香川の伝統工芸品 讃岐提灯にかけるTERASUの思いとは

室町時代から続く香川県の伝統工芸品、「讃岐提灯」をご存知でしょうか?

讃岐提灯は、室町時代から香川県に根づいている伝統工芸品です。

讃岐提灯ならではの昔ながらの温もりのある灯りを提供してくれます。

しかし、そんな伝統工芸が直面しているのが後継者不足問題。伝統を未来に紡ぐ職人の減少に伴い、伝統工芸品の生産も年々低迷しているといいます。日本文化である伝統工芸品を守り、後世に伝えていくには、より多くの人々にその存在を知ってもらうことが必要不可欠です。

今回インタビューを受けていただいた「香川大学経済学部 学生チャレンジプロジェクトTERASU」は、そんな1000年以上の歴史を持つ伝統工芸品 讃岐提灯の魅力を現代に広め、後世に伝える活動をされています。

TERASU

私たちTERASUは、香川大学の学生チャレンジプロジェクトの一つです。2020年度で5年目を迎え、現在1~3回生合わせて20名で活動しています。伝統工芸である讃岐提灯を広めるためにイベントを開催したり情報を発信したりしています。「TERASU」の名前は「讃岐提灯で照らす」と「香川の魅力を照らす」の2つを掛け合わせています。

今回は讃岐提灯を通して、若い学生が伝統工芸品と向き合うだけではなく、さらに新しい価値を生み出そうと日々奮闘する、TERASUの思いや讃岐提灯の魅力に迫ります。

インタビューを受けていただいたのはこちらの3名です。

代表:髙村朝香(タカムラアサカ)さん 3年生

副代表:森野あゆみ(モリノアユミ)さん 3年生


次期代表河本栞里(カワモトシオリ)さん 2年生


1000年以上の歴史を誇る讃岐提灯の魅力

――讃岐提灯の歴史を教えてください。

髙村 香川県の伝統工芸品である讃岐提灯は、四国のお遍路さんの際に使われていたのが始まりです。その当時から現在までずっと布と竹で作られており、1000年以上の歴史があります。

今は香川で唯一、三好提灯店さんが一子相伝で技術を継承しています。TERASUも三好提灯さんから作り方や歴史などを教えてもらい活動をしています。

森野 提灯は丸いイメージがありますが、讃岐提灯にはいろいろな種類があるんです。三好提灯店さんが作られているものには、長方形や動物の形の提灯もあります。

髙村 龍の形をした大きい提灯も作られていて、神社に奉納したり、天皇へ献上されたりもしているんですよ。

森野 TERASUが取り扱っているのは、讃岐提灯の中でも手軽に取り組める「折提灯」です。折提灯は竹と布で作られており、柔軟性があります。


――讃岐提灯のどのようなところに惹かれましたか?

髙村 讃岐提灯の一番の魅力は、暖かく美しい光です。TERASUは元々、屋島の夕夜景と提灯を一緒に楽しめる「提灯カフェ」から始まったのですが、私自身、提灯カフェで夕夜景と提灯を一緒に見たときの美しさに心を奪われました。

また、提灯を知るにつれて、伝統工芸品でありながら想像より簡単に作れる点にも魅力を感じています。

森野 私も讃岐提灯の綺麗さが一番の魅力だと思います。

伝統工芸品と聞くと、私達の世代から遠いものと思っていたのですが、明かりの綺麗さを見て現代にも通ずるものがあると感じ、伝統工芸品に対する印象が変わったんです。このように伝統工芸品のイメージを変えてくれることも魅力だと思います。

河本 私もお二方と同じで、綺麗さが讃岐提灯の一番の魅力だと思います。

写真で見たときとイベントに参加して生で見たときとでは、綺麗さが全く違いました。

TERASUについて

――TERASUはどのようなきっかけで創設されたのですか?

髙村 TERASUは、香川大学と高松市が連携して地域を活性化させるために立ち上げたプロジェクトです。最初のイベントは、屋島の山頂で提灯カフェを開催しました。

屋島に埋もれている魅力を探したところ、屋島の夕夜景を見つけて。その夕夜景と讃岐提灯が合うと思い、この2つを組み合わせることになりました。さらに屋島の夕夜景と提灯にカフェもプラスすることになり屋島山頂提灯カフェが生まれました。

それ以降、他にも讃岐提灯を扱ったプロジェクトが生まれ、 屋島の活性化が目的で始まりましたが、現在は香川全体に讃岐提灯を広めていく活動を行っています。

“TERASU“という名前は、「讃岐提灯で照らす」と「香川の魅力を照らす」の2つをかけてつけました。

――皆さんはなぜTERASUに入られたのですか?

髙村 私は先輩に憧れてTERASUに入りました。

普段生活をしていて提灯に触れる機会は夏祭りぐらいなので、あまり親しみがなかったのですが、「讃岐提灯を扱っているプロジェクトってどんな活動なんだろう?」と気になりお話を聞きに行ったんです。すると先輩たちが楽しく活動されていて、私もこのプロジェクトに参加したいと思い入ることを決めました。

森野 私は入部を迷っていて3年生の中で最後に入りました。決め手は提灯の灯りが綺麗だったことと、大学生がイベントなどに参加し、提灯の良さを広めている活動が魅力的だと思ったからです。

河本 私はTERASUの母体である「香川大学経済学部 学生チャレンジプロジェクト」に参加したくてこの大学に入ったんです。入学後いろいろなプロジェクトを見て回る中で、TERASUのお話を聞きに行った際に、見せていただいた讃岐提灯の写真がとても綺麗で。この風景を実際に生で見てみたい、私もこの活動に関わりたいと思い入りました。

――TERASUにはどのようなメンバーが所属していますか?

河本 今までは全員が経済学部で女性だけのプロジェクトだったのですが、今年は1年生の男の子が1人入ってくれました。香川県だけでなく、色々な所から来ている学生がいて、夜間学校の学生も所属しています。

森野 TERASUは提灯作りをするので、物作りが好きな人やデザインに興味を持っている人が多いです。私と河本は苦手ですが……(笑)。

以前は讃岐提灯の綺麗さに惹かれて入る人が多かったのですが、最近は私たちの活動を知り、熱い思いを持って入ってくれる人が多いです。 

――TERASUのビジョンやマインドを教えてください

髙村 「香川の人に地元の魅力を再発見してもらうこと」をビジョンに掲げ活動しています。

心がけているマインドは「まず私たちが楽しむこと」です。

お客様に楽しんでもらうためには、私たち自身が楽しんで活動することが大事だと思っています。また、来てくれたお客様の満足度をどのようにすれば高められるか、日々試行錯誤しながら活動しています。

讃岐提灯を広めるために。TERASUの活動

――TERASUではどのような活動をメインに行っていますか?

髙村 TERASUでは讃岐提灯を広めるために、さまざまな場所で提灯作りのワークショップや展示を開催しています。具体的には、先ほどもお話した屋島の山頂でカフェをする「屋島山頂提灯カフェ」や、そうめん屋さんである龍潜荘とコラボした「龍潜荘のワークショップ」、小学校に出張してワークショップ行う「小学校への出張ワークショップ」という大きなプロジェクトを行っています。

その他にも、高松港付近に位置するレトロな倉庫街「北浜alley」でのイベントなども行いました。

――では、まず屋島山頂提灯カフェについて教えてください。

森野 提灯カフェは4年間続いているイベントで、毎年さまざまな変化をもたしつつ提灯の展示を行っています。また、提灯カフェに来てくれたお客様にワークショップという形で讃岐提灯作り体験と料理を提供しています。

運営は、TERASUのメンバーを中心にゼミや大学の有志の学生で行っています。

毎年多くの方に来ていただいていて、毎年8月と9月の週末を利用し、計8日間開催しています。ちなみに、去年は2,374人の方にご来場いただきました。

髙村 提灯カフェはTERASUの活動の中で一番達成感を感じることができる大イベントです。

少しでも良いものにしようとみんなで意見を出しあうため、衝突することもありますが、準備段階から長い時間を共に過ごすので、メンバーの仲はとても深まります。

思い出に残っているエピソードはありますか?

髙村 去年の展示を「全て自由に作っていいよ」と先輩から任せてもらえたので、何も知らない状態で学びながら、1つの展示を完成させることができたときは達成感を感じました。

また、何十個も何百個も提灯を作らないといけないので、メンバーと22時頃まで準備をしたことは印象に残っています。

その他にも、提灯カフェに来てくれたお客様にメッセージを残してもらうノートを作っているのですが、そこに「1度目は友だちとして、2度目はカップルとして来ることができました」と書いてくれている方がいて。提灯カフェが大事なターニングポイントに携われていることが嬉しかったです。

――龍潜荘のワークショップはどのようなものですか?

森野 龍潜荘は女木島にあるそうめん屋さんなのですが、今年の6月頃に「何か一緒にやりませんか」とお声がけいただいたんです。これまで女木島を拠点にイベントをしたことがほとんどなかったため、ぜひにとコラボが決定しました。

龍潜荘をお借りしてワークショップを開催し、展示品を飾らせていただくプロジェクトを現在一緒に考えているところです。

――小学校への出張ワークショップについて教えてください。

森野 小学校への出張ワークショップでは小学校に訪問をしてワークショップを開催しました。

毎年やりたいことをメンバー一人一人提案していくのですが、去年は「小学生とワークショップをする」という目標になりました。

嬉しいことに偶然、ある小学校の6年生のクラスから「讃岐提灯の授業をしてほしい」と依頼がありました。その学校では総合の時間で、何か新しいことを学ぶという授業があり、たまたまテーマが讃岐提灯だったのだと思いますが……。そのクラスの担任の先生がTERASUのイベントに来てくれ、何か手伝ってくれないかとお声がけいただきました。

河本 去年は、ワークショップに参加した小学生たちから「1年間で讃岐提灯をこれだけ学んだよ」という発表に招待され、私達の活動を通じて讃岐提灯を伝えることができたという実感が持てました。

また、出張ワークショップ2回とオータムフェスティバルというイベントがあり、その際に私たちもワークショップで参加させていただいたのですが、6年生の子たちにも讃岐提灯ついて調べたことを大きいボードに書き上げて展示してくれました。さらに、自分たちが作った提灯の展示もしてもらいました。

総合学習の締めくくりとして、小学生たちが考えた「讃岐提灯と何を組み合わせるか」という発表に、私たちも招待されたのですが、「提灯と香りを組み合わせる」「癒しの提灯作る」「温泉と提灯を組み合わせて和の雰囲気を楽しむ」など、小学生ならではの新しい発想をたくさん聞けたんです。私にとっても大きな学びになりました。

――北浜alleyではどのようなイベントを行ったのですか?

 北浜alley内にある「umie」さんと一緒に「一夜限りの夜カフェ」という展示を行いました。Umieさんはデザインを手がけられているということで、キットを一緒に作ることになりました。

これは、お店でワークショップをさせていただきたいと思い、TERASUからお声がけしたのが始まりです。

また、次回は「salon blue」というカフェでも一緒にイベントをさせていただきます。

――今までの活動の中で思い出に残っていることはありますか?  

森野 団体として思い出に残っていることは、日本1位になったことです。日本ホテル教育センターさんが主催されている学生観光論文コンテストで、提灯カフェの論文が観光庁長官賞という最優秀賞を受賞させていただきました。

TERASUのこれから

――TERASUの展望を教えてください。

河本 私達が今できることは学生の視点で讃岐提灯を広めることだと思うので、TERASUの活動に全力を注いでいます。

髙村 伝統工芸品は、忘れられるとそこで終わってしまいます。

なので、私たちが讃岐提灯の知識を持ち、周りの人に広めていくことが讃岐提灯との関わり方で重要だと感じています。

森野 私たち自身も讃岐提灯を見て感動するので、そういった部分が幻想的で人々に感動を与えるところが魅力的なんじゃないかなと思います。これを広めていきたいです。

――今後はどのような点に力を入れていきたいですか?

森野 昨年まではイベントを中心に活動をしていたのですが、コロナウイルスの影響で今年はガラッと変わってしまったので、今後はオンラインや広報に力を入れて取り組んでいきたいと考えて。

髙村 現在オンラインイベントの開催も検討しているところです。以前夜ヨガの方と一緒に活動させていただいたことがあり、一緒にプロジェクトをしたいと考えています。

河本 昨年の12月に夜ヨガ教室と一緒に活動させていただいたときは、ヨガの教室に来られた生徒さんたちに提灯を作ってもらい、電気を全て消し、提灯の灯りのみでヨガを行う神秘的な体験をしていただきました。

今回は作成したキットを送らせていただき、オンラインで教えながら提灯を作っていただいて、ヨガをしてもらう予定です。

――現在予定している新たな取り組みはありますか?

髙村 私たちのイベントは夜に開催することが多かったのですが、最近は昼に開催する風潮があるので、 昼でも綺麗だと思ってもらえる提灯を開発しています。

河本 三好提灯店さんが、「提灯は時代に合わせて変わっていくものだから、伝統にとらわれず学生のアイデアで色々なことに挑戦してほしい」と応援してくださったので、新しい提灯を作ることに挑戦しています。

灯りを入れなくても色味のある小さい提灯です。この提灯は元から色がついていて、光らなくても綺麗なので昼も夜も楽しんでもらえると思います。

――最後にTERASUの活動を知ってもらいたい方へメッセージをお願いします。

河本 私たちTERASUは、讃岐提灯の魅力を多くの方に知ってもらいたいと思いながら活動しています。ですが、写真で見るのと生で見るのとでは全然違うので、生で見て讃岐提灯の魅力を感じていただきたいです。

現在はコロナウイルスの影響でイベントの開催は少なくなっているのですが、展示やワークショップのイベントが復活傾向にあるので、再開するようになればぜひ来ていただきたいです。


まとめ

讃岐提灯の魅力やメンバーの思いを感じていただけたでしょうか。

さらにTERASUのことを知りたい方は、TERASUのSNSをご覧ください。イベントの情報発信をしているのでぜひフォローして、イベントで讃岐提灯の魅力を体感してみてくださいね!

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TERASU

私たちTERASUは、香川大学の学生チャレンジプロジェクトの一つです。2020年度で5年目を迎え、現在1~3回生合わせて20名で活動しています。伝統工芸である讃岐提灯を広めるためにイベントを開催したり情報を発信したりしています。「TERASU」の名前は「讃岐提灯で照らす」と「香川の魅力を照らす」の2つを掛け合わせています。

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