現実世界でも「北へカード」を使えば北海道まで行けるのか。


少し、昔話をしてみます。
昔、と言ってもたった二年前、僕が一回生だった時の春休み。
コロナとかいうやつがまだ世界中に広がっていなかったあの頃です。
そう思うとなんかはるか遠い昔に感じちゃいますね。 

ところでみなさん、
大学生の長期休みってどのように過ごしていましたか?


僕はなんとなく、大学中に海外行きまくって五大陸踏破したいなあなんて夢見ていて、
一回生の夏休みは6週間ほどアフリカのウガンダにホームステイしていたのですが、
冬休みになると国内での長期休みの有意義な過ごし方も考えていました。
 
「せっかく大学生になれたんやし、今しかできひん経験に時間使いたいな~~」
 
ふと思い立ちました。


 
そうだ、ヒッチハイクに行こう。
 
せっかくヒッチハイクするなら追い込みたいな。真冬やし北海道とか目指してみよう。北海道行ってみたかったし。
 
そう軽い気持ちで決めたものの、1人ではなかなか次の一歩を踏み出せないもの。
 
そこで地元の友人2人に冗談半分でヒッチハイクやってみたい旨を告げたところ、
おもろそうやん、来月一緒にやろうぜと話がまとまりました。最高な奴らです。
しかしそこで問題が。
そうです、3人でヒッチハイクをしても物理的に乗せてくれそうな車がないことです。

その時誰かが提案しました。
「あと一人誰か誘って2対2に分かれてどっちが早く北海道に着けるか競争しようや!」
なんか面白くなってきましたね。

 
いよいよ日本を舞台に戦うヒッチレースが始まる前日。
プレイヤー4人による決起集会がサイゼリヤ宇治里尻店にて行われました。
よりヒッチレースを有意義にすべく、4つのルールを定めました。
 

ルール

0.公共交通機関は使わない
1.今出川チームは当日0:00に出発、丸太町チームは12:00に出発
2.宇治からスタート、ゴールはJR函館駅の前で記念写真を撮ること。
3.今出川チームが丸太町チームより12時間以上早くゴールした場合、今出川チームの勝利。それより遅くゴールした場合、丸太町チームの勝利。

 
また、今回はお互いがルールを守るためにゼンリーという位置情報共有アプリをそれぞれ入れました。大学生にはお馴染みのメンヘラ製造アプリですね。これを使えば相手チームがどこにいるのか、車に乗って移動しているかどうかが確認できます。
 
サイゼの激安白ワインで乾杯したのち、各々明日に解散して明日からの旅に備えます。
スケッチブックに目的地を書き記しました。必殺技は「北へカード」。
とりあえず北へ向かえばいつか北海道着くやろう。

数時間後、僕達今出川チームのスタートです。なお、親には絶対に反対されると思ったので「友達の家泊りに行ってくるわ~」と言い残して怪しまれないよう薄着で家を飛び出しました。この決断のおかげで後々地獄に遭います。 
相棒のK丸君と合流し高速道路近くのファミマでスタンバイ。

ヒッチハイクスタート!

日付が変わった瞬間に今出川チーム、ヒッチハイクスタートです!!
12時間後に出発する丸太町チームとなるべく距離を広げておきたい!!
 
スケッチブックを掲げて一時間後。

全く車は止まってくれません。なんで?? 

僕たちは「名古屋へ」と書かれたスケッチブックを掲げていました。
今思えば関西の下道で名古屋に向かう車に出会えるわけなんてないんですよね。
 
そして思ったより田舎だった宇治シティ。日付が変わるとそもそも車が1分に1台しか通りません。しかもほとんどトラックばかり。午前1時を過ぎると3分に1台来るか来ないかレベルに。焦りと不安が募ります。
 
作戦変更、滋賀でもいいからとりあえず高速道路に乗ろう。ぶら下げるスケッチブックの文字を変更して再スタート。

すると、ついに車が一台、僕たちの方に向けてスピードを緩めながら止まってくれました。

しかし僕らはその車に乗ろうとはしませんでした。タクシーだったのです。
公共交通機関はこの旅では使えない。流石に数時間前に自分たちで決めたルールを初っ端から破るわけにはいきません。
助手席から窓を開けた初老の運転手とそんなこんなで経緯を話していると、彼から意外な一言が。
 
「ほなお金なんていらんよ。今から大阪の家に帰るとこやし大阪方面でいいなら乗せてってあげるで。」
 
小学校で社会を習った方ならわかると思いますが、京都から大阪は北海道から遠ざかる方面です。
しかしこの場所で次の一台が止まる想像が出来ず、とりあえず現状を変えたかったのでお言葉に甘えちゃいました。
道中に寄ったコンビニで差し入れまでくれる運転手の温かさに胸が熱くなります。
車に揺られ、運転手の家族の話や趣味の競馬の話をしながら一時間。
時刻は午前4時。
大阪市内の高速道路の入り口付近のコンビニで下ろしてもらいました。
とりあえず次の作戦は高速道路に乗る車を捕まえること。
高速道路に乗ってしまえば、あとはサービスエリアで車を乗り継いでいけそうと思ったからです。
 
しかしここでも車は一時間以上止まってくれませんでした。

なんで???

よく考えてみたら、高速道路の入り口って、交通量が多くて車のスピードも速いので車が止まりづらいんですよね。
 
しかも大阪の”いかにも”なヤンキー達に白い目で見られ、再びメンタルボロボロに。

なんやねん大阪人。

K丸君とお互いを鼓舞しつつヒッチハイクに励んでいると、ガソリンスタンドで給油していたチャラめのお兄さんが近づいてきました。 
「自分は乗せれへんけど頑張ってや」
あたたかい差し入れを手渡されました。ごめんなさい、前言撤回します。

大阪人ってなんて素敵な民族なのでしょう!!
 
やむなく僕たちは作戦変更。
ネットで調べ、近くの歩いて入れる某サービスエリアから高速道路に乗ることに。その場所は約4kmと遠かったですが、既に時刻は午前4時を過ぎ、ハイで深夜なテンションで知らない道を歩き続けました。
約2時間ぶっ通しで歩き続け、ついに目的のサービスエリアにゴールイン!いや、やっとスタートラインに立ちました。
 
既に空は明るくなっていたので、ひとまずフードコートで腹ごしらえ。
 ご飯とお味噌汁の温かさが冷え切った体に沁みました。
 
エネルギーを体内にチャージして、ヒッチハイク再開!!
 
、、、
 
、、、
 
全然車は止まってくれませんでした。。

振り返ると、ここでスケッチブック掲げた時間が一番長かったです。笑

早朝の肌寒い中3時間くらい外で立っていました。
 
 
しまいには移動したすぎてスケッチブックに「次のSAへ」と書く始末。
しかしこの作戦が功を奏しついに、京都の桂川までならと、仕事で営業に行く前のお兄さんとマッチング。
桂川はパーキングエリアなので今の場所よりは車の数はかなり減ることになりそうです。しかし流れを変えるため、桂川まで乗せてもらいました。
 
桂川PAでは一度K丸君と作戦会議。
疲労により論理的な作戦会議は出来ませんでしたが、
結論、疲れてる時こそテンション上げてこやって決めました。

パーキングエリアに入ってきた車には「運転お疲れ様です!」と言わんばかりに手を振って存在をアピールし、
車内の人と目があったらスケッチブックを指差して目的を伝える。
苦笑いされても少しでも乗せてくれそうなら笑顔と目線で訴えかける。

今思えば狂気じみている気もしますが、なんやかんや30分くらいで次の車に乗せてもらうことに。お世話になったのは建築事務所の30代くらいの3人組。滋賀に打ち合わせに向かう途中だったそうです。そんな時に大学生と話してていいんかいって思いましたが、気さくな人達で話していて楽しかったです。同時に楽しそうに仕事する社会人もいるのだなと、感動しました。

あっという間に草津SAに到着。ここは人気のサービスエリアで車も多く、すぐに乗せてくれる車を捕まえられそうです。
出口の先端に立ってスケッチブックを取り出そうと鞄をごそごそしていると、一台の車が寄ってきて近くに停車しました。

助手席の窓を開け気さくに話しかけてくださったのは年の差が7つ以上ありそうな訳ありカップル。二つ返事で乗せてもらうことに。いやノリ良すぎやろ。
車内で話していると、実は桂川PAで僕たちを一度見かけたのだそう。その時は必死な僕らを「あほなことしてる奴らがおる」って興味半分で眺めていたそうで、次のSAでも見かけたので何か縁を感じて乗せてあげようってなったそうです。笑

いやあ、努力や頑張りって必ず誰かが見ていてくれるものですね。
部活をしていた頃は顧問が見ている時しか頑張らなかったタイプの僕は心を打たれました。
 
そしてとてもとても有難いことに、この車のおかげで滋賀から愛知まで一気に移動できました!
二時間ぐらい車に乗っていましたが、男性が話すのがめっちゃ上手でずっと喋りっぱなしでした。
なんでヒッチハイクしてるいのか話したり、仕事何しているか聞いたり、二人の馴れ初めを聞いたり。
彼女の前でも平気で下ネタぶっこんでくるし。負けじと僕らも応戦します。

そういえばこの車に乗っている間に正午をまわり、丸太町チームの二人が出発しました。ゼンリーを開き、僕らの地元宇治でヒッチハイクしている様子を見るとスタートの頃を思い出して浸っちゃいます。どうか彼らを乗せてくれる車が一台も現れませんように。

結局、僕たち今出川チームは名神高速・東名高速を通り名古屋を少し抜けた東郷PAまで乗せてもらい、そこで一緒に遅めの昼ご飯を食べて解散しました。
 
 名古屋名物の味噌カツときしめん、ボリューム満点で美味しかったです!
 
ちなみにそのPAで初めて僕らと同じようにヒッチハイクしている男性に出会いました。その男性はヒッチハイク経験が多かったらしく、先輩面を吹かしてヒッチハイクのコツなどを教えてくれました。なんか、雰囲気が嫌だったので彼より早く次の車を捕まえ、早々にその場を去りました。
生きるか死ぬかの真冬のヒッチハイクに驕りや情けは必要ありません。

そこからは5台目、高校教師のお兄さんに上郷PAまで乗せてもらい、6台目、土木建築系のおじさん2人組に静岡の足柄SAまでと、時間をかけながらも東名高速を進み続けました。足柄SA(EXPASA足柄)は大型SAでテレビでも紹介されるくらい人気かつ施設が充実しています。
24時間営業のフードコートやホテルもあったので、この時点で時刻は夜21時。
今日中にもう少し前に進めそうですが、変に小移動を重ねた結果小さなPAで野宿を強いられる、という最悪のケースを想定して明日に備えることに。
6時間休憩でホテルを取り、温泉で汗を流し、フードコートのマクドで夜ご飯を済ませました。
 

一日目移動終了、中間結果はいかに

さて、僕たちは丸一日かけて京都から静岡まで東進したわけですが、12時間遅れで出発した丸太町チームは半日でどこまでたどり着いたのでしょう。連絡を取ろうとするとちょうど向こうから電話がかかってきました。
 
電話越しからは二人のテンションが高い声。そして賑やかな街の雑音。

、、彼らは東京にいました。1台目で運よく名古屋に向かう車に乗せてもらったことを皮切りに、スムーズに車を乗り継げたのだそう。12時間の貯金はあっという間になくなっており、むしろマイナスになっていました。

勝利条件は彼らより12時間以上早く函館に到着すること。

初日でこれだけ差を付けられては正直キツいです。。
一方彼らは勝ち誇ったも同然。勝利宣言をしてから東京の街中に消えていきました。
しかしこのムーブが勝負の命運を変えることになるのは、また翌日のお話し。

初日の移動を終えたところで、この記事もひと段落つけてみます。
果たして僕たちは無事に北海道まで辿り着くことが出来たのか。
お付き合い頂きありがとうございます。後編もいつか書きます。いつか。

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