能と脳の話。

 大暑の候、皆様はいかがお過ごしでしょうか。こんな季節の言葉も古めかしく感じる昨今は、新型コロナウイルスの煽りを受けてもなんとか社会は回っていますね。自分の大学では前期すべての講義がオンライン上での配信となり、ふとしたときに思わぬ弊害にあうこともしばしば。それではほんの少しばかり皆様のお時間を頂きまして、この記事を読んでくだされば。岡本蒼です。

 先日のさえちゃんの記事の紹介文でほとんどプロフィールを話されてしまいましたが、近況についてお話させていただきますね。実は大学で医療関係のお勉強をさせていただいて、自粛期間中はこれからの医療、とりわけ医師について考えさせられました。それが顕著な出来事として、臨床医学概論という講義に臨んでいたときに、朝食の目玉焼きを頬張っていたはずがすべて吐き出していたことがありました。パソコンの画面が教授のアップから切り替わり、とてもショッキングな頭部の外科手術の映像が流れたことが原因でした。罪のない朝食を返せ。

 気を取り直して、さえちゃんからの質問に答えていきたいと思います。

Q1.部活動で大変なところ!

A.さえちゃん、気の利いた質問ありがとう。それはずばり移動ですね。自分は大阪在住で、練習やお稽古のために片道1時間半をかけて京都まで行かなければなりません。下宿するにしてもそんな余裕はなく、往復の交通費、移動時間と憂鬱なことは多いですね。それでも続けているのは、能をさせていただけることは貴重な経験だなと実感することばかりだからですね。これについてはQ3に答えていく中でお伝えします。

Q2.最近はまっていること!

A.ということで、プライベートはあまり多く語らない自分ではありますが、せっかくなのでお答えさせていただきます。実は、就職活動に熱心に取り組む友達らと、1週間に1回の頻度でグループディスカッションなるものに参加しています。グループディスカッションは、与えられたテーマについて議論し結論を出すことが目的で、企業選考に多く採用されています。このグループディスカッションで重要なのが、どういった役割を担うかということです。議論の方向性を決める進行役、議論の進捗を把握し時間配分を調整するタイムキーパー、結論を簡潔にかつ論理的に説明する発表者などの役割を、適切に立ち回る積極性が求められます。自分は進行役がどうしても苦手で、回数を重ねることで少しでも苦手を緩和できればと考えています。

Q3.能の面白さ!

A.日本が世界に誇る伝統芸能、能楽は能と狂言から構成されています。狂言は比較的世俗的な面白さをもつのに対し、能はどちらかというと高尚な趣があります。そのため現代人からしてみれば敷居の高い印象を持たれる傾向にあります。しかし観世会に所属してから感じたのは、「演目の内容知らないから面白さわからない」「静かで眠たくなっちゃう」というネガティブなものではなく、本来人間が持つ純粋な驚きや好奇心という感情でした。シテ(能の主役的存在)の一挙手一投足に自分の稚拙な言葉では語れない凄まじさを味わうことができました。

 現代は手を伸ばすだけで、指を動かすだけで自分の興味・関心をひきつけるものに出会うことができます。SNSやネットサーフィンをしている時間は楽しいですよね。しかし、これは幸福感をもたらすホルモンであるβ-endorphinが常に分泌されている状況で、決して正常な状態ではないそうです。この状態が継続すれば、少量のβ-endorphinでは脳が満足しない麻痺状態となり、感情の起伏がほとんどなくなってしまう危険性もあります。

 そこで自分から提案です。手間をかけてでもやりたいこと、知りたいことを見つけてはいかがでしょうか(能なんていかがでしょう)。何かを成し遂げるための代償というものは、往々にして重要な役割を担っています。他人に気になる映画のネタバレをお見舞いされたときは幸福ではないですよね。先述のβ-endorphin過剰を解消するにも、幸福を感じる対象を手間のかかるものと脳に訓練させる必要があるようです。自分も長い移動時間と交通費を捧げて能のお稽古をしています。それが全てではないですが、この煩わしい移動が活動を豊かにしているのかもしれませんね。

 以上で岡本蒼の記事は終わりです。長くてお堅い文章となりましたが、ここまで読んでくださったこと嬉しく思います。

 続いては次の記事を担当するてっちゃんこと山下哲平への質問です。

Q1.能を始めたきっかけは?

Q2.能の思い出

Q3.大学で成長したこと


 てっちゃんとはお互い口数少なく、可愛がられキャラで親近感を覚えていたのですが、話せば案外親しみやすいし、彼女はいるしで惨敗です。許さねえ。

というわけで次の記事もよろしくお願いいたします。