2019年の年末から誰も予測できなかったCOVID-19のパンデミックにより、20年7月から開催されるはずの東京オリンピックが延期となり、世界中の経済活動も混乱し、COVID-19も終息の兆しがまったく見えない。外国人留学生や日本企業の正社員ですでに働く外国人の卒業生と面談し、忌憚のない思いや現況、将来の展望を聞いた。
留学生の卒業後の進む道は、母国の事情でさまざまな傾向
筆者は、10年2月16日にI・B本誌とNet I・B Newsに、外国人留学生たちの現状や各種学校を卒業後の進路、留学生活を送る際に必要なアルバイト雇用の実情、将来の展望などについて書いた。
08年7月29日、文部科学省が「留学生30万人計画」を策定し公表、留学生ビザが緩和されたことを好機に、中国・ベトナム・ネパール・スリランカなどから、多くの外国人が日本への留学を志望し、外国人留学生が急増した。そのため、外国人留学生を20年までに30万人受け入れる計画は19年5月1日時点で31万2,214人となり、目標を達成した。
留学生は、中国12万4,436人・ベトナム7万3,389人・ネパール2万6,308人・韓国1万8,338人・台湾9,584人・スリランカ7,240人・インドネシア6,756人・ミャンマー5,383人・タイ3,847人・バングラデシュ3,527人・その他33,406人だ((独) 日本学生支援機構 「外国人留学生在籍状況調査」より)。
そこで今号のテーマに関して、2つの話題を紹介したい。
1つ目は留学生数に関して。18年5月1日時点の全国の留学生数は 29万8,980人で、そのうち、福岡県の外国人留学生在籍状況数は 1万9,296人だった。この留学生らが翌年、卒業後に留学生ビザから就労ビザに変更できた数は、わずか約800人なのだ。就職に至った留学生たちの内訳は、全国で2万5,942人だが、福岡県では 781人のみだった。
2つ目は留学生の卒業後の進路について。留学生らが日本語学校・専門学校・大学を卒業した後に進む道は、母国の事情などでさまざまな傾向がある。中国やベトナムでは急速な経済発展により、優秀な人材を多く求める企業が増加し、日本語と英語の会話ができると、多くの求人企業は高給で採用するため、10年前は多くの留学生たちがもっていた日本で働きたいという意欲や希望は一部の事情がある留学生だけとなり、今では「中国やベトナムからの留学生の本音は違う」と在校生たちから聞いた。
また、ネパール・スリランカ・インドネシアなどの留学生らは、日本企業で働き永住権を得たいという希望を意欲的に語った。母国では両親・兄弟姉妹が暮らし、本人は日本で生計を立てるという傾向があるという。やはり母国の経済事情も、留学するうえで目標目的の意識に大きく関係しているという実状について聞くことができた。
1つ目の傾向と2つ目の傾向とは一見すると別の事情のようだが、筆者は、深く関連していると感じる。企業側から多くの留学生を採用できなかったという声のみを聞いても、何の解決にもならないと感じるからだ。
お互いに発展できる価値の創出
現役の労働人口が急速に減少している日本の現状を鑑みると、人口増加の対応を実行すべき緊急を要する事態として真剣に考えなければ、近い将来も今の経済・社会福祉を続けることはできない。
筆者が話を聞いたなかでは、とくに大手高級シティホテル・旅行会社・商社などでは、外国人留学生に限らず、自社の発展に必須の人材スキルの1つとして、スリランカやネパールの留学生の多くが習得している各母国語、日本語、インドの言葉(主に南方のタミール語、北方のヒンドゥー語、インドには100以上の言葉がある)が挙げられているという。
主にインドの言葉を話す留学生は、英語や日本語の会話は当然として、上記の代表的な2つの言葉を使いこなせる人が多い。今後の社会経済動向を考慮すると、中国語やベトナム語以上に重要なスキルの1つだと彼らに教えてもらった。
筆者は、15年以上交流を続けている外国人の卒業生や、各種学校に入学し学んでいる留学生との交流を通して、日本と世界とを結び外国人との縁や絆を繋ぐという世界的視座をもち、お互いに刺激を与えて発展できる価値を創出することが自身の使命であると感じている。何事にも「人ごとではない」当事者の立ち位置で、全精力を傾け社会に貢献していきたい。
(上記文章記述 岡本弘一)