Furniture Design 制作
はじめに
この記事で紹介させていただくのは専攻課題の作品です
作業工程が多く、非常に長文となっています。お時間がある際に読まれることを推奨します
そして、一人では確実に完成までたどり着けませんでした
それぞれの工程ごとにサポート・アドバイスを行ってくれた前野先生、元橋先生、熊本先生、全工程のサポートを行ってくれた山岡先生に感謝です
課題内容について
家具デザイン制作コースとして「出会い」という大きなテーマの下、各個人が1つづつ家具を提案・制作しました
私はくつろぎとの出会いを軸に椅子をデザインしました
制作の流れは
- スケールモデル制作
- モックアップ制作
- 実物の制作
の順番です
スケールモデル制作
下の写真は1/10サイズのスケールモデルを制作したときの形です

背もたれが3次曲面を持っており、沈み込む座面とY字の貫がそれぞれ背もたれに接している構造になっています
ちなみに最初に模型を作ったとき、Y字の貫はつけていませんでした。見た目の美しさを追い求めているだけだったので実寸で作るときに座ることが難しいとの指摘を受けて修正しました
-学んだこと-
自分が綺麗だと思うデザインでも設計や構造が破綻していたら機能性を持たない(座ることが出来ない)ただのガラクタになってしまう
モックアップ制作
先ほどのスケールモデルを元に実寸サイズの図面を引きました
完成した図面に沿ってスタイロフォーム(下写真のオレンジの素材)でモックアップを制作しました

厚み50mmのスタイロフォームを16段繋げ合わせて3次曲面を削り出します

脚や貫も形や実際に作るときにどう組み合わせていくかも相談しながら原寸サイズで検証していきます

横から見た形です。座面と貫がそれぞれ角度を持って背もたれに接する形を目指すことに決定しました

-学んだこと-
モックアップを作る時間があるなら可能な限り検証しておく。スピード感は大事にしつつ、実物の工程をイメージをしながら丁寧にチェックする
実物の制作
購入していた素材を用いて実物の制作を行いました
- 背もたれ
- 脚
- 貫
- 座面
のパーツごとに平行して作業を進めていきました
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背もたれ
モックアップで制作した背もたれをフレームにしてFRPという樹脂を塗り重ねて造形しました

スタイロフォームが溶けないように塗り重ねる前にラップを巻き付けました

工房に来ては、ひたすら塗り重ねる作業でした。また、樹脂の合間にガラス繊維を挟んで強度を高めました(下の写真の白い布のような素材がガラス繊維です)

数十回塗り重ねてオレンジ色が完全に消えています
樹脂が硬化するときに縮むので裏側まで刷毛で慎重に塗り重ねました

ある程度厚みを作ってから、凹凸をなくして3次曲面を作る作業に移行しました。上の写真はもたれる面になる部分のスタイロフォームを剥がしているところです



どうしても綺麗な形が出せない部分は※パテを使って曲線を作りました
(※下写真の黄色い部分のことで、凹凸を埋めるための材料です)

-学んだこと-
ラップは何重にも巻いた方が良い(1重だとFRPが浸透してスタイロフォームが溶ける)
原寸サイズだと少し妥協したことによるしわ寄せがすぐにやってくる
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脚・貫・座面
FRPを硬化させるのに30分程度時間があるので、そのスキマ時間を利用して他のパーツの制作に取り組みました
脚と貫にはタモという木材を用いており、座面は合板を5枚ほど重ねて厚みを出してから曲げました
それぞれのパーツ作りはモックアップの時点でイメージできていたのですぐに完成しました


上のフレームを使って曲げた合板を下の写真のように背もたれに合わせて削っていきました

-学んだこと-
脚など、対称のパーツを全く同じ形に仕上げることの難しさ
慣れない作業は想定しているより時間を要する
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パーツの組み合わせ
それぞれ仕上がったパーツを組立てていく作業です
困難すぎてずっとサポートしてもらいながら制作していました


この工程は
- 脚が正三角形から正円に向けて変化していく部分の傾き
- 貫自体の傾き
それぞれを考慮して丁寧に調整しました




-学んだこと-
とにかく全てが難しかった
傾きがあるだけで格段に難易度が上がる
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仕上げ
それぞれのパーツを分解して仕上げ作業を行いました



裏面は残った生地をまつり縫いで縫合しています


下の4つの写真は実際に展示したボードです




-学んだこと-
家具作りは最高に楽しい
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最後に
長々と書きましたが10月から2月いっぱいまでの5ヶ月間ひたすらこの作品に時間を費やしました(ざっくり数えて400時間ほどです)
家や別の授業でのボード制作・3D制作も合わせるとさらに100時間は使ってきました
1つの作品にここまで時間とお金をかけて取り組めて完成までたどり着けたこと自体誇りに思いますし、そういった滅多にない機会に巡り会えて本当にラッキーでした