自宅待機中の経営学自習方法(学部生版)

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、あいかわらず多くの学生が自宅待機を余儀なくされている。元がポジティブ・シンキングな人でも、図書館や本屋さえ開いていない(そもそも出かけられない)現状でどう勉強すればいいのか悩んでいるようだ。

 外に出られないだけでなく、Amazonでも本の在庫切れが起き始めている。在庫切れでなくても配送が以前より遅くなっている。そのためテキスト自体が手に入りづらくなっている

 そこで、主に経営学やビジネス分野を学ぶ学部生向けに、この有り余る時間を使った有意義なオンライン勉強法について情報提供したいと思う。本来ならば本を読み集まって議論しようということになるのだが、今は到底無理なのでひとまず「インターネットさえあれば大丈夫」という範囲にとどめた。
 また今回は「学部生向け」または「経営学初心者向け」である。大学院生であれば、いくつかの優良なハンドブックを読んだあとはひたすら学術誌論文を(多くの場合、英語で)読むことになる。しかし、今回は経営学入門ということで、なるべくやさしめに日本語で読めるものを中心にしつつ、一部外国語も使用するという形にした。

 まずは良く使われるGoogle ScholarCiNiiJ-STAGEだ。これはいわゆる論文検索サイトで、かつ論文本文も手に入る。文字をクリックすることでサイトに飛ぶことができる。前1者が世界的な検索サイトで、後2者はどちらかといえば日本の雑誌に特化している。ただ、最近はGoogle Scholarでほとんどの用は済む場合が多い。なお、大学院生向けにはWeb of ScienceとかScopusなどがあるがこれは省略する。

 ひとまず、これらのサイトで気になる単語を検索してみよう。右の方にPDFと出ていいれば、そこからPDFをダウンロードできる。

ワーク1:Google Scholarで「岩尾俊兵」と調べてみよう

ワーク2:「Shumpei  Iwao」や「イノベーション」などでも調べてみよう。

 次に、経営学を学べるいくつかのサイトを紹介していく。無料で読めるものとしては慶應義塾大学三田商学会の『三田商学研究』や東京大学経営学系教員が中心となって編集されている『赤門マネジメントレビュー』などがある。岩尾の論文を例として使うので、ひとまず赤門マネジメントレビューを用いて説明してみる。インターネットで「赤門マネジメントレビュ-」と検索すると以下のようなサイトにいきつく。

 この中で、右側に見える「経営学で考える」というのは比較的読みやすいコラム、「ケース研究」というのは企業の事例を詳しく書いたもの、「経営学輪講」は海外の研究を日本語で説明しているものだ。気になるページをクリックしてみよう。

 CiiNiiで調べる限り、図書館での収蔵が100箇所を超えていて、かつオンラインでも読める経営系の雑誌に『組織科学』『日本経営学会誌』『国際ビジネス研究』などがある。これらはGoogle Scholarで検索してダウンロードできるので気になったら見てみよう。

ワーク3:「日本的経営」をキーワードに、上記で出てきた様々なサイトを使って、最低10本の論文を見つけてみよう。

 ここまでくればあとは簡単である。
 ここから先は、自分の興味に合わせて勉強を進めてみよう。特に、論文を読んで面白いなと思うことがあれば引用を見てみることが大事だ。たとえば、「イノベーションは連鎖する(岩尾, 2019)」という文章が気になったとする。元となった研究を読みたければ論文末尾の「参考文献・参照文献・引用文献・レファレンス(呼び方は色々あるが参考文献となっていることが多い)」の欄で岩尾という名前と2019年という出版年を探せばいい(『イノベーションを生む“改善”』という本が見つかる)。

 学術論文や学術書には必ず最後に使用した文献一覧を載せる欄があるので、気になった箇所があれば常にこの一覧を参照しよう。

 次は、レポートの書き方だ。本来、私の授業では最初にレポートの書き方などを教えることも多い。しかし、新型コロナの影響下では手取り足取りの指導はできそうにない。そこで、まず下記のようなサイトを参考にしてみるとよい。すべて文字をクリックするとページに飛ぶことができる。

文章教室
情報技術を活用したレポートの構成・作成法(日本女子大学人間社会学部)

 また、卒業論文を書かなければいけないが今何をすべきか悩んでいるという人も多いだろう。これについては基本的には指導教員に適宜相談する方がよいが、以下のようなサイトは参考になる。

学術論文の書き方(一橋大学大学院社会学研究科)
卒業論文の手引き(立命館大学経営学部)
筋が悪いリサーチクエスチョンとは何か?(赤門マネジメントレビュー)

 また、引用の仕方や参考文献の書き方は、APA方式が国際標準なのでひとまずは無難かと思われる。これは、赤門マネジメントレビューの執筆マニュアルが日本語で読めて便利である。

 もちろん、一番は図書館だ(社会人はもちろんのこと、大学院生になると論文が中心になるので図書館に入り浸る時間は学部時代よりも少なくなる)。図書館を満喫することが可能になるまでのしばらくの間、上述の勉強法を試してみてはどうだろうか。

関連記事