「名刺とサンドイッチ」 デザイン制作のショート作品化

「名刺とサンドイッチ」  2023.1.4

 先日、古くからの友人の助言により、名刺を作ることになった。
 年のはじまり、まだ正月の気が抜けていないまま机に突っ伏す。手から落ちたスマホの検索窓には〈名刺 デザイン 作り方〉の文字。
 端々で聞くところによると、四角い紙片を交換する文化が、ここ日本にはあるらしい。
 しかし名刺とか、作ったことない。もらったことない。あまり友達がいな……。

 こほっ。話が逸れた。
 さすがに名刺の存在くらいは知ってたけど、この時期にいきなり必要になるとは思わなかったのだ。もう開催されないだろうと油断していた、同窓会の連絡が来るまでは。


 そもそも名刺の役割は重大すぎる。
 相手に自身のことを覚えてもらうという、大逸れた使命が託されており、たった一切れの紙片だけでは頼りない。よってデザインは必須、名刺の命だった。

 しかもタイムリミットは今日の18時まで。というかその時間までには、会場に到着しないといけない。だから本当の締め切り時刻はもっと早い。支度もしなければならない。
 だが、デザインはまだ決まっていない。

 そこで、趣向を変えてみた。
 名刺は作らない。名刺じゃない名刺を作るのだ。

完成したのが、コレ。

 印刷会社に制作を頼む時間があるはずもなく、印刷紙にプリントしただけの代物だったが、折り畳み式にすることで耐久度を強化。これでチープさは幾分か薄れただろうか。
 名刺のデザインは、エクストラへ提出した長編小説『亜空間サンドイッチ』の設定から、〈空から降ってくるたまごサンドイッチ〉を表現したもの。

 なかなかに良いデザイン……だと思いたい。褒めてくれる人がその場にいないので仕方なく自分で自分を労わることにする。
 よくやったわたし。これでもし名刺を渡されても、引け目なく差し出せるものがあるじゃないか。



 ちなみにその日、臆病なわたしが渡せた名刺は、たったの数枚だった。



下にあるファイルみたいなアイコンを押してもらえると、
ホーム画面からいつでもこの記事を見返すことができます!!

水街ミトへのメッセージなどは「お問い合わせ」から

……だれか、名刺いりませんか?