介護人材事業にかける情熱 (前)

座談会 介護人材事業にかける情熱

(一社)ABN理事長・後藤氏を囲んで(前)

介護人材事業に協同参画し、第一線で活躍中の業界関係者による座談会が(株)データ・マックス本社で開かれた。

介護人材事業に対する思いや、今後の展望などについて語り合った。

【参加者】

◎介護人材事業発起人:(一社)ABN 理事長 後藤哲哉 氏

◎音響・撮影・編集・映像制作・通信ネットワーク構築など担当:(一社)ABN 理事

溝部領一 氏

◎(協)ASIO 理事長

仲盛昭二 氏(建築構造設計、一級建築士)

◎(協)ASIO 専務理事 兼 (一社)ABN 理事

鍬 健治 氏

◎司会 岡本 弘一

司会 まず、後藤哲哉理事長のプロフィールをお聞かせください。

 後藤哲哉氏(以下、後藤) 私は1941年生まれで80歳になりました。還暦を機に東京から地元の別府市に帰郷し、映像と音楽によるコンテンツ制作活動を続けてきました。

私は作曲・編曲家、映像のクリエーターをしています。

1962年に東京都内のジャズ喫茶でバンド活動中に、渡辺プロダクションにスカウトされて音楽業界に入りました。

同年、ミノルフォンレコード(現・徳間ジャパン)からラテン系ジャズピアニストとしてレコードデビューし、歌手の田端義夫さん、柴田はつみさん、「ヒデとロザンナ」と活動しました。

その後、音楽プロデュサーとして独立し、CM制作や作曲・編曲を生業とする中で、全国の学校校歌の作曲・編曲、CD制作を行ないまして、NHKの全国放送で紹介されて高い評価を得るとともに、皆様からとても喜んでいただきました。

 司会 音楽活動を生業としている後藤理事長が、介護事業に参入しようと考えたのは、どんな理由からなのですか。

 後藤氏 私はフィリピン人の介護士を日本の介護施設で要介護者にあてたいと考えています。

過去に、私はフィリピンの病院に入院し、治療を受けた経験があります。そのときに、フィリピン人看護師の治療や看護に慈愛の精神を強く感じました。

フィリピン人の80%ほどがキリスト教信者だからでしょうか、正に、その信仰心が親身にあたる治療や看護に感じられたのです。

それが良いきっかけとなり、その看護師と私は結婚しました。同時に、妻が卒業した看護医療学部を有するフィリピン最大の大学の学長との交流も始まりました。

 司会 その事から介護人材事業への参入を考えるようになった経緯について、お聞かせください。

 後藤氏 東京から帰郷後も、地元の大分県別府市で映像と音楽のコンテンツ制作を行ない、まちづくりの広報活動を続けていたところ、その活動が評価され、大分市の観光大使に就任することになり、国内外で幅広く積極的な活動を行いました。

その活動の1つに大分県からの依頼で、大分県の観光紹介ビデオを制作して北京万博に出展し、観光の広報にも寄与しました。

 また、大分大学学長、立命館アジア太平洋大学(APU)学長との交流を機に、産官学の国際ネットワークを構築することができました。

そこで、このつながりを生かして私が従前から描いていた構想ですが、フィリピン人の看護師から治療や看護を受けた時に感じた慈愛の精神の体験とフィリピン人との長い交流により、介護事業参入に力を注ごうと考え、介護人材事業に着手しようという強い意欲が湧いてきました。

 司会 産官学の国際ネットワーク構築について、具体例を挙げていただけますか。

 後藤氏 大分大学の例ですが、(一社)ABNと大分大学による産学協働会議を開催しました。

大分大学医学部と外国人研修生との対談や大分大学学長・副学長との対談で、外国人介護士技能実習生の受け入れによる活用について、多角的視点に立った見解や各立場を考慮しての侃々諤々の積極的な議論が行なわれました。

また、大分県知事や前・現別府市長、由布市長、衛藤晟一参議院議員などとの親交も有りますから、産官学による国際ネットワークについて、この先々で実行可能な新たな構想や展望などについて話し合っています。

 司会 介護ビザを取得する為に、最も重要なのは介護福祉士資格を取得する事です。

この国家資格は、来日するフィリピン人は取得していませんので、介護福祉士資格取得前の外国人が、日本の介護施設で働くための方法を紹介します。

(1)技能実習 (1号および 2号)

 外国人技能実習制度には介護職種も有ります。介護ビザとは異なりますが、技能実習ビザは介護福祉士の資格を必要としていません。申請人の経験や日本語能力、所属機関の指導および事業所の体制などが整備されている事が必須となり働く事ができます。

技能実習生の受け入れ国は、中国・ベトナム・フィリピン・インドネシア・タイ・ペルー・ラオス・スリランカ・インド・ミャンマー・モンゴル・ウズベキスタン・カンボジア・ネパール・バングラデシュの15カ国に限定されています。

(2)特定技能 (1号および2号)

 2019年4月に創設された在留資格で、介護も対象分野として定められています。

技能実習制度と同様に介護福祉士の資格は必要ありません。

これも技能実習制度と同じく申請人の知識および能力、所属機関の分野該当性と受け入れ体制(支援計画)などが必須となり働く事ができます。

(3)特定活動(EPA介護福祉士候補者・介護福祉士)

 EPAとは、日本と特定の国が幅広い経済関係の強化を目的として締結した協定です。

日本とEPAを締結している国の外国人人材が、介護福祉士の資格を取得するまでの間と、この同資格を取得した後も、引き続き日本で就労する事ができるようになっている在留資格です。

EPA (経済連携協定)で認められているのは、フィリピン人・インドネシア人・ベトナム人の3カ国出身の外国人に限定されています。

 司会 外国人が介護福祉士の国家資格を取得する前提で、その受験資格を得る為の、3つの方法を紹介します。

(A)実務経験による方法

 介護施設の介護現場で3年以上働いた実務経験を有し、実務者研修を半年以上・450時間を受けて受験資格条件を満たし、介護福祉士の国家試験に合格して資格を取得する方法です。

(B)養成施設による方法

 厚生労働省が定める介護福祉士養成施設(介護の専門専修学校など)で、必要な知識技能を2年以上学び、受験資格条件を満たし、国家試験と実務試験に合格して資格を取得する方法です。

(C)EPA (経済連携協定) による方法

 EPAにより入国し、日本の受け入れ施設で業務研修を修了後に、受験資格を満たし、介護福祉士の国家資格試験に合格して資格を取得する方法です。

 これまで介護ビザを取得する為には、(B)の養成施設による方法のみが認められていましたが、2020年4月1日に介護ビザの基準省令が改正され、その他の方法で介護福祉士の資格を取得した方も、介護ビザを取得できる事になりました。

【 文章 ・ 構成 : 岡本 弘一 】