「みんなでシェアハウスしたいね!」
「自分の家持って、好きなように改修しながら暮らしていきたいなぁ」
建築に興味があるのなら、一度は思ったことがあるのではないでしょうか?
この拠点づくりは、その「やってみたいな」を実現したプロジェクトです。
まずは簡単にプロジェクトの概要を。
物件は既存不適格の二階建て住宅。江戸川区の木造密集地にあり、家賃7.5万で賃貸中。
賃貸物件だけど、手を加えても大丈夫(床張り替えたり壁塗り替えたりしてます)。
住まいかたが少し特殊で、「実家で暮らしながらいきたい時に行く。いくら泊まってもおっけい。」という感じ。15人のメンバーが代わる代わる暮らす(原則)。
学生が集まる場を作ることで、行動のきっかけになったり意見交換することができる"学生が集まる拠点"としての価値。
好きにいじっていい建物に暮らすことで、よりよくする仮定を実行する"あったらいいなをやってみる"価値。
その両方を追い求めるプロジェクトです。
〈目次〉
・プロジェクトのきっかけ。
・DIY可能 戸建て賃貸を探す。
・オーナーさんと賃料交渉。
・第一段階「とにかく住めるようにする」
・第二段階「暮らしを豊かにする」
・みんなで集まって住んでみて。
DaBoのこれまでのプロジェクトは全て、お施主さんや企業からの依頼で発足していました。しかし、いくつもプロジェクトを進めていくうちに、もっと自発的なプロジェクトがあってもいいんじゃないかと思うようになりました。
これまでインプットした設計施工の知識を自由に表現する場所が欲しくなったんです。
そうした中、身につけた技術を元に自分たちの拠点を作ろう。という考えに至るのは自然なことでした。
こうして2020年4月、拠点づくりのプロジェクトが動き出します。
まずは物件探しから始まりました。
必要な条件は
いずれも、学生が集まる拠点 あったらいいなをやってみる 役割を果たすための条件です。
そうして見つかったのが今暮らしている物件。
前面道路の道幅は1mもない、典型的な木造密集地の既存不適格建築でした。
床は歪んでいて、踏むとたわんでしまう。トイレは和式便器。窓は隙間だらけ...。と問題もたくさんありましたが、条件を満たしていたため「どうせ直せばいい」と即決しました。
物件は決まったのですが、やはり学生お金がない...
自分たちのためのプロジェクトだから、材料費も自分たちで捻出しなければなりません。みんなから集めるお金をなるべく施工費に回すべく、賃料の交渉を考えました。2020年7月のことです。
物件の不具合を修正した場合どの程度賃料を引き上げることができるのか?
賃料を安くした場合や施工補助費を上乗せした場合の損失は、賃料が上がった後何年運用すれば改修できるのか?
数字とデータを準備してオーナーさんとの交渉に挑みます。
交渉の結果は、床のたわみ解消とトイレの洋式化を条件とした施工補助費の15万上乗せ。となりました。
考えていた結果とはなりませんでしたが、それでも15万の補助は大きいです。
こうして、賃貸の条件は 家賃7.5万 改修補助費30万 で確定しました。
やっと物件を借りることができたのですが、もうひと頑張りする必要があります。
それは、とにかく住めるようにすること。
補助費の増額のため、床のたわみ解消とトイレの洋式化をする必要があり、施工が終わるまで住むことができません。
夏休みが終わるまでになんとか住み始めるため施工を進めていきます。
まずは床工事。一階リビングの床です。
畳と床板、根太まで外します。
明らかに湿気が溜まる雰囲気の床下だったので、湿気対策のため防湿シートを土に敷き、乾燥剤をまきました。
根太をしっかりいれて断熱材もはめ込んで合板を置いて下地が完成しました。
最後に問題となるのが仕上げをどうするのか?気になりますね。
この物件はDaBoの拠点となります。そのため一階のリビングは模型作成や家具作成などができるアトリエとしての利用が想定されます。
そこで、汚れても簡単に取り替えができること。アトリエ感のあるカジュアルな仕上げであることを考え、「ラワン合板仕上げ」とすることにしました!
ただ合板をそのまま敷き詰めただけだとあまりに雑な印象になってしまうため、910角の正方形に切り出して、木目の方向を千鳥にして納めています。
この仕上げは目の前のキッチンまで延長しています。一階全体を大きな部屋として捉えられるようになりますね。
同時並行でトイレも洋式化したり、全体を掃除したり、エアコンつけたりして、ついに9月の中旬に暮らし始めることができました。
次にやったのは間仕切りづくり。
メンバーの一人が一人暮らしの家を引き払い、この物件に定住することになりました。そこで、ちいさくてもプライベートスペースを作ることために、間仕切りを設計します。
けれども、ただ間仕切りを作るだけじゃつまらないと考え、EMARFアンバサダーの方と共同で設計施行することにしました。
(EMARFとは、図面を送ると合板をCNCルーターで加工して届けてくれるサービスのことで、アンバサダーとは、EMARFの可能性を広げるために選ばられた学生利用者のこと。)
狭い部屋に間仕切りを置くと圧迫感がものすごいので、とにかく圧迫感を抑える方法を模索しました。
そうして設計されたのがこの間仕切り。高さを抑えて二つに分割することで抜け感を作り、人の動線に合わせて平面計画することで部屋に馴染ませています。
ただの間仕切りではなく、本棚や机、椅子としての利用ができるようになっています。
実際に使ってみると、棚の高さや配置が絶妙で、棚としてもよく使われています。
本をとって座って読む。の流れがデザインされているのでみんなで持ち寄った本をちらっと読んでみる行為が誘発されました。
詳しい説明は、EMARFのnoteにもまとめられているので興味があれば見ていってください。(サイト)
暮らせるようになったとはいえ、ご飯は床に座って食べる。食器類は箱にまとめて入れてある。木材はリビングの端っこに置いてある...などとあくまでも「最低限」で、お世辞にも豊かな暮らしとは言えない状態でした。
しかし、その不便こそが想像力を沸き立てるトリガーとなるのです。
まずはご飯を食べ、作業するための机と椅子を作りました。
次に、キッチン用品を置く棚を出窓に設置。
汚れた壁も真っ白な珪藻土に塗り替え。
屋外に端材置き場を建築して端材を外に取り出しました。
あったらいいなをやってみる。という気持ちで、少しづつ暮らしを豊かにしてきました。ただあったらいいなと空想するだけではなく、実際に作ってみることでよりリアルに考える力が身につき、使用することでより良いアイディアを掴むことができます。
↑この頃のメンバーのTwitter投稿。ものづくりが日常化している様子です。(実際の投稿)
住めるようになってから約半年。ものづくりのある生活をみんなとしてきました。
設計課題でやっていることを建物にいた人に話して議論したり、自分と他の人の常識や暮らし方の違いを発見したり...
ものづくりの技術や感覚が身についたのはもちろんのこと、「集まって住む」形を体感できたことは大きな学びになっています。
プロジェクトはちょうど1周年の2021年7月で終了してしまいますが、まだあと5ヶ月あります。
暮らしを豊かにするための設計施工を継続することはもちろんのこと
いろんな人が集まる拠点にするため、イベントを増やしたり暮らしを発信したりしてよりオープンな場にして行こうくため行動を始めています。
今後も下のnoteマガジンに経過を発信していくので、ぜひご覧ください。