「脊髄損傷で一生車いす生活。」
子どもがジャングルジムから転落して。高校生がラグビーのタックルを受けて。
運転する車がガードレースに衝突して。お年寄りが転んで。
1分後には脊椎を傷めて、こう宣告される可能性は誰にだってあります。
交通事故で亡くなる方より多い年間5,000人が脊椎損傷となっている現実。
「二度と歩けない」
ーそれはかつて”絶望”でした。
それが“常識”でした。
その常識を覆すため、アメリカで修行した技術を使い、脊椎損傷の回復=もう一度歩く、という奇跡を起こし続けている”企業”があるのです。
それこそ、伊佐拓哲さん率いるJ-Workout。
色んな医療職の方々やトレーナーが力を合わせ、失われた機能を回復させています。
現実に、450名が機能を回復したという事実。
まさに全国12万人の脊椎損傷者への”福音”です。
僕の医療に対する概念も変わりました。
医療行政をやっているとき、障がいというのは症状が「固定」する、その日をもって認定が行われます。
障がいを負った方の医療の世界でのリハビリとは、「残った」機能で少しでも日常生活ができるように訓練し、社会復帰を目指すものです。
ところが、このJ-Workoutでは、「固定」「残った」という発想を軽々と超え、「回復」「呼び覚ます」ことをやっているのです。
医療保険制度が、医療が、諦め、手放した〈可能性〉を粘り強く、耕していく作業に他なりません。
実際、公的な医療保険制度でカバーされるようになれば、劇的にこのサービスを受けれらる人は増えるでしょう。人材育成も進むでしょう。
しかし、残念ながら、その門は開いていません。
多くのエビデンスを集め、多くの理解者と世論の後押しがなければ、制度は動き始めない。
伊佐さんは、現状の国や制度を嘆いたりすることなく、颯爽と、企業スポンサーを増やし、コツコツと実績を積み上げています。
脊椎損傷者ひとりひとりが自走し、自立する。同時にそれを支える仕組み自体も自走し、自立する。
身体の一部の機能には「制限」があっても、発想と行動力は「無限」。
聞いてはいけなかったかもしれません。
でも、聞かずにはおれませんでした。
想像で済ませてはいかんと思ったので。
「車いす生活を強いられた、脊椎を傷めるという大怪我をしたとき、どう受け止め、どう乗り越えたのでしょうか?」
先週の脊椎損傷者専門スポーツジム創業者 伊佐拓哲さんとのクロストークにて。
伊佐さんの答えは淡々と、明快でした。
「一晩だけ、夜通し泣き続けました。そして、あの怪我をしなかったことを想像しました。もしも、あれがなかったらと、理由をどんどん遡って行きました。そうしたら、最後には自分がいなくなってしまうことに気づいたのです。」
「自分が存在する以上、あの怪我は避けられなかったと分かったとき、前を向くしかない、と、スッと切り替わったのです。」
人生には色んな境遇も、巡り合わせもあります。
でも、自分が自分であるためには、ここに辿り着くしかなかった。
きっとそうなんでしょう。
あとは自分次第。
伊佐さんに、潔さと、勇気と、missionへの覚悟を見ました。
本当のサムライの姿を見ました。
それを体現する伊佐拓哲さんと仲間たちのチャレンジを応援していきたいです。