育成とは

育成とは、基礎を伸ばすとは 
 育成とは基礎を模倣することと,個人の特性を伸ばすことからなる.基礎とは,言語能力(伝える力,語彙力,言語表現力,コミュニケーション能力),心体能力(筋力,レジリエンス,グリット),知能(論理的思考力,情報を加工・応用する力,必要な情報を取る力),人間性(徳,道徳心,相手の立場にたって考える力,傾聴と共感,倫理観),リーダーシップからなる.特性とは,基礎の中でも突出したもの,例えば美的能力,身体能力などである.これらを伸ばすためには模倣と,個人の特性を伸ばすことの2つの段階がある.模倣とは,教科書から得た学びや知識を自己に取り組むモノからの模倣と,他者との関わりの中から得られた学びや知識,経験を自己に取り組む人からの模倣の2種類がある.つまり,人間の育成は一定水準までは誰かを,何かを模倣することで成り立つ.「水平化の時代である」と嘆いたキルケゴールや,「学校は工場である」とツイートした小学校教師の言葉からあるように,教育や育成に一定の凡庸さは認めなければならない.教育基本法第一章第一条で「教育は,人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心 身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」とされている.このように文科省としては,その個人だけが持つ強みや特徴を最大限開花させることが教育の目的としているとのことだが,個人の特徴の最大限発揮は一定の基礎があるからこそ開花するはずである.繰り返すが,基礎の育成は模倣によって為される.バイトの新人はバイトの先輩を模倣である場合が多い.

特性を伸ばすとは
 では,特性を伸ばすとは何を指すのか.これは程度の問題であることが多い.天才とバカは紙一重というように,行き過ぎた知能,美的センス,パーソナリティは誰にも理解されず評価されない.特性が評価されるか,価値を認められるかどうかは環境に依存する.美的センスがどれだけあっても,それは理系の高専ではあまり評価されない.結論から言うと,特性を伸ばすのに一般化されたロジックやフローはない.なぜなら,特性とはその個人のもつ独自的なものであるからであり,他者はそれを扱えないからだ.では,特性を伸ばすことが出来ないのかというとそうではない.特性は環境に依存する.逆に言えば我々はその特性が評価される環境を作ればいいのである.我々が出来ることは具体的には二つだけだ.一つはその特性が価値あるものだと当人に認識してもらうこと.二つはその特性を評価することだ.

主体性とは
 基礎と特性の基礎概念として主体性と人間性がある.主体性とは自分自身を裏切らないように自分の軸にしたがって考え,選択し,行動することである.なぜなら,優秀な人は考えること,人と話すこと,リーダーシップを取ることという行為を取ることが優秀だからだ.これは陽明学の知行合一「知識をつけることは行動することの始まりであり,行動することはつけた知識を完成させることである.行わなければ知っているとはいえない.知っていても行わないのはまだ知らないのと同じである.知って,行ってこそ,本当の知恵,真知である.」に基づく.つまり,積極的実践が出来ない限りその人は優秀ではない.どれだけ基礎が整っており,特性が伸びていようと主体性がなければそれは宝の持ち腐れである.STUDY FOR TWOだけに限らず社会で活躍するには,尊敬を受けるには行動しなければならない.我々は考える勇気を,人と接触する勇気を,人の前に立つ勇気を持たなければならない.では積極的実践を行うには何をすればいいのか.求められるのは自分の軸を持つことである.達成したいと思える明確な目標と目標達成のための強力な願望を持つことである.自分は何を基準に物事を判断しているのか,何が出来るのか,何を達成したいのか,何を避けたいのか.これらを明確にし,この軸に忠実に生きることで人は主体性を持つことが出来る.なぜなら,これらの軸は自身の過去の行動から一貫しているものがほとんどであるとともに,これらの軸に反する行動は自己の中で矛盾を呼びおこす以上忌避されるものであるからだ.つまり,主体性とは自分自身を裏切らないように自分の軸にしたがって考え,選択し,行動することである.

主体性の基礎原則
 そして,主体性を身に着けるには事前のマインドセット,原則の定立が求められる.ここでの原則とは,自己責任の原則,プラス発言の原則である.自己責任の原則とは,物事がうまくいかないのは他者や環境に問題があるのではなく,自分に問題があると考え,自ら行動変容を起していくことである.他者責任を我々は自己防衛本能から行いがちであるが,他者責任である限り,自身の成長はない.成長するには自分が変わらなければならない.自身のコントロール範囲は自分自身と未来の自分であり,コントロール範囲外のものは過去の自分と他者である.次にプラス発言の原則であるが,これは反射的,感情的に発言をするのではなく,どうすればプラスの方向性に物事が進むかを考えたうえでの発言をすることである.たとえば,教科書回収に失敗したと後輩が言ってきたときに,「なんで失敗したんだ」と聞くのではなく「どうすれば上手くいくのか」と前向きに発言することである.他にも「忙しい」を「生活が充実してるね」,「疲れた」を「今日も努力できた」などがある.人間は自身が使う言葉と将来に対するイメージ通りに変化する生き物である.疲れたといっていると本当に疲れるし,笑っていると楽しくなるのは誰もが知っているところであろう.Legaseedの近藤社長や,アチーブメントの青木社長もこのことは言っていることから,成長にはプラス発言の原則は不可欠である.畢竟,主体性とは自分自身を裏切らないように自分の軸にしたがって考え,選択し,行動することであり,主体性を定着させる原則として,自己責任の原則とプラス発言の原則が求められる.
    
人間性とは
 人間性とは,人間性とは,ロスの一応の義務「誠実/無危害/正義/自己研鑽/善行/感謝/補償」と挨拶,返事である.なぜこれらが大事かというと人財育成とは人を育てることであり,それによって望ましくない人間性を兼ね備えた人間を育ててはいけないからである.人間性の定義は千差万別であり,難しいが,ここではロスの一応の義務を採用した.理由としては,倫理学の間である程度ベースとなる主張であり,ある程度自明であるからである.
 育成とは基礎の模倣と個人の特性を伸ばすことであり,その基礎となるのは主体性と人間性である.


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