東京スカイツリーや両国国技館などがある墨田区は、下町情緒溢れた江戸時代の伝統や文化が根付き、職人と江戸っ子のまちとして知られている。その一方で、関東大震災や戦災の被災を免れた壊れやすく燃えやすい危険性の高い木造密集市街地が拡がっており、30年以上に渡り、改善・整備が行われてきた。しかし、依然として墨田区北部では危険な木造密集市街地が残っているのが現状である。改善・整備が進まない原因として、高齢化による建替え意識の低下や権利者問題などがある。今後木造密集市街地改善していくためには、建築物の建替えや道路の拡幅などのハード面の対策のみでなく、地域住民の防災意識の向上や専門家間の連携、地域のまちづくり活動などのソフト面の対策が重要となるといえる。そこで、防災を考えたまちづくりや地域の防災意識を向上させる取り組みが必要と考えられるが、まちには防災上の課題以外にも多種多様な課題が存在するため、「防災だけ」を考えたまちづくりでは意味がない。重要となるのは総合的にまちづくりを考えたうえで「防災も」含めた「防災もまちづくり」である。では、「防災もまちづくり」とは何か。「防災もまちづくり」とはまちに存在する①問題や課題、②文化や伝統の保護、③住民の年齢や身体的特徴などの多様性に総合的に対応しつつ、地域共通課題である「防災も」含めたまちづくりである。
では、今後「防災もまちづくり」を木造密集市街地でどのように行うべきか?
本学生プロジェクトでは多種多様な課題解決には他業種・他分野の壁を越えた様々な連携が必要になると考えている。しかし、縦割り行政に代表されるように大人は他分野とのつながりを使いこなせていないというのが現状で、分野の壁を越えた課題解決はなかなか進んでいないといえる。その原因の一つとして他業種・他分野間でお互いを理解し合えていない点が挙げられる。つまり、お互い理解し合える環境を整えることが重要といえる。その一方、大人は学生などには積極的に協力してくれるという側面もあり、現在もこの地域で学生と活動を行っていきたいという専門家から依頼を受けている。そこで、この地域をつなぐ役割を学生が担い、「防災」という地域の共通課題をきっかけに他業種・他分野同士がつながり、お互いを理解し協力できる環境を整え、多彩な専門家同士のネットワークを構築することが重要である。本学生プロジェクトでは最終的に「学生がいなくても地域がつながり続ける」ことを目標に掲げ、活動を行っている。