"インスタ映え"がもたらしたビジネスモデル構築の複雑化

商品購入の動機に「インスタ映えするから」という、解決したい悩みを伴わないジョブ理論に反した例がある。

インスタ映えという言葉の意図の中には、自己表現の手段・オリジナリティの追求の産物である映える写真やストーリーをフォロワーに共有することで、自分が生活スタイルや趣味に関する情報のキャッチアップが早いことを周りに知らしめ優越感に浸るという行為が大半を占めている。

そして、自分の生活スタイルのスマートさや華やかさをプロデュースするという意図も持っている。

後者は、顧客が第三者からよく思われたい欲求(社会的ジョブ)そのものであるが、前者におけるニーズのメカニズムを考えるとき、どのような切り口で進めていくべきであろうか。


情報共有による優越感の始まりは、おそらく地域ごとにコミュニティが成り立っていた時代に遡るであろう。

ものが少ない当時、人々は互いに情報を共有しながら生活してきた。

各地域には商店があり、生活必需品はそこからでしか調達できない。

やがて商店同士の競争が生まれ、値段や品質に差が生じることになると、人々は実体験をもってそれらの情報を収集し、口コミで人々に話し、共有を図っていた。

この口コミで共有を図った人は、良質な情報を先に知っていたことについて優越感に浸ったに違いない。

このような情報の共有をマクロな視点から捉えれば、「情報収集を積極的に行う人」と「その情報に影響される人」が存在しており、それが今でいう発信側とフォロワーの関係になっていったのではないかと考える。


影響される人に焦点を当てた場合、その人特有の解決したい欲求があるからこそ受ける影響・受けない影響が存在する。

そのためジョブの解決状況を示すニーズのメカニズムを考えるとき、ジョブ→不満→現状対策→現状対策への不満の順番で進めても問題ない。

自分の生活スタイルのスマートさや華やかさをプロデュースするためにインスタ映えを求めている人々についても、社会的ジョブを片付けるために商品を購入していることから、影響を受ける側であることに違いない。

しかし、発信側に焦点を当てた場合はどうであろうか。

発信する人は情報強者としての優越感に浸ることが目的であり、これは各ジョブが示すどの内容に当てはまらない。

タピオカの写真を撮り、消費せずに捨てるといった最近社会問題が示すように、

そもそも商品を得ることで解消する不満がないのである。


この反例はインターネットコミュニティが生んだ、新しい消費構造である。

この解決策を持たない消費構造とうまく向き合うために、負の体験を前提としたビジネスモデルの構築方法を活用する方法はあるのか。

なければどのような軸で考えていくべきか。

もう少し議論を進めてみようと思う。

粟本 邦幸
2020.10.30

横地さん、はじめまして。
Pandoを運営しているクインテットの粟本です。本質的な課題解決に手をのばすということですかね。今後の展開が実に楽しみです。期待しております。

岩尾俊兵
2020.10.30

横地さんの記事、すごく読みやすいです。
まだまだ悩みながら本質を追求していってください!