たちが教えてくれた心と言葉を胸に作品を製作して行きたいと思います。

 ここまでご覧いただき、誠にありがとうございました。

 以上、「私の推し」小説
 「犯人は僕でした」
 「ペテン師は静かに眠りたい」
 「リーングラードの学び舎より」の紹介でした!

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