第10回 「自分で切り拓く力」のもとに

 はじめまして。事務局員の船島遥(ふなじまはるか)です。

 私が日中韓子ども童話交流に初めて参加したのは、まだ私が小学校5年生で、2010年の東京と奈良での開催の時でした。

 出発の前日、妹が緊急入院をし、母は病院へ泊まりに行き、私は祖父母と、不安いっぱいでほとんど眠れず朝を迎えました。仙台駅まで、母は父と見送りに来てくれましたが、新幹線ホームでの不安は最大級。しかし、新幹線にのり、泣きそうだった私に、秋田の子が声をかけてくれたのです。そして前の席にいた青森の子と、岩手の子がお菓子をくれました。その時、心がほっと和んだのを今でも覚えています。この子達のおかげで、不安が一気に消え去っていきました。その青森の子というのが、第5回の記事を書いた木下虎地郎さんです。まあ、本人は覚えていなかったみたいだけど(笑)。

 そして、岩手の子とはこの冬の交流会で再会をはたしました。秋田の子は、東日本大震災の後、この日中韓参加経験者のチャットで、私の消息を心配してコメントを入れてくれていたと知り、嬉しくて感無量の思いでいっぱいでした。その子とも今でもつながっています。

 二回目の日中韓子ども童話交流への参加は、去年の夏、中国での開催の時でした。参加経験者として参加し、2010年度に参加していたという仲間に再会でき、同じ思い出を共有した時は、とても感慨深い気持ちになりました。私にとって、小5のあの日々は、一日一日、自分への自信と、仲間との絆をつかんでいたと、今ならはっきり言葉にできます。

 去年、同じ仙台駅に立つ小学生の姿に、10年前の自分を重ね、心からエールを送りました。あっという間の9日間が過ぎ、帰りの東京駅で、「楽しかったね、ありがとう」と自信に満ちあふれ、本当に嬉しそうに、大粒の涙の中、私に大きくいつまでも手を振る子供達に、私は10年前の自分を見ていました。いつも、みんな、一生懸命で。自分の事だけでなく相手のことも、そっと寄り添ってあげていて。自分だって不安なはずなのに、初めての仲間、初めての環境、いつもと違う世界の中で、とことん挑戦し、全力でやり抜けた結果があったから、最後に深い絆の中で、最高の笑顔をつかんだと感じています。私自身、あの時、あの瞬間に学び得たすべての思いが、今の私の人生を切り拓く力になっていると思っています。そして、去年出会った小学生達も、きっといつか振り返った時、あの日々が大きな意味を持っていたと気付いてくれると信じています。