大学スポーツコンソーシアム KANSAIの創設趣意

1. 創設の背景

2017 年に発表された「第 2 期スポーツ基本計画」 には、今後、国が取り組む施策の一つとして、「大学スポーツの振興」が掲げられている。具体的施策として、各大学でスポーツを管理・統括する部局や人材の設置や配置の支援、 学生アスリートのキャリア形成・修学支援、地域貢献活動の支援や大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版 NCAA)の創設支援などが明記されている。いわば、大学スポーツは、競技力向上や健全な心身を保つための素養教育としてだけでなく、人材育成、経済活性化、地域貢献といった公共的役割を、社会と連携しながら担うことが政策的に期待され、大学や競技団体もその対応を迫られているといえる。

大学スポーツと呼ばれる範疇には、教育課程としての体育・スポーツ実習だけでなく、課外活動にまで及ぶ多種多様な学生の活動が含まれ、そこには、学内関係者だけでなく、様々なステークホルダーが関係している。「する・みる・ ささえる・つくる」など、学生は、スポーツとの多面的なかかわりを通じて、様々なことを経験し、知識やスキル、価値を享受する。課外活動としての大学スポーツは、これまで高い競技力を有するアスリートやそのアスリートを支える優秀な指導者を数多く輩出してきた。近年では、大学が保有する人的・物的・知的資源をコミュニティの活性化に活かそうとする期 待も高まっている。基本的に課外となるスポーツ活動は、学生や競技団体の自主性や主体性に委ねられているが、地 区レベルの大会やリーグ戦に際して、 試合会場確保の困難さから授業開講日である平日に試合が開催され続けるような事態が発生している。また大会やリーグ戦の開催場所や期間によっては、学生が相当な経済的負担を負っている ケースも少なくない。さらには、スポーツ推薦制度をはじめとした大学間の競技成績優秀者の争奪戦の熾烈化、勝利至上主義への偏重がもたらす体罰問題、競技中心の学生生活による学業成績の低下といった問題もかねてから指摘されている。課外活動にともなう学生生活に及ぼす様々な負担軽減、学業との両立やキャリア形成なども見据え、高等 教育機関として育成すべき「人財」輩出に観点から大学スポーツの在り方を改めて問うべき時期を迎えているといえる。

大学スポーツは、様々な課題を抱えながらも、我が国のスポーツ振興のみならず、将来を担う若者の人格陶冶や人材育成において、重要な役割を担ってきたことは疑いの余地もない。少子化にともなう入学者確保のための大学間競 争が熾烈化し、大学のブランディングや魅力づくりについては、確かに各大学の自助努力も必要であろう。しかしながら、大会やリーグ戦の開催日程や各地区の選抜選手による強化合宿の日程調整など、単独の大学で競技団体と交渉 し、問題解決を図ることは容易ではない。また国公立だけでなく、私立大学においても未来を担う「人財」を育成する高等教育機関としての公共的な役割を鑑み、互いに競い、高め合うところは高め合いながらも、いびつな競争による「一人勝ち」の構図を創るのではなく、緩やかでありながらも高等教育機関の使命を果たすべく、強い信念に基づいたネットワ ーク組織の形成が求められると思われる。

このようなことを勘案し、各大学がこれまで高等教育機関として積み重ね、蓄積してきた大学スポーツにかかわる英知を、健全なる大学スポーツの機能化のための「共通の財産」として分かちあいながら、様々な関係者とも連携して、さ らなる大学スポーツの発展をめざすための「仕組み」を構築する必要がある。これまで関西地区の複数大学が、大学スポーツ振興にかかわる会議や検討会を重ねてきたが、1 つでも多くの大学が密接な連携を図り、大学間の英知を結集させて上記のような課題を解決し、ひいては関西地区の活性化に資することを目指すことが望ましいと思われる。このような意図に基づく大学横断型の連合体組織・機構として、「大学スポーツコンソーシアム KANSAI(以下、コンソーシアムと記す)」を創設するに至った。

コンソーシアムが、図るべき当面の個別目標は、少なくとも 4 つあると考えられる。

  1. 大学スポーツにかかわる多様なステークホルダー間の情報共有・連携・協力を促進する「プラットフォーム」の形成
  2. 社会を牽引し、未来を託せる「人財」の育成
  3. 大学スポーツの振興と発展に資する「スポーツ・ガバナンス」の構築
  4.  大学スポーツの「社会的・事業的価値」の向上 

2. 事業

コンソーシアム創設の目的と 4 つの目標を成し遂げるために、各々の大学がこれまで蓄積してきた英知を共有しながら、以下に示すような横断的に実施できるような事業が展開されるべきだと思われる。 

①プラットフォームの形成に関する事業 

  • 多様な個人・団体・組織との連携・参画の促進とステークホルダーマネジメント
  • プラットフォームの法人化(一般社団法人非営利型)

 ②「人財」の育成に関する事業

  • ライフスキルプログラムの開発・共有・実施
  • キャリア教育プログラムの開発・共有・実施
  • 学生アスリートの学業と課外活動の両立支援システムの共有化
  • 学生アスリートの表彰
  • 指導者の情報共有と研修
  • 指導者の英知を結集したコーチングスタンダードの確立
  • 指導者におけるダイバーシティの促進
  • 指導者の表彰
  • スポーツアドミニストレーターの育成・配置に関する支援

③スポーツガバナンスの構築に関する事業 

  • 大学スポーツにおける安心で安全な活動環境の創造
  • スポーツ局またはそれに準ずる部局・組織の設置に関する支援
  • 課外活動団体の財務・資産管理に関する支援
  • 大学スポーツ憲章の作成

 ④大学スポーツの振興・啓発に関する事業

  • 大学スポーツにおける人とスポーツの多面的なかかわり(する・みる・ささえる・つくる)の促進と循環
  • 学内の資源を活用した大学間における「対校戦」の実施や多様なスポーツ参与機会の創出・応援文化の醸成
  • 大学への愛着とつながりを生む大学スポーツのブランディングにかかわる支援
  • メールマガジンや映像配信など、SNS を用いた情報発信による参画者の拡大
  • 大学スポーツ振興によるコミュニティ・ディベロップメント

 ⑤その他、コンソーシアムの目的に資する事業

3. 会員

コンソーシアムは、上記の目的に賛同する法人・団体及び個人によって構成する。会員は、コンソーシアムに参画す ることにより、大学スポーツ振興に資する情報の共有、上記の事業へ参画することができる。

①正会員:10 万円

体育会・課外活動団体など、大学スポーツ振興関連部局・窓口があり、担当スタッフが配置されている大学

②賛助会員:法人 1 口 10 万円

コンソーシアムの趣旨に賛同し、掲げられた目的・事業の遂行に寄与する団体 

③パートナー会員:無料

コンソーシアムの趣旨に賛同し、コンソーシアムの目的達成を促進するとともに、主体的に協力する団体 

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