新型コロナウイルスによる世界的混乱の中、日々暗いニュースが流れる昨今。
日記やブログを通じて、心安らぐ発信とあなたが考えるきっかけを届ける学生団体CORS Project(コースプロジェクト)さんにオンラインインタビューをさせていただきました。
設立した今年の4月から活動のすべてをオンライン上に置き、等身大の言葉で紡ぐメッセージによって、コロナ禍で凍えた人々の心を温める彼ら。そんな活動への思いや目指すビジョンとは。そして、原点となるそれぞれの壮絶なライフヒストリーに迫ります。
今回はメンバー全員、代表小島さんと正村さんと吉田さんに参加していただいております。
小島 瑶平
学生団体CORS Project正村 壮一朗
学生団体CORS Project吉田 幸水
学生団体CORS Project学生団体CORS Projectとは?
ーー団体を立ち上げられたきっかけはなんでしょうか。
小島 正村と話していて、今できるボランティアってないかなと思い。コロナ禍でオフラインの活動が何もできなくなった今、オンラインという手段は使えるだろうと考え、目に触れた人だけでもいいので笑顔にできる活動をしようということでこの団体を立ち上げました。その後、吉田にも声をかけ現在3人で活動しています。
ーー学生団体CORS Projectのビジョンとマインドを教えてください。
小島 ビジョンは『Think For You~あなたのために考える~』です。たった一人でもいいから笑顔にするという意思で、特定分野に留まらず広い分野に対しソーシャルメディアを用いた情報発信という形で関わっていきます。そのために、日々の発信では、クスっと笑ってもらえる内容から、コロナ禍で苦しむ方へできることや守りたい日常、大学で学ぶ意義や文化の重要性などをTwitter、ブログにて発信しています。
誰かを笑顔にできることを自分の頭で考え、日常の実行に生かしていくことがわれわれのマインドです。
ーー学生団体CORS Projectの魅力やりがいはなんでしょうか。
吉田 私たちのブログで触れている社会問題などは、友人や家族と共有しようと思っても、価値観の違いや普段から触れる機会の少なさで噛み合わない節があります。ですが、この団体だと議論を展開できます。自分にとっても普段触れないような事に触れられ、新たな発見がありwin-winなディスカッションになることがやりがいです。
また、ディスカッションから生まれたモノをブログに載せ、皆さんに見てもらうことで好循環が生まれていると感じます。こういう考えの人もいるのだなと見た人に思ってもらえれば、それはもう嬉しいことです。
学生団体CORS Projectでは、様々な社会問題を中心にメンバー間でディスカッションを行っています。議事録はブログに掲載されており、閲覧可能です。
ー学生団体CORS Project 公式ブログ https://ameblo.jp/cors-projec/
学生団体CORS Projectのオンラインに特化した活動
ーー普段の活動はどのようなことを行っているのでしょうか?
小島 新型コロナウイルスの混乱下、大切なモノを失う悲しみや痛ましいニュースが多く飛び込んできます。そんな中、たった一人でもいいから心を安らげ、笑顔にできる発信を活動としています。
活動内容は大きく2つ、ひとつめがTwitterでの日記ツイートです。メンバー3人持ち回りにて毎晩ツイートをしています。
ふたつめは、ディスカッションを週に1回行い、ブログへ議事録をアップしています。
その他の活動としては、週1回のメンバーブログと参加型企画をしています。内容は日記ツイートやディスカッションとは違い、メンバーの自由な発想です。参加型企画は、「今考えるプロジェクト」を行っています。内容は個人の方や学生団体さんサークルさんに「私とは」と「ボランティアとは」の2つのテーマについて考えていただき、それぞれの言葉で表現してもらうものです。
ーーそんな学生団体CORS Projectの強みどこにありますか?
吉田 多くのボランティア団体は、既存の課題を解決することに注力するモノが多いと思います。それは非常に良いことです。けれど、裏を返すとそこしかできないことにもなります。ですが、われわれはディスカッション、ブログで幅広く社会問題をカバーできる強みがあります。
小島 今の時期、既存の学生団体、サークルの方々は、主たる活動よりも新人勧誘が忙しいと思います。その点、新型コロナウイルスの混乱の中で活動期間を定め、笑顔を届けるという理念のもと全力で情報発信にのみ注力できることがわれわれの強みです。
ーー 情報発信で伝えたいこと、感じてもらいたいこととは?
小島 情報発信として「誰かのために」「考えるきっかけを与える」の2つの軸があります。
私たちは新しくできた小さい学生団体なので、影響力は限定的です。だからこそ、確実に見てくれた人を笑顔にして、嬉しい、生きていてよかったなと感じてもらいたい。そして、私たちの発信を通して考えることって楽しいなと感じて欲しいです。
ーー学生団体CORS Projectにはどんなメンバーが集まっていますか?
小島 まずメンバー3人全員が早稲田大学ということが一番大きい枠です。けれど、まずもって自分を突き動かす熱意があります。そんな熱があるからこそ、忙しい中でも各々が責任を持って考えるだけでなく、ちゃんと行動できています。
なので、「内側の情熱」と「外への意思表示・行動」へと結びつけることが絶対にできる3人です。私は誇りに思っています。
そんな3人のライフヒストリーがこの活動の原点
ーーそれぞれのこの活動に繋がる原体験を教えてください。
吉田 私は2つあり、キーワードは『恩返し』です。
ひとつめは、高校時代に友人が設立した株式会社に参加し、被災地訪問や下の世代の子たちに講演会をしたことです。私の出身地である福島県は、東日本大震災を受け、大勢の人が亡くなりました。さらに原発事故が起き特殊な状況になってしまった場所です。被災当時、私は小学4年生でした。それ以降、自分がというよりも同世代全体が、受けた体験への恩返しをしようという意識になったと思います。
ふたつめは、恩返しの中でいろんな人との出会ったことです。それまでの自分は、学校で良い成績を取り、模範生徒でいること、つまり1つのコミュニティ内で完結する評価が「正解」でした。ですが、正解がわからなくなり、大学受験を控えた高校3年生の時には、なぜ大学に行くのかと戸惑ってしまいました。しかし、コミュニティを抜け出し、様々な人からたくさんの刺激を受けて。世界が広がりました。私はその価値観を受け、世の中には基本的に正解がないと考えています。
ですから、社会も1つではなく、一番大きく目立つところ以外にも、色々な小さいコミュニティがあり成り立っていると考えています。これが妄想か現実か今はまだ分からないです。
ですが、一言でいえばそんな正解があるかわからない世の中を支えあって生きていきたいとなり今があると思います。
正村 自分も2つありまして、まずひとつめは、私は出産のときに無呼吸状態で生まれ、母子ともに生死をさまよいました。その時、お医者さんが心肺蘇生をしてくださり今の自分があります。
出産後も2ヶ月間ICUにいて親にはすぐ会えませんでした。また、親は私が健常者として生きることは難しく、支援学校を探すよう告げられたそうです。この話をお母さんが涙ながらに話してくれたのが小学2年生のときでした。そのとき普通に生きていて、とても信じられなかったです。ですが、当時の写真を見たり、助けてくださったお医者さんの元にお礼をしに行き、自分の身に起きたことだと実感しました。
ふたつめは、12歳のときに死を覚悟し人生を振り返ったことです。当時入っていた野球チームの夏合宿で監督チームと小学生で試合をしました。監督たちは大人げなく剛速球ばかり投げてくるので、全然打てずムカついてフルスイングしたんです。そうしたら急に走れないぐらい左脇腹が痛くなって、急遽病院に行くことになりました。触診の結果、ガスなどが溜まっていて応急処置をして家へ帰ったんです。
翌日の夜でした、今でも鮮明に憶えています。電話でおじいちゃんと容態について話をしていたら、急に息が出来なくなり死を覚悟したんです。病院に運ばれる間それまでの12年間を振り返って、自分は何もしないまま死んでしまうのかなと思いました。診断結果は横隔膜に穴が開き、そこから大腸が飛び出て肺を圧迫していたというものでした。それを聞きなぜ今生きていられるのだろうと不思議に思い。これまでも死んでいたかもしれないのに、奇跡の連続で今もこうしていられることを考え、他の人のために何かやりたいと思いました。
それから、特に障碍者の方々のために行動したいという思いが強くなり現在に至ります。例えばですが、自分の親が経営しているスポーツクラブを継いで、バリアフリー化をしていきたいです。
小島 奇遇なんですけど私も2つあります。ちょっと重い話になりますが、ひとつめがセクシャリティの悩み、ふたつめが精神疾患の過去です。
まず、セクシャリティですが、私はいわゆるLGBTではなく、世界中のあらゆる言葉を探しても出てこないようなセクシャリティです。なので、本当に横のつながりも生まれず、カミングアウトも難しい中で生きてきました。自分で気付いたのが10歳のとき、それから母親に人生で初めてカミングアウトしたのが21歳の冬だったので10年間かかっています。さらに社会にカミングアウトをしたのが去年2019年の10月です。なので、本当に一人の時間がすごく長かったです。
もうひとつが、精神疾患です。これはセクシャリティに対する差別であったり、抽象的ですが何度も死を目前とするような体験をせざるを得なくなり、それらが精神疾患に結びつきました。本格的な発症は18歳の2月、大学の合格切符を手にした高校の卒業式直前です。症状を抑えることに精一杯で、キャンパスライフに何も夢が持てなくなりました。体の痺れ、手足の震えや筋肉の痙攣などの症状が「5年間 365日 24時間」止まらなかった。本当に辛くて大学も実質4年間休み、入学してから大学へ通った記憶の方が少ないです。回復の兆しもなく本当に人生諦め休学して復学はあり得るのかと考えていたとき、奇跡的にアドバイスをくださる方と出会い、本当にうまくいき今があります。
また、休学前にはラグビーサークルの素晴らしい仲間が「お前は一生の仲間だから」、 「一生このサークルのメンバーだから」と何度も温かい言葉をかけてくれました。今でも心に残っている言葉としては、「今の小島の状況に対して何か言うべきではないのかもしれない。だってこれによって小島を傷つけてしまっては駄目だから……でもこれだけは言わせて、必ず帰ってきて」です。復学前にもその仲間が、食事に誘ってくれ、そのときにようやく精神疾患の過去もカミングアウトできました。
だから、そのように相手へ思いやりを持ち、あなたのことを見捨てていないと言い続けることで、自分のようなすごく辛い人生を送り自分のことをひた隠しに生きてきた人間でも救ってもらえる。そんな経験があったからこそ、今は自分がやるべきだろうという信念でここまで繋がっています。
ーーコロナ禍に対してそれぞれが感じ、考えていることを教えてください。
吉田 色んなものが見えてきました。今まで見て見ぬふりをしていたそれらから、また目を背けては過ちを繰り返すだけです。なので、しっかり取り組んでいきます。
社会的地位に伴う責任って確実にあると考えていて。ノブレスオブリージュといいますか、果たさなければいけないモノと向き合い行動していかなければと感じています。
正村 文化がなくなってきていることがすごい悲しいですね。自分は乃木坂46が好きなんです。この間「乃木坂46時間TV」という番組があり、バイトや課題などで全部は見れていませんが、アイドルの笑顔を見るだけで自分の励みになりました。アイドルだけでなく、プロ野球などスポーツで選手たちが大活躍しているところを見ると自分も頑張ろうと元気が出ます。そういう文化はなくしてはならない大切な存在だと強く感じています 。
小島 弱い人にやさしい社会であってほしいと思っています。コロナ禍の今言えることは、みんなが頑張っているということです。しかし、弱い立場にある人ほど受けるダメージは確実に大きいです。そんな人たちが少しでも笑顔になれる意識付けが社会にできていければいいです。
あと、「新しい〇〇」という言葉にとても違和感があって、ひたすらに連呼することはどうなのかと思います。
今はこれまでオフラインの環境で積み重ねてきたものがある人ほど辛いです。真面目な話、私はアイドルが大好きです。ですが、今は劇場に行けなくて本当に辛いですし、これまでそれがあって生活サイクルが回っていました。AKBの劇場公演を見て肌で感じるからこそ元気をもらえる。それは、オンデマンドじゃ代替できません。
これまでの生活様式で多くを積み上げてきた人たちが、突然急進的に何もかも変えろと言われることは本当に辛いと思います。なので、「新しい〇〇」を頑張ろうではなく『頑張ってきた過去を土台に新しい生活様式を今ちょっとだけ一緒に乗り越えよう』みたいな表現で過去に対する敬意をもっと持つべきです。そうすることで、痛みに敏感になれ、傷ついている人も今までの努力が報われると思います。
ーー学生団体CORS Projectの活動を始め、今感じることは何でしょうか。
吉田 好奇心というのが、自分の価値観に大きく依存していたと感じました。
例えば私はサッカーが好きですが、それだけだと好奇心が偏ってしまいます。本当にサッカーのためを考えたら、他の全く関係ない色々な物事から得た情報を噛み砕いて還元すべきだと思うんです。なので、より広い好奇心で追求したいなと思うようになりました。
また、まだまだ自分の知らないところに色々な人がいて、様々な苦しみを抱えているということが分かりました。そこに寄り添うような発信を日々考えています。
正村 このプロジェクトを始める前は本当に色々なことの知識がありませんでした。けれど、メンバーに影響を受け新聞読み始めたり、 ディスカッションで色々な話題に触れる中で知識がどんどん入ってくることが、今はすごく楽しいです。これからもディスカッションを続けていきたいです。
小島 エンゲージメントやいいねの数は確かに少ないかもしれません。けれど、確実に届いていると感じることもあります。例えば私と同じダブルマイノリティの方がいいねをしてくれたり、ずっと見てくれているだろう方や少しずつでもフォロワーの数も増えてきています。
今がオンラインでの活動を余儀なくされた最初の時代だと思います。だからこそ、やり続けることによって生み出していくしかないですし、生み出せる可能性は無限です。責任ある人間として、今やるべきこととして、そのオンラインの可能性を広げることもその1つかなと思います。
『たった一人でもいいから笑顔にする』ために
ーー今後の活動について教えてください。
小島 「その日の天使プロジェクト」という企画をやりたいです。(※故・中島らもさんの著作「その日の天使」より引用)今後、だんだんと状況が変わるのに合わせ、各々の感じている辛さも変化していきます。みんなが辛さを抱えそれを共有できない状況で、何ができるかといったらとにかく優しい言葉をかけていくことです。
なので、私は大好きな中島らもさんのエッセイにある「その日の天使」でありたいです。例えば冗談でも「今自殺したら…」と考えているときに友人から電話がかかってきたり、ふと見た小説の一節に救われることがあります。自分も実際そういう人生だったんです。だからそういうのもありかなと。
ーー期間限定のプロジェクトとして、活動を終えたとき一つ成し遂げたというにはどうしたらいいでしょうか
吉田 繰り返しになりますが学生団体CORS Projectは寄り添うために始めた活動です。インターネットは一度出したら一生消せない面がデメリットのように挙げられますが、記録をするという面ではメリットになります。
われわれはそちらに希望を見出し、今後も寄り添い続けられたらそれは成功したと言えます。
正村 笑顔を届ける存在でありたいと思っています。いま欠かさず投稿しているブログやディスカッションを継続することが大成功なのかなと思います。
小島 まずは8月1日までちゃんとやり遂げることです。自分たちなりに信頼を積み重ねてきた自負があります。堅実な構成や各々で文献処理をし、時には全員で確認を取り合い自分たちなりに科学的なデータにのっとり、発信をしてきました。
一方でそれは一瞬で崩れるものです。何か1つでも誤った情報を発信してしまうことで、今までこの2ヶ月やってきたことがないものになります。最後まで信頼を得るためにその部分をしっかりと意識して活動します。
ーー広い視野と深い思慮を持つ皆さんご自身のビジョンを教えてください。
吉田 今日言っていることが明日180度変わることが人間にはあると思うんです。非常に抽象的ですが、自分の人生を僕が死んだ後に誰かが見たとき「こんな生き方もありか」みたいなことを思ってくれる人生を送りたい。そのために「今のままでいいのか」を考え続けないといけないと思っています。
そのテーマのひとつめが、「人間は自然の一部ということを忘れない」です。手足と人が共存しているとは言わないじゃないですか。それと同じで人間は自然の一部に過ぎない。自然との共存といいますが、既に欲望のままに経済活動を続けていくことで自然が壊れ、その影響が人間にも返ってくるという事態が既に起きています。なので、そこにコミットするよう何かをしたいです。
ふたつめは可能性の卵がどこに転がってるか分からないということです。今忌み嫌われているモノが100年先の未来ではスタンダードになっている可能性があります。そんな何かを守るというか、僕だけでも肯定するようなことができたらと考えています。
正村 将来は父の会社を継いで笑顔の溢れるスポーツクラブにしたいです。そして、自分の人生経験を生かして、障碍者に寄り添えるようなスポーツクラブにしていきたいという夢があります。
小島 自分の人生には、自分のような人をこれ以上増やしたくないなという軸があります。差別を受けたり、性的な悩みを持っていたとしても、それを隠さずに生きていける社会になって欲しい。
そのために自分は何をすべきかと考えていて、今はジャーナリストになりたいです。書いて終わりではなくて、書いたことを実行するような認識と行動が一致した人間であり続けたいなと。 オンライン、オフラインに関わらず、しっかり行動していきたいです。
この取材を通してコロナウイルスで心の沈んでいる人たちにして伝えたいメッセージをお願いします。
小島 今多くの方が心を痛められていると思います。自分も痛みを感じています。ですので、上から何か言うことは絶対できません。ただ共通していることは、全ての人が今頑張っていることです。
今辛くて人生諦めてしまいたいと悩んでいる方もいらっしゃると思います。でも、自分らがこの活動をやっていて思いますが、人間って生きているからこそこういった発信ができ、誰かに自分の価値を見出してもらえる。すなわち、生きているだけで人間ってすごく力があるんです。
そんな力を引き出せる発信をわれわれがしていきます。たった一人でもいいから笑顔になっていただけるような発信をすることを誓います。そして、われわれでよければ、辛い思いをしている方とお話をさせていただきたいです。
3人の思いとライフヒストリーを知ることで、彼らの発信から生まれる安らぎが深まり、もっと考える楽しさを感じられるようになります。ぜひ、学生団体CORS ProjectさんのTwitterやブログもご覧ください。
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