『NYへの挑戦』

こんにちは。三重高校ダンス部(SERIOUS FLAVOR)3年の田中晴です。

 この記事では、昨年から今年にかけて、僕たちダンス部が挑んだ大きな夢、『NYへの挑戦』について書きたいと思います。

 「NYに挑戦してみない?」顧問の神田橋先生の言葉に僕は耳を疑いました。「NY?」「どこのNYへの挑戦?」一斉に顔を見合わせる部の仲間たち。しかし、それは聞き間違いではありませんでした。そう!あの『NYへの挑戦』です。先生の目は本気でした。

 

きっかけは全クラスに配布された三重県が主催する『三重の子ども「夢☆実☆現」プロジェクト』への応募でした。「何かに挑戦してみたい!」と思っていた僕たちに、先生が大学生の時に挑戦したNY・アポロシアターの話をしてくれました。僕の心に火がつきました。仲間の心にも火がつきました。僕たちが本気になるまでに時間はかかりませんでした。自分たちが目指すべき「何か」が明確になりました。昨年、春の終わりの出来事でした。

 三重高校ダンス部は全国規模の大会で何度か入賞できるようになりました。先生や先輩の指導はもちろんですが、「心からダンスを楽しむ!」というモットーが謎の勢いを生み出していました。昨年秋に行われた環境省主催の全国大会では、部から複数のチームが予選を突破し、ついに全国優勝、そして準優勝を獲得することもできました。「自分たちのパフォーマンスは、エンターテイメントの本場アメリカで、どこまで通用するのだろう?試してみたい!」これまで全国で活躍することを目標にしていた部にとって『NYへの挑戦』は、大きなステップアップになると誰もがそう思っていました。

「NYで踊りたい!」という大きな夢に向かって、何が必要なのかをみんなで何度も話し合いました。一番大きかったのは費用の問題です。部の幹部がプレゼンテーションを頑張ってくれたおかげで、県のプロジェクトには見事採用されることができました。しかし、そこで得られる資金は10万円。30名を超える部員の渡航費用や現地で必要な諸費用を合わせると1200万円近くの資金を用意する必要がありました。僕たち高校生にとっては気の遠くなるような金額です。いろいろな人に相談し、アドバイスをもらい、僕たちはクラウドファンディングで資金を集めることにしました。初めてのことで戸惑うことも多かったですが、YouTubeでの動画配信や地域・企業のイベント出演時に、クラウドファンディングの宣伝をしました。地道な広報活動の甲斐もあり、支援金は少しずつ増えていきました。部員だけでなく、保護者の方や、これまでイベントでお世話になった地域・企業の方がたくさん協力をしてくれました。僕自身も、地域の企業の社長が集まる会議に先生と直接出向き、NYへの思いをアピールしました。ガチガチに緊張しながらした人生初の名刺交換はすごく良い経験になりました。プレゼンの時間を与えられて、先生とダンスを踊ってアピールしたことは良い思い出です。人のつながりがより多くのつながりを生み、前澤社長のお年玉企画100万円プレゼントにも選ばれるという奇跡にも恵まれ、1000万円近くの支援金を集めることができました。「三重の田舎の普通の高校生たち」の挑戦が、こんなにもたくさんの人に支持されるとは思ってもいなかったです。どんな時も「踊ることをとことん楽しむ!」「観る人みんなを楽しませる!」という、部として大切にしてきた姿勢が認められた気がして本当にうれしかったです。

「たくさんの支援の気持ちに応えるためにも、『NYへの挑戦』を絶対に成功させよう!」、部の団結力はより一層高まっていきました。しかし、部の全員がNYに行けるかというとそうではありません。90人を超える部員の中、挑戦できるメンバーは約30人。いつもの大会と同じように、メンバーをオーディションで決めることになりました。これまで一致団結して『NYへの挑戦』に向かって努力してきた仲間はみなライバルになりました。互いの思いがわかっているからこそ、厳しい切磋琢磨が始まりました。通常の部活が終わってからさらに自主練に励む人、塾や習いごとが終わり、家族が寝静まった家で深夜一人練習に励む人、それぞれが本気でNYを目指しました。ライバルであるのと同時に、これまで苦しさや楽しさを共有してきた仲間だからこそ、共に合格したい気持ちは強くなります。互いのダンスの完成度が気になりながらも、より良いパフォーマンスになるように動画を撮り合ってアドバイスし合えるところが三重高ダンス部の強さを支えてきたのだと改めて感じることができました。オーディションまでの数週間は精神的にも肉体的にも本当にきつく大変でしたが、仲間や先生、支えてくれる家族のおかげでそれぞれが一回りも二回りも大きく成長できるきっかけになりました。オーディションの結果、僕は合格することができましたが、素直に喜ぶことはできませんでした。共に練習をした仲間の思いや、部の代表として挑戦することへの責任を強く感じ、身が引き締まる思いでいっぱいでした。

オーディションの様子 三重高校ダンス部シリフレ Twitterより

NYへの準備は着々と進み、出発を約二週間後に控えた2月末、悲劇は突然訪れました。新型コロナウイルスの世界的な流行です。僕たちが準備に準備を重ねたNYへの挑戦は、目に見えない敵によって延期せざるを得なくなりました。進路を控えた高校3年生にとって、延期はかなりつらい決定でした。気持ちを切り替えるにはしばらく時間が必要でした。学校が休校になり、部活も長期間の活動自粛となりました。悲しかったですが、その分、一人一人自分とゆっくり向き合う時間ができました。引退の時期は思い描いていたイメージと変わってしまったけれど、下を向いていても何も変わらない。僕は自宅でなるべく規則正しい生活をすることを心がけ、時間を決めてダンスの自主練習に取り組むことにしました。部の仲間も動き出しました。オンラインで自主練習やミーティングを提案する仲間もいました。携帯の画面越しに見たり聞いたりする仲間の顔や声に励まされ、長く辛い自粛期間を乗り越えることができました。自粛期間中に作成、配信した「在宅ダンス動画」の再生回数は10万回に迫ろうとしています。改めて三重高ダンス部のパフォーマンスを楽しみにしてくれている人の存在に気がつくことができました。寄せられた温かいコメントの数々に、胸が熱くなりました。


 三重高校ダンス部のNYへの挑戦はまだ終わっていません。もちろん僕たち3年生の挑戦も終わっていません。ニュースで何かと「不遇」と言われている僕たち3年生ですが、受験も、進路も、大切な学校生活や仲間との時間も、今からの自分たちの努力次第で全て充実したものにできるはずです。「一生忘れられないような出来事に出会う」という僕たちの貴重な高校生活には、まだ続きがあります。ダンス部の大切な仲間と共に、全てをやり遂げて、必ず笑顔で卒業を迎えます。

 僕たち三重高校ダンス部SERIOUS FLAVORの挑戦はまだまだ続きます。

応援よろしくお願いします。