第二章 事例から読み解く見えないビジネスモデル6~10
6スタディサプリのビジネスモデル
リクルートはカスタマーとクライアントの両方の顧客をつなぐ「リボンモデル」を得意としてきたが、それを封印しスタディサプリを開始した。
・校舎を作らない学習塾
人件費だけでなく校舎という大きな固定費を削減
⇒今までにない圧倒的な低価格が実現
・競争しない戦略(公文との共存)
小学3年生まではフェイス・トゥ・フェイスの反復学習が効果的
⇒小学4年生からしかサービスを提供していない
・多様なサービス展開
①小学講座 ②中学講座 ③高校講座 ④大学受験講座
⑤社会人講座 ⑥合格特訓プラン ⑦Englishプラン(日常会話) ⑧Englishプラン(TOEICなど)
想定外の顧客のニーズ(社会人)が顕在化しビジネスモデルのバリエーションを増やすことに成功した
⇒多様な顧客層からの支持
7ベンチャー・中堅企業のビジネスモデル
・ニッチ戦略を実行できるかが鍵
⇒開拓した市場が十分小さい場合には、大企業は固定費が高いため赤字になるリスクを避け、静観を続ける場合が多い
・市場規模が大きくなると…
大企業が参入してくる可能性が高くなる
⇒大企業の同質化を招かないような戦略の工夫が必要
8リバイバルドラッグのビジネスモデル
・リバイバルドラッグとは…
⇒薬局で余った医療用医薬品を、それを必要とする別の薬局や病院に販売し、売り手と買い手の双方から手数料を得るビジネスを行っている企業
・2つの方法(売り手の薬局)
「リバイバル・ベーシック」
⇒売り手の余剰医薬品を売り手側が任意の金額でサイトに掲載し、その医薬品を必要とする会員薬局が、金額・数量を確認したうえで購入するシステム
「リバイバル倉庫」
⇒売り手となる会員薬局から預かった医薬品を、リバイバルドラッグで検品のうえ一時保管し、買い手となる会員薬局が必要とする医薬品を購入するシステム。売り上げの95%をこっちの方法が占めている。
STEP 薬局で余剰が生じる
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薬局が余剰品をリバイバルドラッグに送る
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リバイバルドラッグがサイトに出品する
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売れ残った薬品はリバイバル倉庫に移されそこで販売される
・ポイント制への改正
以前までは先着順、オークション制を導入していたが多くの苦情、新規顧客獲得・常連客2~3割にとどめたいと言うリバイバルドラッグの思想から外れてしまった
⇒買い手が自社の利益を確認してから入札できるようになった
9ソラコムのビジネスモデル
・ソラコムとは…
⇒NTTドコモなどのキャリアから回線を借りて付加価値を付けて通信を供給する企業。
何かをできるようにするためのプラットフォーム(モノやヒトをつなぐ基盤)の提供を目的として設立された
・IT費用を固定費から変動費へ
⇒投資余力のないユーザーのIT化の壁を低くした
・ユーザーがIoT通信のプラットフォームに求めるもの
①セキュリティ ②運用の楽さ ③手軽に開始・中止が出来ること
⇒SORACOM Air(ソラコムエア) セキュリティ強化
🗝SORACOM Canal(ソラコムカナル)
⇒①インターネットからアクセスできない閉域網での通信が可能・高いレベルのセキュリティが確保される
⇒②③ユーザー自らウェブの操作画面で利用開始・中止が可能、通信料は使った分だけ支払う従量制
始めやすく・接続しやすく・やめやすい
・専用ハードウェアの設置を不要に
従来のモデルではパケット交換、帯域制御、顧客管理、課金などに専用機器を利用
⇒基地局は既存のキャリアを借りているが、残りは全てクラウド上のソフトウェアで動かしている。つまり、専用機器をソフトウェアで置き換えた
このことにより、コストダウン・自ら通信速度等を自由に変更可能
⇒ユーザーが自分で設定を変えられる「柔軟性」と急激な通信の増加に対応できる「拡張性」を実現可能にし、今のところ競合は存在しない
10ランドスケイプのビジネスモデル
・ランドスケイプとは…
⇒データベースマーケティング支援の会社
・日本最大の企業情報データベース
⇒足で稼ぐのではなく、登記簿、電話帳、商工会データ、ウェブなどの公開情報からデータを集め、社名、住所、統廃合などを確認してデータをクリーニングし、さらに名寄せし、データの信用性を高めた
・競争しない競争戦略
⇒活動履歴やスケジュール管理ができる簡易SFA事業から撤退し、他者のSFAやMAシステムに自社のデータベースを提供するという戦略に転換
パートナー企業とお互いの優れた部分を生かし、補い合うことで両社に新たな創造をもたらした
この競争しない戦略への転換によってランドスケイプは再びメインの企業情報データベースの部分で勝負が出来るようになり、顧客からも価値が認められるようになった。
<グループワーク>
1.新規ビジネスモデルが既存ビジネスモデルの収益性を低下させる「カニバリゼーション」は「既存ビジネスから客を奪ってしまう」以外にどのようなことが生じるか考えてみよう。
・市場の独占
⇒自社製品の中でカニバリゼーションが発生したら、逆にその会社の製品を買うしかなくなるほどのラインナップを用意することが出来れば、他社の参入ハードルが高まり市場を独占につながる。
2.「何かをできるようにするためのプラットフォームの提供」というソラコムの目標は果たして戦略と呼べるのだろうか、議論してみよう。
・戦略とは言えない
⇒戦略は「何かできるようにするために何をするのか」というものであることから、「何かをできるようにするためのプラットフォームの提供」というソラコムの目標は抽象的すぎる。
演習課題1 新規ビジネスモデルが既存ビジネスモデルの収益性を低下させる「カニバリゼーション」は「既存ビジネスから客を奪ってしまう」以外にどのような要因によって生じるか、考えてみよう。
演習課題2 「何かをできるようにするためのプラットフォームの提供」というソラコムの目標は果たして戦略と呼べるだろうか、議論してみよう。