焼き〇〇と〇〇焼き

最近ちょっと面白いと思った話を書きます。

一般に、焼き〇〇は〇〇が焼かれたものを表すのに対して、〇〇焼きは焼き方を表すらしいです。


たしかに
焼き芋、焼き栗、焼肉…などは、焼かれた芋、栗、肉…などであり、
西京焼き、炭火焼き、有田焼…などはその焼き方を表しています。
だから、「石焼き芋」は「芋焼き石」にはなり得ないし、「目玉焼き」は目玉を焼いたものではない。

では、「どら焼き」はどうなるのだろう?
「どら焼き」といえば焼き方ではなく、普通は円盤状の生地に餡子がはさまった特定の和菓子を指します。

これは例外…でしょうか?

たぶん、そうではありません。
どら焼きの由来は諸説あるそうだが、最も有力なのは「どら焼きの『どら』は楽器の『銅鑼』に由来している」というもの。
つまり「銅鑼」の形に焼かれたもの、それがどら焼きなのです。
中身はあんこでもマヨネーズでもチョコレートでもなんでもよく、あの形状であることが「どら焼き」と呼ばれるための必要十分条件なのです。

考えてみれば、「鯛焼き」も「どら焼き」と同じ境遇ですが、鯛焼き屋さんに行けば抹茶餡やカスタード、さらにはご飯系までいろいろな中身がありますね

「たこ焼き」も、あの特定の食べ物を指しているというわけではなく、たこ焼き状に焼いてある食べ物全般を指すということになります。

だから「〇〇焼き」と「焼き〇〇」の使い分けはシステマティックに、徹底的になされているのです。


……でもやっぱり、「どら焼き」と言ったらズバッとあんこのはさまった物を指すし、「たこ焼き」と言ったらタコの入った丸い食べ物を指すような気がします。これはきっと長い間の慣習なのでしょう。

私は例外を作るのが嫌いなのでこれからはたこ焼き、どら焼きと言ったらその形に焼かれた物というもっと広い概念を表すと考えようと思いますが、日本語の合理性よりも慣習を優先させて、これらを固有名詞のように考えるのもありでしょう。