甲子園、戦後初の中止

第102回全国高校野球選手権大会が中止に決まった。選手権の中止は1918年(米騒動)、1941年(戦局深刻化)に続き3度目で、戦後では初であった。それに伴い、全国49地区の予選大会も中止となった。

この年の高校三年生は、春の選抜の中止から始まり、春季大会、その他地方での大会の中止、ついには夏の最後の大会までも奪われてしまった。全国の高校球児の共通の目標で大きな夢である「甲子園」。どの高校球児もその聖なる黒土を踏むために、2年半死に物狂いで努力を積み重ねてきたはずである。そんな夢の舞台が、2季連続で絶たれてしまうなんて誰が想像できただろうか。年が明けて、「さあ、これから」と言うときに一戦も公式戦が出来ないなんて誰が想像できただろうか。同情なんかでは到底済まされない。もし、今、高校三年生の野球部に会ったとしても、かける言葉は思い浮かばない。偉そうに慰めることなんて出来ない。

そんな中、素晴らしい記事を見つけた。西日本スポーツの高校野球担当、前田泰子さんの手がけた記事である。前田さんは、以前にも何度か当野球部東監督にご挨拶に、また九州六大学のリーグ戦にも記者としていらしていたこともあり、面識のある方である。 


最後の夏はなくなっても甲子園を目指してきた努力はなくなりません。この世代に勝者も敗者もありません。仲間と一緒にあと一球、あと一振りを求めて頑張ってきたことはこれから必ずあなたを助けてくれる。高校時代に誇りを持ってこれからの人生を切り開いてほしいと願っています。


たったの5行かも知れない。しかし、この5行には底知れぬ深い、胸に刺さってくるものを感じた。高校野球を担当しているからこその観点から記したこの文章から、努力する、汗水垂らして練習する、夢に向かって突き進む高校球児が鮮明に浮かび上がってくるようだった。この記事を読んで、モヤモヤした気持ちに一筋の光が差し、助けられた球児も少なからずいるだろうと感じた。そんな素晴らしい記事、文章だった。

 改めて、「高校野球」というのは、言葉には表せない何かを感じる。それは、世間が如実に表している。無念の引退を余儀なくされた球児たちに、多くの支援の手が伸びているのだ。プロを目指していた選手に対しては、アピールの場が実質無くなったことから、秋に高校生のプロ志望者を集めて合同トライアウトを行う動き。また、地方によっては県単位での引退を添える大会の実施。さらには、プロ野球選手会が、全国49地区での地方大会を実施に向かわせるために多額の支援金を寄付する意向を固めたとのこと。現段階では、無観客での開催が濃厚だが、そうなった場合、貴重な財源である「入場料収入」が見込めず、開催が出来ない地域も多いようだ。プロ野球選手会はそれを防ぐために「3年生に花道を」ということで支援するに至ったのだ。別の角度から言っても、中止が決まる前日までに、とある団体が率先して夏の大会開催に向けて署名活動を行った。この活動は賛否両論あったのだが、現に、そういった行動を起こさせるものが高校野球なのだろうなと思った。

形はどうであれ、私としても何かしらの「花道」というのは必要なのかなと思った。「ケジメ」というものをしっかりつけて、前を向いて突き進んでほしい。そして、大人になったとき、逆にこの困難を乗り越えて今があるんだと胸を張って言ってほしい、そう思っている。


引用記事:https://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/n/609917/

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