宇宙開発団体で何を学んだのか。

「趣味は宇宙開発」

みなさん、この言葉をご存知でしょうか。

これは、リーマンサットという宇宙開発団体のスローガンです。
私は、今年この団体を立ち上げる前からリーマンサットに属し、人工衛星開発を行ってきました。

そして、ここでの経験が当団体の設立という大きな挑戦へと後押ししてくれました。
今回の記事では、リーマンサットに属して感じた三つの経験をお話しようと思います。




① 大人たちが夢を語り合う

リーマンサットの「リーマン」という部分は、サラリーマンからとった物です。
その名の通りこの団体の大半は社会に出た大人の方々が占めます。
学生は、少なくはないですがやはり多くの大人の中でちっぽけな学生という印象を受けます。
入る前は、すごく緊張していました。大人たちの中で学生が持つ少ない知識は役に立つのだろうか。未熟さが故に怒られたりしないだろうか。
様々な不安がありましたが、そこで目にしたものは「まるで少年たちの世界」でした。

そもそも宇宙開発というのは、未知のものを冒険するような楽しさや難しさがあります。趣味の団体として様々なルーツの方々が多種多様な知恵を使いアイデアを出しながら宇宙を開拓しています。
ある意味でなんでもありの宇宙、そんな場所でこんなことやあんなことをしたい。僕たちよりも全然歳を重ねた大人たちが、夢を、野望を語り合う。そんな空間が僕にとっては未知の体験で面白かったのです。

ただ、夢を語るだけではただの少年です。リーマンたちの凄いところはそこからアイデアを本物に作り上げてしまうところです。平日は様々な業種で活躍するサラリーマンたち。社会の中で獲得した本物の経験をいろんな方面から生かしていく。そんな推進力だらけの活動が、趣味の宇宙開発を可能にさせています。


② 町工場との出会い


私たちの周りで活躍する「物」たちは、多くの人の努力と想いが噛み合い完成されています。

例えば、車は最終的に私たちの下に届けるのはトヨタや日産など自動車製造メーカーが担っています。しかし、そのような企業が、鉄を熱く溶かし型をとって何万もの部品を作って組み立てているわけではありません。

自動車のエンジンを例にしてみると、自動車→エンジン→エンジンに使われる部品→部品の元になる材料、といった風に部品レベルで細かくすることができます。

特に日本のものづくりは、この部品レベルでの完成度が非常に高いとされています。さらに、それを組み上げる技術があって、世界に名を残す自動車が生まれる訳です。部品レベルで細かい技術を持った職人は、実は私たちの周りにある小さな鉄工所で作られていたりします。

そんな職人がいる町工場に出会ったのは、リーマンサットの活動の中でした。町工場の中は、大きな機会がゴロゴロとおかれ鉄の屑が散乱している、ある意味ものづくりを存分に感じる場所でした。また、そこで働く職人の方と話す時も、ものづくりに対する熱い想いを感じました。その想いは大手メーカーで働く技術者よりもはるかに強いと感じた記憶があります。

日本の技術は、昔から世界で称賛されるほどの誇れるレベルです。ただ、僕たちが物を作るメーカーとして知っているのは、いわゆる有名な大手企業です。「made in Japan」を支え洗練させているのは私たちの身近にいる町工場の職人さんが持つ熱い想いなのかもしれません。

町工場との出会いは、僕の中で「ものづくり」を考えさせられる経験でした。また、学生の内に「ものづくりに対する熱い想い」を経験することは、私たちが将来ものづくりをする中でとても役に立つと思います。

私たちは物作りの未来に希望を持ち、このような町工場から生まれる熱い思いをしっかりと認識し、つなげていかなければならないと感じました。



③ 勉強する姿勢

リーマンサットプロジェクトでは、人工衛星やロケット、ローバーなどたくさんの分野で宇宙開発に挑戦しています。

それぞれのサラリーマンがオフィスでは全く宇宙に関係ないお仕事をし、土日は宇宙開発を行う。そんな趣味の宇宙開発を可能にしているのは、一人一人の学ぼうとする姿勢だと感じます。

私たち学生は、将来やることが明確に決まっていない場合が多いでしょう。
だからこそ学ぼうと毎日講義を受け、単位という名誉のある経験を手にして、挑戦する分野を定めていく。
それが学生の普通であり、逆に大人達は学ぶことよりそれを活かすことに専念する。そんなイメージを持っていました。

しかし、ここのサラリーマンの方々は新しい分野でも構わず、学ぼうという姿勢を貫きそれそすぐさま活かそうとする姿に驚きました。自分が未熟ということは関係なく、学んだことをすぐに自信に作り替えて行動に移していく。これは私たち学生の足りない点ではないでしょうか。

もちろん、社会を経験したことのない学生は、今学んでいることを社会でどう応用するのか見当もつきません。
だからこそ、学びを自信に変えることが難しいのは当然です。

アカデミックな世界では、学ぶことが本質であり、それを活かす経験にはあまりベクトルが向きません。
社会に本物と認められ、その責任と重圧を背負って何かを達成していく経験は、確かな自信に結びつきます。
私たち、R-SECはこのような本物の経験を創出し、確かな自信を獲得して社会に出る。そんな団体でありたいと思います。



上記で挙げた3項の他にも、大人に囲まれた衛星開発で感じるものがたくさんありました。

また、私たち学生の夢も我が身のように応援してくれる、それがリーマンサットの大人たちです。私たち学生が、何か熱い思いをしっかり伝え、形にしようと努力する。その姿勢を応援してくれる大人が実はたくさんいる。そんな瞬間に気づくことができました。

宇宙開発は、莫大な費用、時間、労力を費やします。ただ、宇宙を目指していくロマンと得られる経験は他のものづくりと大きく違います。

だからこそ、しっかりとした目標を立て、学生の将来に向かって活動していく1つの組織を2020年に始動させました。

学生の内輪での活動にとらわれず、社会への矢印を伸ばし続け、応援されながらその責任で成長していく。そんな経験を作っていくのが私たちの目標です。


関連記事