【11月6日(土)・7日(日) 第6期経済単元(合宿)開催報告】

新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑みて延期していた経済単元の合宿を、11月の頭に津屋崎にて開催しました。
 
11月6日(土)、昼さがり。
 
博多駅から公共交通機関を乗り継いで1時間ほど。久留米からは2時間ほど。福岡女子大学に通う私の生活圏内からはちょっとだけ外れた、福岡県福津市にある海辺の街、津屋崎。
 
この津屋崎の「海のほとり玉乃井」という旧旅館でLAPの経済単元を行いました。
お年寄りが海を眺めながらお茶をすすっていそうな雰囲気の漂う玉乃井ですが、なんと築100年を超えており経済的な価値は全くないそう。
 
そんな衝撃的なお話でスタートした経済単元の講師は、津屋崎で「まちおこし」をされているLOCAL&DESIGN株式会社 代表取締役の山口覚さん。
もともとは大手総合建設会社でお仕事をされていた山口さんですが、建設業に携わる中で「まちをつくる」とは?「人の幸せ」とは?といった疑問が生まれ、今は津屋崎の地で奮闘していらっしゃいます。
 
そんな資本主義ど真ん中の経済活動と、小さくとも確かな手触りのある営みを、身をもって体験されている山口さんから話題提供をしていただく前に、まずは事前に出題していただいていた課題に対する仮説を受講生から発表させていただきました。
 
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Q1:対話(ダイアローグ)とはどういう会話の方法なのか?討論(ディベート)との差異を含めて調べ、3分で説明できる程度に簡単に資料にまとめて下さい。  
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対話は、
・相手の意見を否定しない
・意見が変化する
・ともに意見を出し合う
・勝ち負けはなく、優劣を評価できない
 
討論は、
・相手の意見打ち負かしてこそ
・意見の変化は認められない
・敵対してどちらか一方に決めようとする
・勝ち負けがあり、点数化されることもある
 
等の意見が挙がりました。
 
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Q2:課題図書を読んで10年後に社会で起きる可能性があることをグループでダイアローグして下さい。そして起こり得ることを予見してみて下さい。*ただし、新聞、テレビ、ネットでは一切言われていないことに限ります。
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Q3:Q2の内容について、2人〜3人でダイアローグしている様子を想像し「台本形式(*1)」で記述して下さい。そして当日10分以内で発表して下さい。(発表は朗読形式、紙芝居形式、あるいは演劇形式などを期待します。しかしその限りではありません)
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・「暗黙のルールや」「先輩後輩のあいさつ」等日常的な伝統や文化が失われる
・お金の価値が変わってくる
・国家という単位が無くなる
・AIによる合う仕事の診断機能ができる
・感情が数値化される
 
等の意見がでました。
 
これまでにない演劇スタイルの発表で、教科書を音読しているみたいにカチコチな人もいれば、つらつらと話している人もいて、聞き手側はそれも含めて楽しむことができました。
 
山口さんからは、各チームの発表を受けて、
 
・討論は持っている知識で戦うので不完全な知識で物事を判断していることに気づいていない。
・対話は自分の10の知識と他者の10の知識を合わせることで意見が変容する可能性を持つかもしれない。
・意見を批判することと人格を否定することは違う
・対話は一人では考えつかない全く新しいアイデアにたどり着くかもしれない。
 
といったお話をしていただきました。
 
夕方には皆で外に出て、海辺で夕陽が沈む様子を眺めました。個人的には、これもまた経済的に数値化できないのがおもしろいなあ、と思いました。
 
合宿1日目の講義はここまでで、宿に移動し、夜はBBQを行いました。将来の話、恋愛の話、趣味の話等、夜中まで話した人たちもいたようです。
 
 
11月7日(日)、2日目朝。
海辺で読書をしていたメンバーがいました。贅沢な朝で良いですね。
 
朝食を取った後、浜辺に椅子を並べて、メンバー全員で10分ほど目をつぶる。
なかなかない経験をさせていただきました。
 
その後、玉乃井に会場を移し、山口さんの話題提供と、いくつかのグループに分かれての対話を複数回行ったのですが、メンバーによって全く意見が違い、思わずうなってしまうような場面が何回もありました。
 
山口さんからは、
 
・社会主義や資本主義が世界で存在するように一つの考え方で経済回す必要はない。
・考え方が違う複数のものは「どちらが正しい」ではなく、同時に存在しうる。
・今の社会に強い影響を与える経済を支えるための教育が現代では行われている。
・お金がお金を生むし、経済が経済を回すことを目的としている。
・人1人が1日働くという行為は全く同じなはずなのに、
 なぜ対価が500円だったり10000円だったりするのだろうか。
・我々がお金を払って買っているのは、「後ろで働いた人の手間暇に対して」か
 「物や形、あるいはブランド名」か。
・未来を語る、否定しない、断定しない、という未来会議室の話。
・対話が必要なはずの国会、議会では何が行われているか。
・合理的になると何を手に入れ、何を失うか。
・利益の最大化と「安くて良いもの」を同時に実現するために何が犠牲になっているのか。
・お金は投票権なのではないか。
 
等のお話をいただきました。
 
これでも私の印象に残っている部分をかいつまんでいるだけで、本当にたくさんの観点をいただきました。
 
 
今回の経済単元は、津屋崎という特別な場の力も、対面という話しやすい環境もあり、それぞれの受講生に深い学びをもたらしてくれたと思います。
 
「経済」とひとことに言っても、環境が違えば関わる人も違う。
私自身、対話を通して、じぶんのこと、まわりのこと、地域のこと、将来のこと、世界のこと、
いろいろなことにもっと深く、丁寧に、目を向けたいと思った2日間でした。
 
忙しく、目が回ってしまうような充実した毎日を過ごしている方も多いとは思いますが、立ち止まり、自分と周りに目を向けながら日々を過ごしていけたらいいなとも思います。
 
 
<文責:久保>

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