ひとの心が動くこと。それは一般に「感動」と呼ばれています。
では「感動」とは一体どこから来るのでしょう?
物語を描く表現からでしょうか、キャラクターたちの言葉からでしょうか。それとも……あなたの頭の中から?
私は「感動」を物語の「過程」に見出しました。
例えば、クマのぬいぐるみを持った少女が夜のコンビニに行く、と聞いてもピンとこないでしょう?
でも、彼女が祖母とたった二人きりで暮らしている、部屋からでられないような子供で、その日、脳梗塞で倒れてしまった祖母を助けるために、ぬいぐるみを手に握りしめ、勇気を振り絞って外の宵闇に駆け出していたのだとしたら?
この例は極端に簡略化したものですが、キャラクターが成長したその結果だけを見ても、ひとの心は動きません。だってそれはただの事実なのですから。
「成長」を魅せるには、事実だけでは足りません。キャラクターたちが自身を超えるその過程を描くことが、最終的な物語の終着点で大きな「感動」を呼び起こすのです。
感動とは、ひとの心が動くこと。そう初めに書きました。でも感動は、ひとの心を「動かす」こともできます。それが、あるひとの人生を一変させることだってあります。
「感動」させてくれる作品は、私たちの暗くなった思考を励まし、辛い現実や心をも温かく包みこんでくれます。偶然作品に出逢い、救われたひともたくさんいるはずです。かくいう私もそのひとりだったと思います。
人生に悩んだ私を繋いでくれていたのは、かつて触れた物語でした。それは小説だけでなく、映画であったり、漫画であったり。それらの心に残るような物語にはきっと「感動」を呼び起こす何かが描かれていました。
そんな作品を、私は創りたい。
いつかの私を励まし、物語の語り手に導いてくれた作品のように、悩むひとを感動させられたらと願い、日々新たな作品に向き合っています。