2nd Stage(1年後期) 専攻別PD実習課題① メジャーカッター

志望職種
プロダクトデザイナー

学科・専攻・コース
プロダクトデザイン学科・工業専攻

作品タイトル
Cutting Liner

作品画像
使用したスキル・実作業時間
構想・使用案考案(3時間)、フュージョン360(20時間)、製作(20時間)、アフターエフェクト(1時間)、特許関連資料作成(50時間)、特許関連相談(6時間)イラストレーター・フォトショップ(8時間)


課題の概要
「のりもの・ロボット・卓上用品・小型家電・キャラクタートイ」の中から一つを選び・製作して発表しよう!

作品の概要

メジャーの目盛りをローラーで上下から挟み、スライドさせることで、長距離直線を楽に切ることができるようなカッターを作りました。左右からメジャーの幅に合わせて固定できるようにすることで様々な幅の目盛りに対応できるようになっています。

作品製作時の思考過程
今回の課題では、サイズ的に可動モデルが作成可能な卓上用品のステーショナリー(文具)を作ろうと決め、どのようなものがいいか考えてみました。
どんなステーショナリーなら新しく、より便利な生活を提供できるのか考えた時に、村山先生(プロダクトデザイン学科の主任先生)がデザイナーフェスタ用のポスター切断に苦労していたのを思い出しました。
長い距離を直線状に切りたい場合、金尺とカッターを使って切断する事が多く、村山先生も何度も金尺を移動させながらポスター切断をしていました。
ただ、そうすると継ぎ足し時に切断線がずれることが多く、かといって長い金尺を用意すると非常にかさばります。
そこで、今回は取り回しのいい長距離切断用のカッターを提案することにしました。
金尺の代わりにできて収納性のいいものを考え、メジャー(巻尺)が使えるのではないかと考えました。

メジャーは固定を外すとバネにより自動で巻き戻る測定器具で、その目盛帯は横への変形に対して強く、縦にはよくしなるようになっています。
このメジャーの目盛帯を上下からローラーで挟んで転がしながらスライドさせれば、目盛帯をレールにして切断する事が可能なのではと考えました。
メジャーをレールにしたカッターはその性質上、簡単に長距離が切断できることと持ち運びが楽になることなどの特徴があるため、どのようなコンセプトでデザインをするか相当悩みました。

A案としては当初のように長距離加工をするクリエイティブ関係の大人へ向けたデザインで、あえて丸みをなくしたカッコよさと分かりやすさを重視し、正確性も意識した幾何学的な形にするというものです。
B案としては、上から押して加工する故の安全性と30cm定規が入りにくいランドセルにも簡単に収納できる収納性に注目して、小学生など軽工作する層に向け、丸みをつけたミニカーのような持ちやすくて車をイメージした親しみやすい形にするものです。
今回の課題では、ブランド化やパッケージ案の提出も課題範囲だったのと、子供は大人と一緒に使う可能性が高いと考えて、より広く使えるA案を採用しました。

製作するにあたって重要なのはローラー部分です。
構造としてはボタンを押した時にローラーがメジャーの目盛帯を挟むと同時にカッターが接地するようにしました。
こちらのようにボタン部分と胴体部分を製作し、間に構造の一部にのみ引っかかるバネを入れることで、それぞれの構造にあるローラーでメジャーの目盛帯を挟むことができます。
その結果製作した3Dモデルがこちらになります。


このような構造にして下段と中段にメジャーの目盛帯を差し込み、ローラーで挟めるようにしました。
また、左側のタイヤと右側のタイヤのついた部分はそれぞれはめあいで固定できるようになっていて、どれくらいはめあいを差し込むかによって、ある程度の目盛帯の幅の違いにも対応できます。

切断時の正確性を高める工夫としては、ストッパーや目印を作ることで対応しました。
赤印のついた部分が刃の通る直線の横ズレの有無を確認できる目印になり、青印のついた部分が切断する距離(切断始点と終点)を確認できる目印になります。
ストッパーにぶつかるまで直線状にスライドさせることで一定の距離を正確に切断することができます。
また、ボタンを押している時だけ切れるようになっているので、メジャーの目盛を見ながら点線状に切断するということも可能となります。

次に、作成した3Dモデルを元に実際の可動モデルを製作しました。
まず、3Dプリンターで部品ごとにプリントをし、サーフェーサーを吹いた後、ギルディングワックスを使用して塗装しました。(基本的に手順はテープカッター時と同じです。)

デザイナーズマーケット(1年夏休み) テープカッター

神井 聡太
東京デザイナー・アカデミー (旧東京デザイナー学院)
結果として完成したモデルはこちらになります。
バネを仕込み、ボタンを押してスライドさせる所まで再現できました。
これをもとにFusion360のアニメーション機能とアフターエフェクトを使用して動画を作成しました。
これをもとにFusion360のアニメーション機能とアフターエフェクトを使用して動画を作成しました。今回は簡単な直線運動だったので、使用イメージも動画に入れることができました。
作成した動画がこちらになります。

今回の作品をブランド化すると仮定してロゴの作成をしました。
ロゴは、新しい「切る」へのアプローチとしてrecutとし、Uの文字をカッターの刃をイメージして変形させ、直線と捲れる紙を描くことでストレスフリーな切断を表現しました。
また、大人向けで分かりやすいパッケージ案を考案しました。
今回は大人向けの提案なのでよりカッコよさを重視したデザインにしてみました。(文による目立つ販促は店内ポップと裏面を想定しています。)
透明プラの外装の中にレンガ風のテクスチャが入った厚紙にロゴを入れ、メモリ風の厚紙を挟む形で商品を入れます。また、そのままだと輸送中に動いてしまうので底面にはタイヤやストッパーに合わせた形のプラの凸凹したシートを入れています。

教師の作品の完成時講評と感想・反省
透可動モデルまで作成して発表で見せることができたので、かなり分かりやすく伝えることができました。
先生からは、これからも仕事などで新しい物の提案をしていきたいのなら知財関連の経験を積んでおくことを勧められました。

反省点としては形を決定した根拠が弱いなと思いました。
なぜその形にしたのか、色の根拠は、胴体の厚みはなぜその厚さなのか、などをなんとなくコンセプトに合いそうという理由で決めてしまい、質問されたとき理論的な説明を展開することが上手くできませんでした。
射出成型に適切な寸法やテーパーなど細かい工業的な知識を作品に取り入れていく必要があると思います。
特許関連手続きへの感想
先生の助言から特許の出願をしてみることにしました。
まず、jplatpatで先行特許や実用新案がないか検索をしました。
このサイトはキーワードを入れて検索することで、特許・実用新案・商標などの検索をすることができるサイトです。
このキーワード検索は「巻尺」と「巻き尺」と「メジャー」で出てくる文献が違ったり、慣れるのにかなり時間がかかりました。

次に、モックを持って虎ノ門ヒルズの江戸身坂テラスの7階にある発明協会に行き、知財関連の無料相談をしてもらいました。
詳しいことは話せないですが、とてもお世話になり感謝しています。
自力で書き上げるのはおそらく不可能だったと思います。
特に請求項を決める時は権利の範囲がそれで決まるのでとても繊細な作業を必要とし、とても新鮮でした。

個人的なイメージしては、特許は陣取りゲームのイメージが強く、より抜けがないように権利の範囲を広げられるかや、先行の権利の穴をついて権利を確保するかなど複雑怪奇な印象でした。
今回の作品もカッターとして特許を出願する予定でしたが、そのままだとカッターではなくペンや糊になったときに特許の対応範囲がずれてしまうため、「メジャー文具」ということでほかの文具を付け替えられるように範囲を広げて、特許出願をしました。

今までの課題や授業ではデザイナーとして、いかにブレイクスルーで突出できるかに注目してアイデア出しをしてきましたが、今回の特許出願にあたっては網目を小さくし、穴を塗りつぶすような形でのアイデア出しをすることになったので、経験の幅を広げるという点でかなり成長できたかなと思います。
特許の出願時に提出した資料を最下部にPDFにて添付します。

公開年月日
2024年1月

メッセージ
今回は知財関連の経験を積み、より俯瞰的に物事を捉えられるようになったと思います。まだまだ思考や提案の質を上げて、しっかりとした根拠のある提案をできるようになりたいと思うので、在学中に色彩検定などにも挑戦していきたいです。

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  • メジャー文具.pdf
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