ステップ

今日はいつもより丁寧に書きたいと思います。いい本に出会えた時は、その感想は丁寧に書きたいんです。


重松清さんの『ステップ』という作品を読み終えました。残りのページが少なくなっていくのを、閉じる度に寂しく思える本はいい本だと思っています。

早くに妻を亡くした「僕」がシングルファーザーとして一人娘の「美紀」を育てていく様子を描いた作品です。寂しさと寄り添いながらありふれた日常を力強く生きていく親子二人の10年間の物語です。親でも間違えることがあるし、悩むこともあることが優しく描かれていました。

男手ひとりで娘を育ててきた「僕」を本当の息子のように支えてくれたのは妻の両親でした。義理の父親の車椅子を押しながら歩く場面。全身に癌が転移した義父の背中を押しながら、「僕」が亡くなった妻と重ねて思いを巡らすシーンにこんな言葉があります。

ーー亡くなるほうにも、あとにのこされるほうにも、いくつもの悔いがある。だとすれば、生きるというのは悔いをつくりつづけることなのだろうか。

余命は残り3ヶ月。義父は「美紀」に自分の弱っていく姿を見せたくないと言います。カッコいいおじいちゃんでいたいんだよ、と笑う義父の言葉は半分本音で、残りの半分は、早くに母を亡くした孫娘にこれ以上つらい思いをさせたくないという想いからでした。そんな父の言葉を受けて「僕」は心の中でこう思うのです。

ーー悲しみや寂しさを早く消し去りたいと思っていたのは、いつ頃だっただろう。いまは違う。悲しみや寂しさは、消したり乗り越えたりするものではなく、付き合っていくものなのだと、僕たちが生きてきた日々が、教えてくれた。


この物語を読んで、乗り越えるものだと思っていた寂しさとこれから付き合っていこうと考えるようになりました。乗り越えるというのは、寂しい気持ちを片付けて、心の奥の方に仕舞い込むことだと思います。

生きていくことは言葉にあるように、「悔いや寂しさをつくりつづけること」なのかもしれません。でもその「寂しさ」を忘れずにずっと付き合って生きていくことで、優しくなれるのかなと思います。

すごくオススメです。読んでみてね!

荒川 ゆかり
2020.07.26

夏休みに読みます!

タロウ
2020.07.26

久しぶりのすごいオススメ本だから読んでみて!