【インタビュー】災害に備え「今」こそ対策を。JK防災広め隊に学ぶ防災豆知識

今や災害大国と呼ばれる日本で暮らしながら、日頃から「災害」や「防災」を意識して生活している人はどれほどいるでしょうか?

2019年10月にセコム株式会社が実施した「防災に関する意識調査」によると、88.2%の人が「今後、災害の増加や被害が拡大する可能性がある」と回答している一方で、「何らかの防災対策をしている」と答えたのは44%と、半数に満たないのが現状。

毎年といって過言ではないほど震災や豪雨が日本を襲い、大きな被害と悲しみに見舞われているはずなのに、どこか見て見ぬ振りを続ける私たちーー。

そんな人々の防災に対する意識を変えようと活動する高校生団体が、今回ご紹介する「JK防災広め隊」です。

JK防災広め隊

防災を広めることを目的に、イベント開催や情報発信などを行う学生団体です。女子高生(JK)4人で活動しています。

その名のとおり女子高校生4人で活動する彼女たち。防災を広めるために行っている活動や、災害に備え誰でも簡単にできる防災豆知識を伺いました。

幼なじみの4人がJK防災広め隊に入った理由

ーーなぜJK防災広め隊に入ったのですか?もともと防災に興味があったのでしょうか?

[代表 小河 明日香(おがわ あすか)さん]

小河 明日香

JK防災広め隊 代表/副代表

小河 私が団体に入ったのは、先代の代表からお声がけいただいたのがきっかけでした。元々防災に対する意識はそれほど高くなかったのですが、団体に入って初めてきちんと考えるようになって。

防災にしっかり取り組んでいるかどうかで災害時に大きな差が出るため、私たちの活動を通してさまざまな地域の方の防災意識を高め、災害を未然に防いでいければと思っています。

[副代表 西川 葵(にしかわ あおい)さん]

西川 葵

JK防災広め隊 代表/副代表

西川 私は小河さんに誘われてJK防災広め隊に入りました。私も最初は防災に興味がなく、そんな人が入ったら足手まといになるのではと思い、断るつもりだったんですよ。

しかし私の家は、東日本大震災の際なんの対策もしていなかったため、大変な目にあったことを思い出して……。将来大災害が起きることを想定すると、防災についての知識がないまま過ごすことに怖さを感じたんです。防災の知識をつけて広めることで、自分の身を守ると共に、周りの人を守りたいと思い、団体に入ることを決意しました。

[広報 簗瀬 詠子(やなせ えいこ)さん] 

簗瀬 詠子

JK防災広め隊 広報

簗瀬 私も小河さんに誘われたのがきっかけです。正直、防災には全く興味がなかったものの、日本は地震や台風による被害が多いにも関わらず、国による対策が後手に回っていると感じていました。

実際に私の周りを見回してみると、防災に対する知識や関心を持っている人は少なくて。この活動を通じて、自分や周りの大事な人を守れるようになりたいと思っています。

[渉外 横畠 佑泉(よこはた ゆみ)さん]

ゆみ

JK防災広め隊 渉外

横畠 私も全く防災に関心がない状態で小河さんに誘われて。ただ私の親は阪神・淡路大震災を経験していたので、東日本大震災の際、家には防災グッズが揃っていたんです。対策していると、いざというときに大きな差が出ることを実感していました。

だからこそ防災の大切さについて広めたい思い、JK防災広め隊に入りました。

 ――団体に入る前、防災の重要性を感じた出来事はありましたか?

小河 やはり東日本大震災や西日本豪雨、そして昨年の台風19号による被害を目の当たりにしたことでしょうか。改めて災害の怖さを実感する体験でした。

西川 私の中でも、東日本大震災が一番大きいです。当時小学2年生だった私は、学童保育で親の迎えを待っていたのですが、買い物に出かけていた祖母と電話が繋がらず行方不明で……。その記憶が強く残っていて「防災に取り組まなければまずい」という意識がありましたね。

簗瀬 私は東日本大震災と熊本地震。東日本大震災のとき私は母と家にいたのですが、父は霞ヶ関で勤めていたため東神奈川まで歩いて帰ってきていたみたいで。深夜にようやく電話が繋がり、母に叩き起こされ車で父を迎えに行ったことがすごく印象に残っています。父と同じようにスーツを着た人が道いっぱいにズラズラ、ズラズラと歩いている光景を、今でもよく覚えています。

熊本地震は東日本大震災の後だったこともあり、地震の怖さを実感しました。揺れ始めたときにちょうどドラマを見ていたので、熊本地震を思い出すとそのドラマのシーンまでもが目に浮かぶほどです。

横畠 私も東日本大震災ですね。私は震災時、たまたま母と電車に乗っていたんです。電車内はあまり揺れを感じなかったので、大した地震ではないと思っていたのですが、急停車後、全員降車することになり、母の焦りが見て取れました。

私たちは友人の父の車に乗せてもらうことができ無事家まで帰れたのですが、父とはずっと連絡が繋がらず、怖い思いの中カップラーメンを食べた記憶が鮮明に残っています。その後、テレビで津波に飲み込まれる町を見て、初めてこの地震の大きさや怖さを思い知りました。

西川 当時はどのテレビ局でも地震の映像が流れていましたね。この地震で、私の住んでいるマンションにはヒビが入りました。まだ修復していないんですけど……。

他全員 えーっ! 1度耐震検査したほうがいいよ!(笑)
[ツッコミがさすが!!]

 「いつか」ではなく、「今」防災について考える。JK防災広め隊の活動 

――JK防災広め隊ではどのような理念のもと活動されていますか?

西川 私たちJK防災広め隊は、『「いつか」ではなく「今」防災について考える』という理念を掲げ、活動しています。

日本は地震や災害が特に多い国。しかし、災害が起こってもどこか他人事のように考えてしまっていて、災害自体から目を背けている人が非常に多いんです。

そのような現状を変えるべく、より多くの人々が気軽に、そして真剣に「防災」を考えられるよう、社会を巻き込んだ活動に取り組んでいます。

 ――具体的にはどのような活動をされていますか?

小河 メインで行っているのは、SNSを使った防災豆知識や、防災関連のイベント情報などの発信です。そのためには私たち自身が防災についての専門知識を深めなければならないため、積極的に防災イベントにも参加しています。

[JK防災広め隊のFacebookより]

簗瀬 最近ではコロナ禍の中、感染を防ぐためにできることを配信したり……。台風の時期には、豪雨や防風被害から身を守るための情報など、できるだけタイムリーな情報を提供しています。

――情報発信をする際に心がけていることはありますか?

横畠 防災の情報は命に関わる情報なので、間違った情報を伝えないようきちんと情報収集をしてから発信するようにしていますね。 

簗瀬 加えて、津波などのデリケートな話題はあまり出さないよう気をつけています。被災者の方の目に触れることもあるでしょうから。さらに、多くの人に防災への興味を持ってもらえるようクイズ形式で配信したりなどの工夫も行っています。

――「玉川防災大作戦」というイベントを開催されたと伺いましたが、どのようなイベントですか?

横畠 玉川防災大作戦はJK 防災広め隊が初めて開催した、防災の啓発を目的としたイベントです。さまざまな団体様のご協力のもと、防災に関するブース展示や文書展示を行い、総勢109名の方々にご参加いただきました。

開催地である玉川は、大地震が発生した場合、大勢の帰宅困難者が出ると予想されていますし、大雨や台風による多摩川の氾濫・被害の危険がある地域とされています。そこで、高校生という立場から防災について老若男女、全ての方に知ってもらうことが重要だと考えました。

幅広い年代の方にご参加いただけるよう、ブースや展示の内容もこだわったものになっています。例えば、子どもたちには楽しみながら防災を学べる「クイズ体験コーナー」を、大人の方には防災の基礎から応用までしっかり学んでいただける写真や資料の展示コーナーを設け、大勢の皆様に災害の恐ろしさや防災の大切さをお伝えできたのではないかと思います。

 ――開催にあたり大変だったことはありますか?

小河 イベントの盛り上がりや参加のしやすさを考え、夏休み期間に開催したものの、猛暑の影響で集客に苦戦しました。特に、私たちのような高校生の団体は認知度も高くなく、発信力に限界がある中で、子どもから大人までという幅広い層を集めるのは大変でしたね。

西川 その他にも、来場者の方にどのような順番で見ていただくのがベストかを考えながらブースを配置したり、団体ごとに必要な広さを考えたり、初イベントならではの苦労もありました。JK防災広め隊のメンバーは全員通っている高校も違うので、このイベントを通じてメンバー間の連携や情報共有の大切さを学べたと思います。

備えあれば憂いなし!今すぐできる防災・災害対策

――防災初心者がまず取り組むべき対策を教えて下さい。

簗瀬 「防災」と聞くとやることが多く、何から始めればいいのかわからないと思われる方が多いかと思いますが、「備えあれば憂いなし」という言葉のとおり、防災は自分や大切な人の命を守るための行動です。

私たちがまずやるべき対策は、環境を変えることだと考えています。具体的には家の耐久確認と家具の固定。1981年6月1日に建築基準法の改正に伴い、現在の耐震基準が導入されました。そのため、それ以前に建てられた建物は耐震診断を受けることをおすすめしています。

また、家にある重い家具や背の高い家具は、転倒や落下を防ぐため突っ張り棒や簡易ネジなどで固定しておくといいですよ。

横畠 テレビや家具の下に滑り止めを引くのも手軽でおすすめです。

――おすすめの防災グッズはありますか?

小河 防災グッズではないのですが、「東京マグニチュード8.0」という地震の怖さがよく分かるアニメを見ていただきたいですね。東京マグニチュード8.0 公式サイトより引用]

とてもリアリティのある物語で、震災を体験していない方にも、地震は決して予測ができないということを実感していただけるのではないかと。このアニメを見ることで、防災に対する意識向上に繋がると思います。詳しくはJK防災広め隊の Facebookで投稿しているので、そちらもぜひご覧ください。

防災グッズのおすすめは、ウォーターバッグウエットティッシュ

ウォーターバッグは水を溜めておくことができるため、断水対策になります。災害時は水道管の破裂などで、水が止まる可能性が高いんです。通常時は折り畳んで収納できるものもありますので、保管しやすいものを選んでください。

ウエットティッシュは、身体や身の回りの物を清潔に保つためのマストアイテム。

断水時は身体を洗えない可能性が高いうえ、避難所での生活は思うように食事や睡眠が取れないことで、免疫力が下がりやすいんです。そのようなときに、ウエットティッシュがあれば身体や身の回りの物を清潔に保つことができます。防災用のものであれば、未開封で3~5年ほど持つので買い置きしておきましょう。

――誰でも簡単にできる災害対策や防災豆知識を教えて下さい。

西川 停電になった際、懐中電灯やスマートフォンのライトを点灯させ、水を入れたペットボトルを乗せれば、光が拡散されて通常時よりも明るく照らすことができます!

[明るさが格段にアップしました]

簗瀬 どこの家庭にもある食品用ラップが実は万能なんです。食器の上にかけてから食材を乗せれば食器を汚さず済みますし、丸めればスポンジ代わりにもなります。身体に巻けば防寒対策もできますよ。

横畠 災害用伝言ダイヤル(171)は、ぜひ覚えておいてほしいです。災害が発生した際、大勢が一斉に電話を使うため、繋がりにくくなります。そんなときに災害用伝言ダイヤル(177)にかければ、音声による伝言板の役割を果たしてくれるので、家族や大切な人に伝言を残すことができるんです。

基本的に災害が起こったときにしか使えないのですが、お正月や防災週間など限られた日のみ体験利用できるため、ぜひ事前に利用方法を確認してもらえればと思います。

今後の展望とメッセージ

――JK防災広め隊として、これからどのようなことを成し遂げていきたいですか?

西川 今後は、地域の自治体の方々と協力し、若い世代へ防災についての知識を楽しく広めていきたいと思っています。高校生だけではできることが限られてしまうからこそ、防災や災害に精通していらっしゃる方や活動団体様と共に、一人ひとりの意識改革を行うことができるよう、防災の大切さを届けていきたいです。

JK防災広め隊の活動に関心を持ってくださる方がいらっしゃれば、ぜひご連絡をお待ちしております。

――皆さん自身、将来のビジョンはお持ちでしょうか?

小河 私は世界が抱える課題を自ら探し、実際に行動に移せる人になりたいと思っています。

最近では、政治や社会に興味関心がない人が多いとよく耳にしますが、現在の世界情勢や今という激動の時代を間近で見られるのは本当にすごいこと。社会で今起こっていることに常日頃から関心を持ち、自分が社会の一員であることを自覚して生きていきたいです。

西川 私は周囲に人が集まり、良い刺激を与えられる人になりたいです。知り合いに、年代問わず頼られている人がいるのですが、いつも周りから求められる以上のことをしていて。その人の周りでは、常に笑顔が絶えないんです。

私自身、その人と一緒にいることでたくさんの刺激をもらい、常に上を目指すようになりました。その人のように、人から頼られマインドやモチベーションを上げる人になりたいと思っています。

簗瀬 私は部活で部長をやっていたこともあり、リーダーとして人に影響を与えられる人になりたいと思っています。

また、課外活動で長年茶道をたしなんでいることもあり、日本の文化やいいところを海外の方々にもっと知っていただけるような活動がしたいですね。日頃から社会にアンテナを張って、世界で起きていることに関心を持ちながら、世界の人々と関わっていければと考えています。

横畠 JK防災広め隊での活動や部活動の中で、誰かと協力し何かを成し遂げるためには、リーダーシップを持った人がひとりいるだけで、良い方向に進むことを実感しました。だから将来は、自分自身が発信力を持ち、リーダーシップを発揮できるようになりたいと思っています。

また、ひとつのことにこだわっていると、一方からしか物事が見えなくなってしまうため、さまざまな人と関わり、幅広い視点から物事を判断できるようになりたいですね。 

――最後に、皆さんと同世代の学生へメッセージをお願いいたします。

簗瀬 若者の呼びかけは、最も影響力があると思うんです。「私にはどうせできない」と決めつけてしまう人も多いですが、思い立ったらすぐ行動するよう心がけてほしい。そのような若者がもっと増えれば、日本社会はより活性化されると思います。

西川 また、災害を他人事と捉えず、家族と防災について話す時間を設けてもらいたいです。日本は地震大国といわれていますし、いつどこで災害が起きてもおかしくない状況。災害が起こった際の避難場所や連絡手段を家族間で決めておくだけでも、落ち着いて行動できるようになります。

防災は自分を守るのはもちろんのこと、自分の大切な人たちを守ることに繋がるもの。災害が起こってから後悔することのないよう、今できる対策に取り組んでみてください。 


【編集後記】防災は“特別”じゃない、もっともっと身近なもの

JK防災広め隊のインタビューを終えて、ふと頭によぎったのは、「防災ってつまり、風邪予防のために手洗いしたり常備薬を買い置きしておくことと同じじゃない?」ということ。

外出から帰宅すれば当たり前のように手を洗うし、年に何度も風邪を引くわけではないのに、我が家には常備薬が山ほどある。そしてそれを至極当たり前のように繰り返している。

ーー防災だって、それくらい身近でいい。
手を洗うように戸棚にストッパーをつけて、常備薬を買うように防災グッズを買いに行く。それが防災のあり方なのかもしれません。

防災を知ればこのような気づきがあり、気づいたから行動できることがある。JK防災広め隊の活動を通じて、一人でも多くの若者が、自分と大切な人の身を守る術を「今」、身につけてもらえることを願っています。

[防災初心者の私はというと、インタビュー後すぐに防災グッズを購入しました。もちろんウォーターバッグとウエットティッシュも共に!]

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