【7月3日(日) 第7期ジェンダー単元開催報告】

LAP第7期のジェンダー単元の講義を、対面とオンラインのハイブリッド形式で行いました。今回は福岡県福津市の元副市長で、現在INVITATION代表の松田美幸さんを講師にお迎えし、「特権」という切り口からジェンダー問題について考えました。
 
冒頭は、松田さんの人生を辿りながら、日本で過去にあった男女差別について学びました。特に印象的だったのが、松田さんが大学生だった頃の女性の大学進学率がたったの12%だったということです。今でこそ短期大学の進学率を合わせればむしろ女性の方が割合が高いですが、医学部試験で女性差別があったように、未だに日本にはジェンダー問題がたくさん残っていると感じました。
 
その後は、事前課題に対するチームごとの見解を発表していきました。
課題は、「あなたは特権スコアが存在する国の国民である」という設定で、「特権スコアが高い場合と低い場合でどのような行動をとるか、どちらか選べるとしたらどちらを選ぶか」というものでした。
問いに対して、「特権スコアが高いからこそ低いスコアの人たちのために何か行動を起こしたいけれど、相手が何を求めているのかがわからないから行動できない」、「特権スコアを気にせずに暮らせるコミュニティに属したい」といった様々な意見があがりました。
また、事前課題を考えるにあたって出た論点として、「多少の格差は安定した社会を成立させるために必要なのではないか」というものがあり、「格差」とは何かを改めて考えさせられました。
 
後半は、ジェンダー問題のとらえ方、海外と日本におけるジェンダー問題の事例・歴史、特権から考えるジェンダー問題について、松田さんのレクチャーを受けました。
ホロコーストの生存者であるエリ・ヴィーゼルさんの「愛の反対は嫌うことではない、無関心だ」という言葉や、上智大学の山口教授の「男性の敵は女性ではなく、家父長制です」という言葉を例にあげて、格差や平等を考える際に「二項対立」で考えてしまいがちな点に対して疑問が投げかけられました。
また、最近話題になっている中絶禁止の合法化の動きや、カナダで過去に起こった先住民の女性・子供たちの殺害などを通して、ジェンダー問題が政治や歴史と深い結びつきがあることに気づかされました。
上智大学の山口教授が、特権を「自動ドア」に例え、「特権の高い人は自動ドアをすいすいと進めるけど、特権の低い人は毎回開かない自動ドアに阻まれてしまう、特権の高い人たちは自動ドアを当たり前のものとして気にも留めない」と表したことに納得すると同時に、立場の違う価値観を理解することの難しさを感じました。
また、日本の男女格差克服の歴史はほんの最近始まったばかりで、約100年前にやっと女性が関所を自由に移動できるようになったと聞いたときは、とても驚きました。それから女性の参政権が認められるようになったり、男女雇用機会均等法が制定されるようになったりするなど、徐々に男女間の格差はなくなってきたものの、先進国に比べるとそのスピードはとても遅く、未だに選択的夫婦別姓制度が認められていない、といった問題が山積みで、大変焦りを感じました。
世界における男女格差克服の歴史を見ていくと、1990年代あたりから、個の多様性を認める動きが見られたものの、新しい差別「インターセクショナリティ」が生まれるなど、まだ世界でも考えるべきジェンダー問題がたくさんあることを知りました。
 
グループでの対話の時間で特に印象的だった論点は、「偏見とは何か」でした。「男性がスカートを履いていることに対して違和感を覚えることは偏見だ」という意見の方がいらっしゃいましたが、松田さんは、違和感を覚えること自体は問題ではなく、「無意識的に相手を傷つけてしまっている状況が偏見なのだ」とお話されていて、「偏見」に対する新たな見解をもつことができました。
 
今回の講義は、受講生やメンターのみなさんが、違う価値観をもっていることを理解しつつ、それを受け容れ、自分の意見を勇敢に表明するという有意義な対話の時間になったと感じました。同時に、センシティブな内容に触れる際に、「この話をすると誰かを傷つけてしまうかもしれない」という他者への配慮の重要性を痛感しました。
 
現在松田さんはカナダにいらっしゃるため、当日は現地の夜遅い時間にも関わらず、私たちに多くの学びをもたらしてくださいました。この場を借りて改めてお礼申し上げます。
 
受講生のみなさんは講義を経て、どのような変化がありましたか?みなさんのリフレクションを楽しみにしています!
 
次回は8月7日(日)のコンピュータサイエンス単元です。講義での学びをさらに深めていけるよう、予習にしっかり取り組んでいきましょう。
 
<文責:前田>

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