麺食が創業時から守り続ける。こだわり続ける「手作り」の1杯への思い

1988年の創業から32年。歴史ある麺食を二代目として率いている中原誠社長のインタビュー。前編では、中原社長が麺食に入社するまでの経緯と当時の思い、麺食がずっと大切にしてきたことや、現在の課題をお話しいただきました。麺食での活動を通して中原代表が実現したいこととは。

当初のキャリアデザインに「麺食入社」は無かった

—麺食に入社する前は会社をどのように見ていましたか?

「株式会社麺食」は父の作った会社なので、父の幻影の先にこの会社が見えるんですよ。
 父は仕事ばかりで家に帰ってこない人でしたから、当時はとにかく父が大嫌いで、継ぐ気もありませんでした。

ただ、お店には頻繁に行っていましたね。ラーメンはおいしいし、お店も比較的きれいだし、たくさんのお客さまに来ていただいている。今では珍しくありませんが、麦茶を出していたり、「すみませ〜ん」と声をかけなくてもスタッフが来てくれたり、やることはやっていると思っていました。仕事は尊敬できるけど、親としては絶対無理という感じでしたね(笑)

—複雑な感情を抱いていながら、どうして麺食に入社されたのですか?

母の葬式での父親のうろたえぶりを見ていて、助けるべき時が来るのだろうな、とは思っていました。
とはいえ、自分で飲食業をやるという目標があったのですぐに入社はせず、28歳の時に別の外食チェーンに入社しました。それからしばらく経って、いよいよ麺食がガタガタしているという状況で「やるしかいない」と思い、入社を決めました。

最初来た頃の麺食は、とにかく数字に弱かった。経営状況は悪化しているのに誰もデータを管理していないんです。それから店長会議も無くて。「2~3時間も座って会議してるなら、店の床磨いとけ!」って考えの代表でしたので(笑)
そういったことを一つ一つ地道に取り組んで、徐々に店に馴染んでいったという感じですね。

「ラーメン屋」を卒業して「ラーメン屋さん」になろう

—創業から現在まで、麺食に受け継がれていることを教えてください。

ずっと守っているのは、「手作り」と「できたてをご提供すること」です。

 外食企業は50店舗を超えるチェーンになると、工場で作ったものをお店に届けて店内で簡単な加工をして出すことが多いのですが、僕らは、今もチャーシューやスープをお店で作っています。やはり料理はできたてが一番おいしいですよね。それを、いかに早く、気持ちを込めて作って、温かいうちに召し上がっていただくか。そこは会長の時代からずっと大切にしていますし、これからも守っていかなければならないと考えています。

 ただ、手作りですから、どうしても味が“ブレる”。僕はそれがダメなことだとは思っていません。麺食では、入社したてのスタッフに、ご両親への手紙を手書きで書かせるのですが、「手書きとパソコンを使った手紙では、どちらが相手に気持ちが伝わると思う?」と聞くと、全員が「手書き」と答えます。料理もまったく同じです。そもそも料理は“ブレる”ものなので、その中でいかにおいしいものを作るかが大切。手作りで温かいラーメンを提供することが、僕らの存在意義と言っても過言ではありません。 

—逆に変えていくべきこと、課題はありますか?

山のようにありますが、そのひとつが「ラーメン屋を卒業しよう」というもの。

麺食のルーツである坂内食堂創業者の坂内新吾さんも「私は『ラーメン屋さん』と呼ばれたい。『おい、ラーメン屋』というのは嫌だ」と、よく仰っていました。これは、職業的・社会的地位についての話ですね。
ラーメンって、みんな大好きなわりに「ラーメン屋さん」とは呼んでくれないんですよね。その理由は、もちろんラーメン屋の内部にもあります。待遇が悪いとか、給料が安いとか……。

僕たちはそこを卒業して「ラーメン屋さん」と呼ばれるようになりたいと考えています。

—「ラーメン屋さん」に向けての取り組みはありますか?

それだけが目的ではありませんが、アメリカ出店は地位向上を目指した取り組みのひとつです。
2014年に海外一号店としてロサンゼルスに出店しましたが、アメリカでたくさんのお客さまが、麺食のラーメンを求めて並んでくださっていることを知れば、日本で頑張っているスタッフの家族からも「お父さんのお店ってすごいね」と言ってもらえる。そんなことの積み重ねが一人ひとりの意識を変え、「ラーメン屋さん」に近づけるのではないかなと思っています。

日本のご飯は本当に、美味しいんです。″食”は日本が世界に誇れるコンテンツですから、どんどん海外に出していくべきなんです。社員も入りたてのアルバイトも、それを意識して行動することで初めて「ラーメン屋さん」になれるし、ラーメン業界、果ては外食業全体が、学生さんたちが働きたいと思う業界になっていったらいいですよね。

おいしいものを食べてもらいたい、ただそれだけ

-では、中原社長を突き動かす原動力とは?

とても単純です。
「このラーメンはおいしいから、みんなに食べてもらいたい!」
「これだったら絶対喜んでもらえるから、もっと増やしていこう!」
 という、すごく単純な気持ちが原動力です。

 僕は昔から食べ物や料理が好きで、調理師免許も持っているんです。最近はほぼ作りませんが、料理をして抜群においしいものができると誰かに食べさせたくなりますよね。その感覚が膨大になっているだけで。

「どうしてお店を増やすんですか?」「どうして会社を大きくするんですか?」と聞かれることがありますが、会社を大きくして自分の給料を上げたい、地位を高めたいとは思っていません。

根底には、幼い頃の体験があるような気がしますね。父によくファミリーレストランや新しくできたお店に連れて行ってもらって、とにかく楽しかった。大人に混じって、子供はあまり食べないような珍しいものを食べたり、大人に構ってもらったり(笑)。その体験によって飲食店は楽しくて、人を元気にしてくれる場所というイメージが刷り込まれたのかもしれません。

-麺食での活動を通して実現したいことを教えてください。

麺食の理念である“食を通じた気持ちの温もりを伝えること”と同時に、大切に守り続けてきたものとして、坂内食堂さんの絵の理念があります。

麺食には海外のスタッフが多くいますが、「こういうお店を目指しているんだ」と、「こういう温かさを届けたいんだ」と。絵に込められたメッセージは言葉を超えて伝えられるので、外国人スタッフには絵で理念を伝えています。
忙しく働いて疲れてくると、お客様にとっての大切な「1杯」が、一日のうちの「1/400杯」になってしまいます。そんな時、この絵が「この人たちと同じような店を作れているか?」と皆に同じ視点を与えてくれます。

 東日本大震災をきっかけに、何か力になれればと被災地でラーメンの炊き出しを行いましたが、この活動によって”食を通じた気持ちの温もり”を一番もらったのは僕たちでした。ラーメンを届けたことをきっかけに、現地の方のお宅に上げていただき、お茶をご馳走してもらって、色んなお話を聞かせてもらって…。とても温かい経験をさせていただきました。

 この温もりが一番重要であり、この温もりをお店で届けることが僕たちの使命です。
 これからも一人でも多くのお客様へ温もりを届けられるよう、一つでも多くの店舗を展開していきたいと思っています。

みやい
2021.03.23

杉原さん、中原さん

お久しぶりです!!
今日、出先の戸塚に麺食の店舗があったので行ってきました!!
店員の方に麦茶など気にかけていただき、とても助かりました。ラーメンも美味しくいただきました。
ありがとうございます(^^)

橋本 優衣
2021.01.19

学生NGOEST橋本優衣と申します。
その節は、お心のこもったお品をいただき、誠にありがとうございました。本来ならば早急にお礼申し上げるところ、遅くなりまして大変申し訳ございません。
ビジョナリーコンテストでの杉原様のお話や中原様の記事を読み、お店のこだわりや、働く上で大切なことを学ぶことができました。
本当にありがとうございました。

さえ
2020.12.29

お世話になっております。学生団体ONELIFE金田紗英と申します!
この度はラーメン無料券をご提供してくださり、本当にありがとうございました。
杉原様の記事拝見いたしました。
わたしは居酒屋でアルバイトをしていますが、「お客様の大切な一杯が、1日のうちの1/400になってしまう」という文を読んでハッとさせられました。
忙しい中でも「思いやる」「もてなす」ことができている!と100%胸を張って言えるように私も頑張りたいと思います!!!

学生団体ONELIFEを今後ともよろしくお願いいたします。
美味しいラーメンをONELIFEの仲間と頂いてきます!
この度は本当にありがとうございました!!!
学生団体ONELIFE 金田紗英

あかり
2020.12.23

Pumpit 5thの中村朱里です。
この度は喜多方ラーメンを送っていただき、ありがとうございます。
私はラーメンが本当に好きで、よく色々なお店に行きますが、お店の想いやこだわりを実際に知ったのは初めてでした。今回、様々な想いを知ってからラーメンをいただきましたが、味や見た目などといった簡単に見てとれるもの以上に、想いが詰まった温かいラーメンであることが感じられました。
私も、人やモノの温かさを伝えられる人になりたいと思いました。今は団体で行っているクラウドファンディングを通して、私たち団体の温かい想いを伝えていきます。
本当にありがとうございました。

本田 遼
2020.12.22

Pumpit 5thの本田遼です。
先日のビジョナリーコンテストではお世話になりました。
最近は就職活動ではインターンで徹夜続き、休日にもクラウドファンディングでコンビニ弁当やカップ麺など食を蔑ろにする時が多くありました。
その中で御社から頂いたラーメンをいただいた際には、スープや麺、チャーシューなど全てがここ最近に食べたものの中で一番美味しかったです。手軽だけど心のこもったラーメンをいただき、疲れが吹き飛ぶようでした。いただいたご恩を忘れずに、現在団体として行っているクラウドファンディングを絶対成功させたいと思います。
ありがとうございました。

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