世界人類は皆平等~All human beings in the world are wqual
留学生は今後意識が変わっていくものと予想
以前の記事では、日本語学校・専門学校・大学などを卒業した後に就職に至った外国人留学生の人数を紹介した。
全国の外国人留学生は 29万8,980人で、福岡県の外国人留学生在籍数は 1万9,296人だったが、このうち翌年に卒業した後に留学生ビザから就労ビザに変更できたのは全国で2万5,942人、福岡県で781人というものであった((独)日本学生支援機構(JASSO)2018年5月1日 外国人留学生在籍状況調査結果より)。
外国人留学生は、一般的にまず日本語学校で学び、日本語学校の卒業後に各種専門学校や大学・短大(以下、各学校)へ進学する。ほとんどの留学生が各学校を卒業したら、日本で就職して長く住みたいと希望している。留学生は来日するときに描いた夢を実現するために、つつましい生活のなかで日々努力しているが、前述したように、就労ビザに変更できる留学生は毎年、極少数だ。
それにはいろいろな理由があるが、1つに、各学校を卒業した後の留学生の就職支援が極めて不足していることがあると感じる。せっかく教育を通して留学生を日本各地で育てても、日本で就職できなければ母国に帰る道しか選択の余地はない。
留学生は一般的に日本語学校で1~2年間、卒業後に専門学校や短大で2年間、大学なら4年間、日本で学んだのだ。おおよそ4~6年間をかけて育てた多くの留学生を夢半ばで帰国させる日本の基準はいかがなものだろうか。今はまだ日本に目を向けてくれている留学生も、あと数年が経つと意識に変化が起こるのではないかと筆者は予想している。
企業が留学生を雇用することで日本の将来に好影響
日本は、1986~91年のおおよそ51カ月間のみだが、札束が舞ったバブル経済という好景気の時期を過去に経験している。当時70万部を超えるベストセラーになった著書『Japan as No.1 : Lessons for America』は、アメリカ社会は日本社会に学べと言わんばかりの内容だ。本書には、アメリカは日本から何を学び、何は学ぶべきでないのか、ある点では日本人の特性を美化したうえでやや上から目線とも感じられるアメリカへのレッスンが描かれていた。
国内需要のみでは伸び悩む脆弱な日本経済を活性化する策として、訪日外国人(インバウンド客)の需要に軸足を移した矢先にバブル経済の再来かのように活気が生まれ、至るところで免税店を示すDFSの表示が目立っていた。多くの商売は外国人客の消費に頼って店舗数や雇用を増やしており、COVID-19の感染が拡大するまではこの「バブル」は続くと信じられていたはずだった。
ところが、COVID-19の感染拡大という未曾有の事態に直面したため、解雇や雇い止め、閉店や業務縮小が止まらず、9月までに500社以上の企業がCOVID-19の感染拡大に関連して倒産に至るほど、当時の「バブル」がまるで崩壊したかのような経済状況に陥っている。海外からの訪日外国人に頼らなければ生き残れないという日本経済の脆弱さがまたも露呈した。
景気の追い風に乗り続けられる確約のないVUCA(※1)時代を生き抜くために、未曾有の事態が発生せず状況の変化が少ないフレームワークを前提とした「PDCAサイクル」の思考に頼る時代ではないことを認識して、汎用性高いOODA(※2)ループのフレームワークを用いて、意思決定では機動性と柔軟性をもつ思考法を備えることが必要な時代だ。
日本の急速な少子高齢化、とくに若い働き盛り世代の人口減少は経済と社会福祉の衰退に直結する。日本経済が留学生らの母国から来日する外国人に頼らざるを得ない状況であるならば、企業がまだ日本に夢や希望を抱いて入国している留学生を1人でも多く雇用することが日本の将来に好影響をもたらすだろうと考えている。留学生がいつまで日本社会や日本語に魅力を感じて来日してくれるかということが不透明な今、企業は先手を打って準備することが必要だと確信している。
【岡本 弘一】
※1:変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性 (Ambiguity)。
※2:Observe(観察)、Orient(状況の判断、方向づけ)、Decide(意思決定)、Act(行動)。