【SSDC】事業創造デザインプログラムAdvanced Day 3


岩尾ゼミAチーム広報担当の奥田愛梨です。

 5月8日よりAチームが取り組んでいる事業創造デザインプログラムAdvancedの3回目の活動が行われました。今回の活動も前回に引き続きウイルスの感染拡大を考慮し、対面ではなくweb会議システムzoomを活用しました。今回は、5月22日に開催されDay3の活動内容についての報告です。
 今回の活動の中心は「初期のビジネスモデルを考える」です。利益を生みだす製品やサービスの収益構造やビジネスにおける重要な関係者・物を図解することで、ビジネス全体の要素や関係の全体像を客観的に捉えようということです。それに先立ち、まずはDay3までの間に各々のグループで実施したインタビューをもとに仮説の検証と修正を行いました。これまでの活動の流れとしては、

〈Day1〉日常の中で感じる不満、不便、不快、不自由、不都合などの「不」の体験を各々が
   持ち寄りグループで共有。珍しく不思議である、既存商品では解決できない、
   不の解決が社会の課題解決に役立つ、テクノロジーの活用により大幅な解決が望
   める
といった観点から不の体験を見極め1つを定める。
   選定した「不」の体験を解決すべき課題と捉え、ソリューションアイデアを必要とす
   るであろう人々の共通点を想定し、代表的な顧客像「ペルソナ」を捉える。
   顧客の解くべき課題を考え、~したいという欲求を満たすような新たな製品、サー
   ビスを考案。ここでのキーポイントは、顧客と課題を中心に考えることでした。

〈Day2〉ソリューションアイデアの発想、具体化を各チームで進め顧客に受け入れられる
   製品の初期概要を考える。一通り発案したものを収束させ、実現に向けてアイデア
   を具体化していくと同時にDay 1で捉えたペルソナに対して実施するインタビュー
   の内容を考える。次回までに取り組む課題として各々が持ち帰りDay3までの約二
   週間で各々が仮説検証を目的としたインタビューを実施。さらにグループミーティ
   ングを重ねインタビュー結果を共有する。

 顧客が切実に悩んでいる課題を発見し、お金を出してでも欲しい解決策を素早く突き止めるという目的で実施したインタビューですが、自分たちの考案した解決策(商品、サービス)を欲する顧客が見つからないという事態に直面することもありました。原因として、
・想定した課題はありそうだが、同じニーズをもつ集団として想定した顧客セグメントがマッチしていない・課題とその顧客がそもそも存在しない・課題と顧客セグメントはマッチしているが解決策がマッチしないということが考えられます。Day3では以上三点をふまえて改めて仮説検証と修正を行い、必要に応じてアイデアや顧客セグメントをピボットしていきました。
 不の課題解決策として提案する商品はインタビューで得られたフィードバックをもとに改良を重ねられ、顧客のもつ課題とニーズにより適合するものへと変化していきます。インタビューを実施したペルソナにすぐに受け入れてもらえるものもあれば、思っていたほどの手応えを感じられなかった案もありますが、失敗と捉えるのではなく微調整やある部分での軌道修正を繰り返すことで対価を支払ってでも必要としてもらえる商品へと成長していきます。顧客と課題を中心に考えることを念頭に置きつつ、今後もインタビューと仮説の修正を継続していきます。
自身が提案する商品、サービスの方向性がある程度定まったところで、いよいよビジネスモデルを図解する段階に入ります。

• 主体を洗い出し(重要な関係者や物)どのような関係性があるのかを考える
•どこでお金が発生し、どのように収益を上げる想定なのかというお金の流れを意識するこのように図式化することで、ビジネスモデルを考えるにあたり全体の要素や関係を俯瞰することが可能になります。
ビジネスモデル図解と相補関係であるのがこのBMCです。 

 Business Model Canvas(BMC)とはビジネスモデルを記述・ビジュアライズ し、評価・変革するための共通言語で 9要素からなるフレームワークです。ビジネスモデルとはどのように価値を創造し 顧客に届けるかを論理的に記述したもので、様々な要素から成り立つビジネスの全体を俯瞰し広い視野で全体を見つめ直すことができます。9要素の関係性を紐解き全体の構造を分析する作業は非常に興味深いものでした。

 Day3の後半では岩尾 俊兵先生に登場していただき、 BM囲碁で常識打破の視点を得るという講義をしていただきました。不の解決をおこなうビジネスの中で、どんな「競争要因」に重点を置くかというビジネスモデルからまったく新しいビジネスモデルを発想するためにビジネスモデル囲碁が有効なのです。スポーツ飲料のポカリスエットとアクエリアスの売り上げを比較してみましょう。製薬系企業ブランドのポカリスエットは品質において絶対的な支持を得ているのにも関わらず、実際は3年後に発売されたアクエリアスのほうが売り上げが良いのです。両者の売り上げの差は、どういった要素に重きを置いて競合商品と勝負し差別化を図るのかという戦略によってうまれたものでした。今回の場合、品質第一で挑んだポカリスエットに対しコンビニや自動販売機での販売を普及させ入手し易さに焦点を当てたお客様第一を重んじたアクエリアスの戦略勝ちというわけです(後に中高生に焦点を当てた企画を実施することでポカリスエットの売り上げが逆転します)。
品質では勝っているが販売促進するための戦略が弱い、品質で若干劣る分コスパや宣伝活動といった製品そのもの以外の魅力で勝っているために売り上げが圧倒的に良い、というように競争要素は数多く存在しているのです。顧客にとっての価値を狭く捉えてしまうと製品で勝つ=ビジネスで勝つということだと認識してしまいがちですが、ひとつひとつの競争要素で負けてもトータルなビジネスモデルで勝つことこそが重要なのです。どこで勝負してどこで勝負しないか、どんな価値を求める人をターゲットにしてどのように価値を届 けるかという ビジネスモデル思考が求められるということです。これらを明確かつ視覚的に表してくれるのが、岩尾先生考案のビジネスモデル囲碁です。業界各社が力を注いでいる競争要因を横軸、各要因の水準(最大5)を縦軸にとり、囲碁の要領でマスを埋めていきます。これは競争回避戦略策定ツールとして非常に優れており、競合が焦点を当てていない競争要因を見極め戦略を立てるのに適しています。商品、サービスを魅力的にするのはそのものの質だけではなく、それ以外のどこで勝負するかに懸かっているということを頭に入れたうえで顧客の手に取ってもらうための戦略考案に一役買ってくれそうです。


知れば、知るほど、経営戦略って面白い。アイデアを洗練させてカタチにしていく過程はこんなにも複雑でいて楽しいのか、競合と勝負すべき要素、しない要素を見極める駆け引きって驚くほどワクワクするな、ということにワークを通して気づかされています。今後のSSDCでの活動や岩尾先生の講義に、より一層期待が高まった一日でした。

今後もpandoに活動報告をさせていただきます。


北村 和久(SSDC)
2020.05.27

SSDCの北村です。奥田さん、とても素敵でわかりやすいレポートをありがとうございます!
ここまで見事にまとめて頂いて、ファシリテーター一同、感激しています。

>知れば、知るほど、経営戦略って面白い。アイデアを洗練させてカタチにしていく過程はこんなにも複雑でいて楽しいのか、競合と勝負すべき要素、しない要素を見極める駆け引きって驚くほどワクワクするな、ということにワークを通して気づかされています。

とても嬉しいひとことです(涙が出そうです)。インタビューも、Day4以降もまだまだ大変な日が続きますが、少しでも皆さんの学びと実践に繋がれば幸いです。引き続きどうぞよろしくお願い致します!

今橋 珠希
2020.05.24

丁寧にまとめてくださってありがとうございます!!大学の座学の授業では習わないようなことが学べてとてもいい機会ですね☺️また違う班の意見を聞いたりすることで、自分たちのソリューションの悪いところなども客観視できるようになってきたように感じます!残り4日頑張りましょう

鷺坂 美怜
2020.05.24

奥田さん、ありがとうございます!
第三回目では私自身も煮詰まり滞っていたよアイデアが、ビジネスモデル囲碁や、ビジネスモデル図解で可視化して考えることで発想の転換ができ、とても面白かったです。
引き続き一緒に頑張っていきましょう‼︎

岩尾俊兵
2020.05.24

奥田さん、ありがとうございます。
Pandoでのまとめ方がとても上手です。頑張り屋の奥田さんの性格が良く出ています。

>知れば、知るほど、経営戦略って面白い。アイデアを洗練させてカタチにしていく過程はこんなにも複雑でいて楽しいのか、競合と勝負すべき要素、しない要素を見極める駆け引きって驚くほどワクワクするな、ということにワークを通して気づかされています
→そう思っていただけると教育者(?)研究者(?)冥利につきます。私のテーマは「遊びを通して気づく社会科学」で、ビジネスモデル囲碁もそのために開発したものです。

今後も岩尾ゼミの活動を発信していきましょう!

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