"空気"のような存在を目指して


模擬挙式を通して自分が成長したこと 

「ただ事前に決めた楽曲をかけるだけの仕事」

 突然だが、担当が音響に決まった際の私の正直な気持ちは冒頭の一文に全てが詰まっていると言える。しかし実際には当然の事だが全くそのようなことはなく、スイッチを押したりボリュームのつまみを回したりする私の右手の動き一つでゲスト全員の気持ちを変えられる音響の責任は大きなものだった。反対に自分の動き一つで式全体の雰囲気をガラリと変えることもできるというプラスの点にやりがいを感じたのも確かである。
 遠回りしたが私がこの模擬挙式を通して成長したと感じること、それは式全体を俯瞰する能力が身に付いた点である。司会進行、CAPの動きに合わせて全体の雰囲気調整に貢献できたと感じている。
 将来結婚式作りに携わりたいと考えている私にとって、ゲストから「見えない」仕事の大切さ、式を底から支える力の大きさについて学ぶことができた。音響は決められた楽曲をかけるだけの仕事ではない。仮に役割がそれだけならば機械に任せておけば良い。今までの私は音響や調理師などお客様と触れ合う機会の少ない仕事の重要さに気付くことができていなかった。
 私は、サービスの根幹とは自分の目の前で接客を行うスタッフではなく、見えないところで準備を重ね、当日の様子を俯瞰しつつ影から支える存在にこそあると考えた。そしてそれら影の存在の努力量こそが、ゲストの満足度に直接的に繋がると思うのだ。最初こそこの役割を甘く見てしまっていた私だが、音響という役割が存在する本当の意味を理解する機会を得られて良かったと感じている。

模擬挙式で一番意識して取り組み、行動したこと

 
 それは、良い意味でも悪い意味でも「邪魔」をしないことである。例えば式の場面が変わったからといって音量を変えないままバラード系の曲調のものからからJ-POPの楽曲に移ったらゲストは違和感を感じて興冷めするかもしれない。とはいえ、あまりにぬるりと楽曲を変えると雰囲気を変えることなど到底不可能でパッとしない式進行になってしまうと考えた。よって、良くも悪くも式進行の邪魔をしないいわば空気のような、けれどもいい塩梅に素敵なアクセントを与えられる音響役を目指した。仕方のないことだがiPhoneと音響機器を繋ぐプラグの接続が日によって上手くいかなかったり、機器から流れる音量が何故か普段より小さかったりと練習毎の微調整が大変だったが私はそこを一番大切にした。チャペル内でフラワーシャワーの準備をしている仲間やプランナー・司会・CAP等、各役割の配置場所による音の聞こえ方にできる限り違いが出ないよう納得がいくまで音量の調整に付き合ってもらった。音響室は実際の聞こえ方が分かりにくいため、自分では当日成功できたか分からないのだが、この調整のお陰で自信を持って役割を全うできたと言える。

今後の自分の課題とその改善方法

 「最初から本気でぶつかろうとしなかったこと」この一言に尽きる。練習中盤〜後半こそ事前準備も万端の上で取り組めたと自信を持って言えるが、前半は決してそうではなく挙式というものの形が分からない(知ろうとするのが遅い)まま、何となく希望していた役割に就くことも叶わず、やれと言われたことだけをやる受動的な動きしかできていなかったように思う。ある日の授業終わり、「今日本気で準備できた人は?」という先生の問いに対して私は挙手できなかった。しかし私の傍にいた司会の子が手を挙げていて、一気に自分が恥ずかしいなと、音響をやらせていただけるのはチームでたった一人だけなのに私がやらないと誰がやるんだ…と情けない気持ちになったことを覚えている。その次の回からは新郎入場の際に掛かる曲のタイミング調整や、前奏カットなど必要な準備をして練習に臨むことができた。口先だけで「がんばる」のではなく初回から本気でぶつかることが私の今後の課題である。これを改善するためには何となくで行事に参加しようとないこと、事前調べを怠らず初回授業の段階で"使える"知識を身につけておくことが必要である。
 今回痛感したことは、やはり専門式場やホテルでアルバイトをしている子は周りよりも一歩も二歩も先を行っているということだ。そこに関しては「仕方ないし…」と卑屈にならず違う武器を身に着けていきたい。自分にしかできないことを見つけ、誰よりも真面目に着実に前に進んでいきたい。

今後どのような人材に成長したいか

 良い意味で年齢を重ねても新鮮さを失わない人材になりたいと考えている。初めて担当したお客様の言葉が生涯ずっと心に残り続けたり、若い頃に担当させていただいた式をずっと覚えていたり、それはとても素敵なことだと思う。私もそんな未来図を描いている。そう、私はそんな感情をいつまでも大切に持ち続けたいと考えているのだ。自分にとって目の当たりにする挙式が人生で100回目だろうと、眼の前にいるお客様にとっては一瞬一瞬が1回目であり、また最後の光景であることを常に念頭に置きお客様やゲストの皆様に寄り添える人材で在りたい。そしていつかハプニングをも笑いに変えられるほどの機動力を身に着けていきたい。
 慣れとは、良くも悪くも捉えられる言葉だと思う。しどろもどろで何も上手くいかなかった接客から、お二人らしいオリジナリティ溢れるご提案をスピーディーにできるようになるのはきっと素敵な慣れで、私はそんな慣れと新鮮さを兼ね備える立派な業界人になりたい。

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