有名議題を掘り下げる③ 〜死刑モラトリアム編〜

第3回目です!どんどん増えていきますね。この後少し形式が変わるのですが、それはまた別の話。

今日お話しするのは国連総会第3委員会で取り上げられている議論です。思い出していただきたいのですが、第3委員会のテーマは社会開発や人権問題ですね。皆さん、人権問題と聞いて何を思い浮かべますか?男性と女性の差別?性的少数者の問題?移民、外国人に対する差別?人権問題といっても幅広いですし、社会開発なんて言ったら、もうほぼすべての問題を網羅できてしまいそうですね(笑) さて、今回取り上げたいのは「死刑モラトリアム」についてです。

 この議題は昨年度の全日本高校模擬国連大会で使用された議題で、私自身が参加した会議でもありますので、個人的にも思い入れのある議題ですね。今回は、自分が経験したということも踏まえて、会議中に思ったことなどを交えつつ話していこうと思います。

 私の意見では、模擬国連の議題には大きく分けて2つの種類があると思います。各国の背景事情(政治、宗教や文化など)による対立が決定的なものと、そうでないもの、です。どういうことでしょうか。後者の方が簡単に説明できるのでそちらを先にすると、要するにこれは世界全体として方向性が決まっていたり、あるいはいくつかの細かい差異はあるけれど今後の交渉や各国の努力によって溝を埋められる可能性のあるものです。このタイプの議題の例としては地雷問題や違法漁業の問題などがあると思います。いずれも、解決に向かって世界全体で前進していく必要のある議題ですよね。前者は、確かに国連のような場所で議論することは可能だけれども、各国の事情によって制度の変更や対応が難しかったり、あるいは内政事情に深く踏み込んだ議題が対象になるでしょう。ジェンダー問題などが当てはまると思います。イスラム圏における女性に対する価値観と欧米の価値観は確かに違いますが、その差異は宗教的な事情から生じているもので、関連制度の変更を迫ることは宗教的背景などをないがしろにしている、などという議論をよく見かけますね。

 では、死刑モラトリアムはどちらに当てはまると思いますか?前者ですよね。死刑に関する規定はあくまで各国裁量の範囲で、それぞれの国が死刑を存続する・廃止する正当な理由を掲げているわけです。共通の理解がない中で多くの国との合意を図るのは難しいと思われます。もっとも「死刑モラトリアム」という議題では、廃止か存続かではなく、死刑制度の一時停止(=モラトリアム)についてどう考えるかが中心となっています。枠組みとしては、国内での強力な世論等のバックアップの下存続を主張する国々(主にアジア圏+アメリカ)と、「人権保護」の観点から将来的な死刑制度撤廃を見越してモラトリアム導入を推奨する国々(欧州など)と、死刑制度自体はあるが使われていない/近年廃止したばかりという、意見の定まってない国々(地域はまちまち)という風に分かれます。

 今は死刑制度が存在しかつ機能している日本ですが、この「モラトリアム」という考え方について皆さんどう考えますか?日本のことは自国民で決める!という姿勢も大切ですし、世界的な潮流に一定の注意を払うことも大切です。死刑という制度をいろいろな側面から考えて、自分の考えを纏めてみてはいかがでしょうか。


 第3委員会の議題説明はこれで終わりです。次回は第4委員会を予定しています…
それでは次回も、お楽しみに~