「新しいこと」と「地道にやること」の関係についての研究:第36回組織学会高宮賞受賞記念

 今日、2020年6月3日に第36回組織学会高宮賞の受賞発表があった(新型コロナの影響で授賞式や記念講演は延期となった)。大変な名誉だと感じている。
 早稲田大学の浅羽茂教授による公表はここに載っている。受賞論文はここから無償で読める、
 もちろん、賞の有無は本質ではなく、きちんと自分がなすべきことを成したかどうか、死ぬときに後悔しないか、が一番大事である。とはいっても、やはり嬉しいものは嬉しい。この組織学会高宮賞は経営学の中でも古い賞で、毎年の受賞者は0~2名程度であることが多い。だから経営学界隈では注目されている賞でもあるし、なにより今は亡き父の書棚に「高宮賞コーナー」があったので、幼少期からこの賞の存在を知っていたのだ。

 父の書棚には、前述の浅羽茂先生の『競争と協力の戦略 』のほか、加護野忠男・野中郁次郎・榊原清則・奥村昭博日米企業の経営比較 』や、藤本隆宏『生産システムの進化論』、金井壽宏『変革型ミドルの探求 』、新宅純二郎『日本企業の競争戦略 』などが取り揃えてあった。

 学術や文芸に興味を持っていた自分はこれらの本を背伸びして読んでいた。もちろん、小学生・中学生に読めるはずもない。しかしそれでも何か惹かれるものがあったのである。そうした先生方にはまだ遠く及ばないものの、とにかく幼少期より漠然とあこがれがあったのでやはり嬉しいものは嬉しい。

 さて、それでは受賞論文とそれに続く研究群はいったい何を主張していたのか。題材は日本の自動車メーカーにおけるカイゼン活動なのだが、要は「地道な努力と大胆で幅広いネットワークが両方あると創造性と効率性を両立できる」ということだ(中身を読まれた方からは、えっ、そうなの?と言われそうだが)。正確には地道に小さな改善しかしないことも、大きな改革ばかりおこなうことも、選択の幅があるということだ。

 そしてこれは自分自身の人生においても大きな教訓となって活きている。地道に知識を身に着け、目の前の仕事をおこない、目の前の人に誠実に対応する。もちろん、上手くいかないことの方が多いが、できる限りの調整をおこなう。その上で、自分の時間の5%くらいは全然関係のない場所にいってみたり全然関係ない本を読んだり全然違う仕事をしている人と会ったりする。すると、地道な仕事が人と人を介しているうちに大きな仕事に化けたりする。誰かを紹介して思いがけず面白いプロジェクトが始まったりする。

 その意味で、自分の人生自体が一種の研究対象で、一生挑戦・一生研究だなと思うのである。


松下 耕三
2020.06.18

遅くなってしまいましたが、受賞おめでとうございます🎊
益々のご活躍が楽しみです。

>自分の人生自体が一種の研究対象で、一生挑戦・一生研究だなと思うのである。

この最後の一文、たいへん共感しました!

岩尾俊兵
2020.06.18

ありがとうございます!
一生挑戦していたら一生青春でもあります。

No Name
2020.06.06

岩尾先生、受賞おめでとうございます!

私はラクロス部で活動しながら、将来は教員を目指しているので、小学校教員にも通ずるものがあるなと感じました。

まだ自分は学生なのではっきりと実情はわかりませんが、教員の働き方改革が急務である現状を見ると、
未来を切り拓く子どもを育成しようとしていても、なかなか教員は余暇活動の時間が取れていなかったり、それを教育に活かせていないように思います。

岩尾先生をはじめラクロス部を支援してくださっている方々や、大会運営で関わった色んな人とのつながりを活かし、幅広い知識を身につけて、教育を改善できる教員になれるよう頑張ります!

これからもより一層のご活躍をお祈りしております。

岩尾俊兵
2020.06.06

ありがとうございます!
ご存知かもしれませんが、発達教育学的には小学校の先生が教育では実は一番大事です。初等教育への意気込み、すばらしいです。
ちなみに一年後くらいに小学生向けの経営学の教科書を出版しますよ。

No Name
2020.06.06

ありがとうございます!
私もその教科書で学ぼうかな…楽しみにしています!

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