ファストファッションの現状とエシカルファッション

はじめに

気候変動や地球温暖化の原因となる環境問題。みなさんが普段、バーゲンセールなどで大量に購入する洋服が環境に大きな負荷をかけていることをご存知ですか。アパレル産業は、世界で一番CO2を排出する「石油産業」に次いで、世界第2位のCO2排出量と言われています。さらに、深刻な水不足が世界で議論される中、Tシャツ1枚を作るために必要な水の量は2700ℓとされています。これらの事例のように、環境に大きな負荷をかけてきたアパレル産業が、近年、変化を遂げています。そこで、この記事では、アパレル産業の背景から近年の動向について触れていきたいと思います。 

ファストファッションブランドの変化

最新のトレンドアイテムが低価格で手に入る「ファストファッション」が、2008年頃から多くの若い世代の支持を集めるようになりました。「ファストファッション」を呼ばれるブランドとして、H&M、ZARAやUNIQLOなどが挙げられます。

これらのブランドを開発途上国に生産拠点に置くことで、安価な労働力を劣悪な労働環境の中、大量に服を生産させているという現状があります。したがって、「ファストファッション」は、環境問題だけでなく、途上国の弱い立場に置かれる労働者たちや児童労働などの人権の課題も挙げられます。

しかし、近年「非人道的」であったファストファッション企業に変化が見られるようになりました。近年、日本では2017年にOLD NAVYが撤退して以来、2019年10月にForever21、同年12月にAmerican Eagleが全店舗閉店となり、ファストファッション産業の生き残りが難しい状況にあります。ファストファッションが社会的に問題視されるようになったのは、2013年4月24日にバングラデシュの首都ダッカで8階建ての商業ビル「ラナプラザ」の倒壊事故が発生してからです。

この事故で、4000名の従業員のうち、1,130名以上の死者と2,500名以上の負傷者を出しました。「ラナプラザ」で起こった倒壊事故は、連日世界中のニュースで取り合挙げられ、ファストファッションに潜む社会的問題に目が向けられるようになりました。この事件を機に、多くのファッションブランドがエシカルファッションへとシフトしていっています。

エシカルファッションの浸透

では、「エシカルファッション」とは、具体的にどのようなブランドを指すのでしょうか。エシカルファッションあるいは、サスティナブルファッションと呼ばれるブランドは、地球への環境や生産に携わる労働者達の労働環境に配慮したファッションのことです。

「エシカル」ファッションとされる、代表的なブランドに「パタゴニア」「グッチ(Gucci)」などが挙げられます。確かに、これらのブランドは長く使用するために素材にこだわった商品である為、高価で手が届きにくいブランドが多いことが現状です。

しかし、環境に配慮したエシカルファッションは、近年、多くの消費者の注目を集めています。例えば、「パタゴニア」では、洋服の繊維など素材は最高品質のものを使用し、その一着が長く着続けられるような製品の作成に努めています。

衣服ができ上がるまでに必要な水の使用量やエネルギーの使用量を削減できるような取り組みを徹底的して行っています。また、上記に挙げた「グッチ(Gucci)」も社会貢献に積極的であると言われています。

グッチが行う具体的な活動として、動物の毛皮を使用しない「Fur Free Alliance」に加入し、リアル・ファーの廃絶に取り組んでいます。リアルファーを完全に廃止するとしたラグジュアリーブランドは、グッチの他にもアルマーニなどが挙げられます。現在では、800以上のブランドがこの「Fur Free Alliance」加入しています。

また、「エシカルファッション」を促進する組織は、企業だけではありません。例えば、NPO・NGOまたは学生団体も活動を行っています。筆者である私自身も、大学で服の大量生産・大量消費による社会課題の情報発信をボランティア活動として行っています。

自身の団体で行ったイベントは、大学内で集めた古着をリメイクし、新しく生まれ変わった服でファッションショーを開催しました。このファッションショーでは、観客の方に服の大切さであったり、大量廃棄による環境への負荷を発信することができたと思います。

これらの活動を行う団体は、私たちの大学だけではありません。近年、大量生産・大量消費やエシカルファッションついて発信する学生のボランティア団体は広がってきています。

なぜなら、大学生は、決まったユニフォームが無い為、衣服を購入する機会が多く、安く手に入るファストファッションを多く消費する傾向にあると思うからです。

実際に、友人から、トレンドが去ったら着られる服でも捨て、友人と服が被ったら全く着なくなってしまうという話を聞いたこともあります。服が安く手に入ることで、すぐに捨てて、すぐに新たな服を購入するといった悪循環を招いているのではないでしょうか。

私が行う学生団体に加え、その他団体でも服の生産の裏側についての情報発信を行っています。先進国の人々が、大量に消費することで、途上国の弱い立場に置かれる人々の利益は搾取されています。皆さんも、その服を購入する際に、本当に必要か一度考えてみてください。

大量生産・大量消費・大量廃棄の現在の実態

世界中のファストファッション企業が「エシカル」ファッションへと変化している一方で、日本人の年間の服の消費は深刻な現状にあります。2018年のデータから、国内の消費される衣服は13億点であり、売れ残りとなる在庫は年間14億点にも上ります。このことから、日本のアパレル産業では、消費量よりも売れ残りの個数の方が多い現状があります。

では、なぜアパレル企業は服の生産量減らさないのでしょうか。その理由は、大量に同じ商品を生産することで企業のコストを抑えられるからです。確かに上記に挙げた、「エシカル」で天然のコットンを利用した衣服を販売することで人権問題や環境問題の解決に貢献できます。

しかし、大量に服を生産し、大量に在庫を抱えて廃棄するといった、この構造を変えなければ、アパレル産業における環境課題の解決には繋がりません。また、低価格で衣服を購入することで衣服に対する愛着が薄れ、2、3回使用した後、廃棄してしまうという人も少なくないのではないでしょうか。

私たち消費者ができること

これらの大量生産・大量消費の構造を作っている理由は、企業だけではありません。私たち消費者も含まれています。地球の限られた資源を次世代の人々へ繋いでいく為に、私たちにもできる取り組みはたくさんあります。次に洋服を買う際、ぜひ以下のことを気にして購入してみてください!

1.この服を30回以上着るか。(10年後も着られる服か。)

2.来年以降も着続けられるか(トレンドだけを追っていないか)。

3.その服に愛着を持てるか。

4.似たようなデザインや形の服を持っていないだろうか。

5.ヴィンテージや古着などをチェックする。

さいごに

近年、ファストファッション企業は、「エシカル」で「サスティナブル」な企業へと変化していっています。これらの企業に変化が見られたのは、国連が主体となって行う「SGDs」の促進や、バングラデシュで実際に起きた悲惨な事故による社会的な批判が影響していると思います。

また、ファストファッションの変化は、これらの社会的な影響に加えて、世界で活躍する活動家達の努力もあります。例えば、イギリスを代表する女優のエマ・ワトソンさんは、「エシカル」ファッションの浸透に大きく貢献しています。

彼女が実際に行った活動として、オーガニックコットンやチョコレートなどのフェアトレードを行う「ピープルツリー」とコラボしたファッションブランドの立ち上げを行っています。

彼女は実際に、バングラデシュを訪問し、自身のSNSを通した現状の発信を行っています。また、有名ファッション雑誌「VOGUE」を通し、フェアトレードや「エシカル」ファッションの拡散を行うことで若い世代にこれらの現状についてを知る機会を作ることに貢献しています。

以上に挙げた事例から、世界で「エシカル」ブームが巻き起こっています!限られた資源を次世代に繋いでいく為に、私たち一人一人、大量消費について考えなければなりません。

海外では、「ヴィンテージ」や「used」といった古着を購入する人も多いですが、日本ではそれらを好まない人が多いことが現状です。もし、着られなくなった服や着なくなった服があれば、そのまま捨てるのではなく、リサイクルショップやH&Mなどが行う「古着回収BOX」を活用してみてください。これを行うだけでも、個人でできる環境への配慮に繋がるのではないでしょうか。