ホッキョクグマ、2100年までに絶滅の危機

皆さんがご存知の通り、北極圏の氷は温暖化の影響を受け、春に溶け出す時期が早まり秋に再凍結するのが遅くなりつつあります。氷が溶け出すのが早くなれば、それに合わせてホッキョクグマは氷原から陸地に移動しなければならなくなり、狩りのできる期間が短くなります。これは、蓄えられる脂肪の量にも影響することが懸念されます。実際、カナダのハドソン湾では、ホッキョクグマが陸地に移動するのが1週間早まると、体重が10kg軽くなり、体力も落ちてしまうという調査結果が出ています。そして、このまま氷の溶けている期間が長期化していけば、2100年までに絶滅する恐れがあると言われています。
↑現在のホッキョクグマの生息地域。
 以前よりも大幅に狭くなっている。


しかし、それだけではありません。


世界各地で発生するダイオキシン類や農薬などの「残留性有機汚染物質(POPs)」と呼ばれる有害な化学物質は、大気中に拡散し、気流に乗って北極圏に運ばれてきます。また、大都市や工場周辺から流れ込んだ河川の水も、海流と共に流されてきます。結果的に、極地は汚染濃度が発生地域よりも高くなる場合が少なくありません。

わずかな濃度で海水に溶け込んだPOPsは、まず植物プランクトンの体内に入ります。するとそれを食する動物プランクトン、さらにそれを食べる小魚へと少しずつ濃縮されていき、最終的には食物連鎖を通じて徐々に生体濃縮を起こし、生態系の上位にいるホッキョクグマやアザラシなどの動物ほど、高濃度のPOPsにさらされることになります。
また、ノルウェー領のスバールバル諸島のホッキョクグマの血液中から、風に乗って運ばれてきたと思われる高濃度のPCB(ポリ塩化ビフェニール)が検出されました。これは、繁殖に悪影響を受けていると見られ、また、伝染性の病気に効果を発揮する免疫グロブリンGの値が著しく低下していることが調査結果で判明しました。この他にも、北極圏のホッキョクグマからは高レベルの水銀やカドミウムが検出されています。


現在、各地で油田開発に伴う調査が盛んに行われていますが、もし、原油が海洋に漏れ、それがホッキョクグマの体に付着すると、毛皮の断熱性が失われ体温を失い、体力消耗などのダメージを与えてしまいます。
これらの問題を解決するために『残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約』が採択され、日本も2002年に加盟しました。北極圏での環境汚染を食い止めることは、野生動物、そして、グリーンランドやイヌイット集落に住む人々の健康を守るためにも必要不可欠です。


ホッキョクグマを守るためには、氷の海だけでなく、その食料となる他の生き物も守らなくてはなりません。つまり、私たちがホッキョクグマを守ることは、北極圏の自然そのものを保全することにつながります。 

繰り返しになりますが、2100年までに(あと約80年で)ホッキョクグマが絶滅してしまう恐れがあります。もう残された時間はそう長くありません。こうしている間にも、すでに氷の融解は進んでいます。今すぐにでも、社会が一体となって動けば、ホッキョクグマを救う時間はあります。そして、人類を含む地球上の全ての生き物を助けることができます。温暖化によって絶滅の危機にさらされている動物たちを救うために、たくさんの人が行動を起こすことを切に願い、私も自分にできることに取り組んでいきたいと思います。

作成者  :  杉本美音


⭐︎参考文献
https://images.app.goo.gl/ontdAiBUAtZv6TBo9


https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8573/


https://www.bbc.com/japanese/53481987


https://www.google.co.jp/amp/s/www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3565.html

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