【インタビュー】マスクの寄付活動その真意に迫る。多摩生徒会協議会が信じる中高生の力

多くの団体が活動休止を発表しはじめた今年の4月。そんな中で、今できる新たな活動として、マスクの寄付を募り、ホームレスの方々に届けることに取り組まれた団体がありました。

それが、多摩地区の生徒会に所属する中高生が運営している生徒会団体「多摩生徒会協議会」さんです。コロナ禍でも歩みを止めない彼ら、その活動には、同じ中高生へ向けたメッセージが込められていました。今回のインタビューでは、真意に迫ります。

今回ご協力いただいたのは、代表で桐朋高等学校2年の章 子昱(しょう こいく)さんと広報で昭和第一学園高校2年の鈴木 莉恩(すずき りおん)さんです。それぞれ通われている学校では生徒会長を務められています。

章 こいく

多摩生徒会協議会

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多摩生徒会協議会

多摩生徒会協議会ってどんな団体?

ーー主な活動を教えて下さい。

 多摩生徒会協議会は多摩地域の生徒会の発展を目的に2008年に発足した団体です。主な活動は2つ、ひとつめは、定例会です。2ヶ月に1回テーマを決め各校から生徒会役員を募り、情報共有、討論をし、それぞれの活動に生かしています。

ふたつめは、社会貢献を目的とした外務活動です。革新的な活動を行うため、都度意見を出し合い目的を決め取り組んでいます。今回の「TAmaskProject」もそのひとつです

ーー多摩生徒会協議会ではどのようなビジョン、マインドのもと活動されていますか?

章 ビジョンは「各校生徒会役員間のより円滑な情報共有、生徒会外務活動の社会的価値の上昇」を掲げて活動しています。

そして、マインドが「団体としてのメリットではなく、参加校の全生徒や社会全体への還元につながる内容を提供すること」です。われわれは、生徒の利益になる可能性が少しでもあるならば、どんなに困難でも実行します。そのように取り組み成果を上げることが、結果としてわれわれの社会的価値向上に結びついています。

ーー運営を務める上で意識されていることはなんでしょう。

章 団体は多くの人の力を一点に集約することが重要です。多摩生徒会協議会が常に中高生の意見を集約し、実行に移せる場であるよう意識して代表を務めています。

実務では、喋りすぎないことを意識しています。代表者は、多くの意見を集約させるために、舵取り役と情報提供役の2つに徹するべきです。私は何でも自分でやりたがってしまう気質があるので、一人走りしないためにも常に心がけています。

鈴木 広報として、「短く、簡潔に、わかりやすく」の3つを大事にしています。これまで、丁寧に説明しても読まれない、意図が伝わらないことが多々ありました。なので、今はスライド1枚の簡潔な情報発信をしています。この方針にしてから、多摩生徒会協議会へ本当に参加したい、こんなことがやりたいなど意識の高い人集まるようになり、効果を実感しています。

ーー多摩生徒会協議会の魅力、やりがいはなんでしょうか?

章 非常にラフなところが最大の魅力です。コロナ禍でも一人ひとりが今できることを考え、意見を出し合い団体として実行に移せています。それは、これまでの積み重ねを新たな状況ですぐに生かせる柔軟性があるからです。

また、多摩生徒会協議会には、学歴や成績と関係なく、この人は将来どの道に進んでも何かを成し遂げるだろうと確信できるすごい仲間が集まっています。彼らと意見を交わし、共に革新的な活動に取り組めることがやりがいになっています。

鈴木 全く同じで、ラフさが魅力だと感じています。多摩生徒会協議会では、思いつきのような意見でも、皆が実現させるためにどんどん案が出してくれます。結果、様々な企画が生まれ、常に新しいことに挑戦可能な環境が整っています。

コロナの影響にどのように立ち向かっているのか

ーー活動におけるコロナウイルスの影響はどうでしょうか?

章 影響は、多くの方々と同様にオフラインで集まれなくなったその1点です。

ピンチのときこそ止まらず試行錯誤し、どう動くかが重要です。これまで通りにできなくなった今、前の状態に100%戻すことは不可能です。なので、われわれは今できる新しいことを模索し、活動を継続しています。

ーーTAmask Projectとはどのような活動ですか?

 これは、自作マスクを路上生活者の方々に届ける活動です。即時性を意識し、ソーシャルメディアにて寄付の呼びかけとマスクの制作方法を発信しました。同時に、都内でホームレス支援を行うNPO法人「TENOHASHI”てのはし”」にも協力をいただき、迅速に必要とする方へ届く仕組みを構築しました。

当初は学生中心で行う予定でしたが、社会人の方々にも参加いただけ、5月末に活動を終え最終的に「2638」枚を寄付しています。

特定非営利活動法人 TENOHASI 
池袋地区で、ホームレス状態の方々の支援を行っているNPO法人

鈴木 インターネットを利用しない方々にも広く知っていただきたいと考え、マスメディアにも協力を依頼しました。実際に、東京新聞、朝日新聞、週刊文春、NHK、スマホ学園で活動を取り上げていただけ、広く認知されたことで、多くの賛同者が現れたと思います。

ーーTAmask Projectを始められたきっかけはなんでしょうか?

章 私がマスク寄付を思いついき、一人で動くよりも団体の方が大きな成果を得られると考え、運営会議で提案をしたのがきっかけです。全会一致で可決され、プロジェクトが始動しました。

対象者をホームレスの方々にした理由は、政府のマスク配布が「全世帯」を対象としており、家を持たない方々へ届かないという問題に気付いたからです。 

また、われわれは課外活動の革新性を重要視しています。コロナ禍では損失があまりに大きく、失われたモノを取り戻そうとする動きが大きいと感じます。たしかに、失われたモノを取り戻そうとすることも必要です。しかし、われわれは今新たに生み出すことが使命だと考えられたことも大きな要因です。

ーー実行にあたり大変だったことはありますか?

章 活動中はとにかく忙しかったです。特に渉外活動が主となり、通常のメール、電話対応も多く、特にクレーム対応は大変でした。ですが、活動を終えた今、それらも含めて常に楽しかったと思っています。なぜなら、この活動でなければ得られない経験をすることができたからです

鈴木 私も大変とは思わなくて、常に面白かったです。たしかに、朝から夜まで活動をしていたので、はたから見たら大変だと映るかもしれません。ですが、当の本人達が本当にやりたくて活動していたので、誰一人大変だと感じていないと思います

ーーこのプロジェクトで印象に残っていることを教えてください。

章 私は2つあります。ひとつめは、運営メンバーが全会一致で企画に賛同してくれたことです。実を言うと、労力を要する上に結果の予測が難しい企画だったので、意見が割れると思っていました。ですが、提案すると全員が賛同してくれたんです。このとき、本当にいい団体に所属していると確信しました。

ふたつめは、多くの社会人、企業の方々にも参加していただけたことです。特に、自作マスクの材料として「ゴム紐」を寄付いただけたことが印象に残っています。

活動当初、自作しようにも「ゴム紐」が品切れ状態で頭を抱えていました。そんなとき、取材記事を見たゴム紐を製造されている企業の方から連絡がありました。なんと、希望数量ゴム紐を寄付してくださると仰っていただけ、こんなありがたいことがあるのかと感動したことを覚えています。この協力があったからこそ、制作できず手をこまねいていた方々にも参加いただけました。

鈴木 ほとんど同じですが、付け加えるとしたら3つあります。ひとつめは、この活動を通して運営メンバーの親睦が深まったことです。活動を始めた4月はちょうど代替わりで、メンバー同士まだお互いをよく知りませんでした。ですが、忙しい中でも誰一人文句を言うことなく、共に取り組んだことで打ち解けられました。

ふたつめは、企業や多摩生徒会協議会OBの方々から資金援助もいただけたことです。経済的支援があったらからこそ、学生のわれわれが発送費用などを工面でき、すぐ行動に移せました

みっつめは、多くの方々から応援メッセージ、感謝の言葉をいただけたことです。寄付の応募フォームに、皆さん温かいメッセージを綴ってくださり、それを見たときやってよかったと思えました。

中高生の持つ可能性を信じて、1人では微力でも、集まれば大きな力になる

ーー多摩生徒会協議会として、これからどのようなことを成し遂げていきたいですか?

章 多摩生徒会協議会のラフさを生かしながら、学生が存分に輝ける環境、機会を提供していきたいです。

実は、既に1つ実行中の企画があります。学生が文化祭の新しい形を模索するための情報収集と情報発信です。コロナ禍で文化祭が学校側の判断だけで中止となることを防ぐため、全国から文化祭の実施予定や開催形態をアンケートしています。今後、皆さんが活用できる形に編集し、公開する予定です。実際に私の学校では、トライアル版の資料が学校側の判断材料として採用していただきました。

コロナ禍において不特定多数が集まるイベントの中止判断は、やむを得ないとは承知しています。しかし、闇雲に中止にしてしまえば、学生は新しいチャレンジすらできません。今作成している資料は、この機会損失を減らす一つのカギとなります。今挑戦している学生たちの取り組みが共有され、さらにブラッシュアップされていくことで、今後学生全体の財産になると考えています。

ピンチのときこそ成長につながる学びがあります。こんなときだからこそ、大人の方々には学生が主体的に考え、行動する機会を守って欲しいです。実際に私の通う桐朋高校では、学校側から予算をいただき、学生主体でオンライン化に着手しています。既に例年になく充実した文化祭HPが立ち上がり、当日はHP上の地図から各教室で行われている配信に参加できる仕組みを構築しています。

コロナ禍で「文化祭」開催中止3割、オンラインも4割ー多摩協調査
多摩生徒会協議会の本企画は資料が公開されており、生徒会.jp様のサイトで閲覧できます。
※本インタビューは資料公開以前に実施されております。

ーーお二人が日々の生活で大切にしていることを教えてください。

 いろんな人と親交を深め、広く世界を知ることを大切にしています。井の中の蛙大海を知らずといいますが、今いる場所から一歩外へ踏み出すと、まだまだ知らない世界がたくさんあることに気が付きます。ただし、自ら求めなければ気付くことすらできません。なので、私は多くの人と関わり様々な経験、知識を得ることで、新たな興味を生み出し気付きを得ていくことを常に考えています。 

鈴木 生徒会長として「生徒一人ひとりが卒業時にこの学校でよかったと言える学園を作る」と公約を掲げています。公約達成に向け、常に今何をすべきかを考え生活することを大切にしています。

僕の学校は創立80年と歴史が長く、古く保守的な校則が存在しています。生徒から緩和を求める声がでており、生徒会が生徒と教員の架け橋になり共に良い方へ向かうためにも、校則を変えていく取り組みを行っています。今、生徒会と若い先生方で団結し、学校運営側と意見交換の場を設け、前進している最中です。

ーー皆さん自身、将来のビジョンはお持ちでしょうか?

章 私は医師になりたいです。理由は2つあります。ひとつめは、直接的に人命を救えるからです。さらに、その能力を高め、経験を積んだ上で、医療系ベンチャーを立ち上げ、新薬、技術開発などができれば、より多くの人命を救うことも可能です。

ふたつめが、時間を生み出す職業だからです。命を救うことで、生まれる時間が持つ可能性、生産性は無限大です。時間を生み出す、止まるはずだった時間を延長させられる数少ない仕事の一つが医師だと思います。

まずは医師免許を取得するためにも勉強を頑張らないとですね。

鈴木 教職に就きたいです。きっかけは、いじめを受け自暴自棄になっていた私を助け導いてくれた先生がいたことです。その経験から、自分も人を助け、導く仕事をやりたいと考え、今は教員を目指しています。生徒一人ひとりとしっかりコミュニケーションを取り、彼らが感じる負担を未然に防ぎ、学生が憂いなく学校生活を送れるようサポートできる存在になりたいです。

ーー最後に、皆さんから中高生へメッセージをお願いいたします。

 中高生が「学生だから」という理由で、挑戦を諦めないで欲しいです。われわれ中高生には能力も行動力も十分あります。早いうちからやりたいことを見つけ、失敗を恐れず、どんどん挑戦してください。挑戦すれば、成功しても失敗しても様々な学びを得られます。

そして、常に今だからこそできること考えることが大事です。漫然と慣習や伝統など受け継いだモノをこなすのではなく、今何が必要とされ、自分は何ができるのか考え、行動し続けることが可能性の源泉です。 

また、一人でできることには限りがあります。ぜひ挑戦する中で、協力者を見つけ共に取り組んでみてください。われわれのような団体に所属するのもひとつ手です。他者と力を合わせることで可能性を広げられます。

鈴木 正直学生だと社会的地位、信用が高くないので、失うものが少ないです。だからこそ、私は今しかできないことに挑戦していきますし、周りの中高生にもそうあって欲しいです。時には、学生が持つ柔軟な思考とデジタルネイティブとしてのスキルは、大人を凌ぎます。失敗を恐れるよりも可能性を信じて挑戦していきましょう

しかし、学生一人ではできないことも多くあります。そんな時に、多摩生徒会協議会が受け皿となり、共に実現するため取り組むような活動も今後していきたいと考えています。


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